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[組織ブログ Ver.27] 「免疫マップ」は 自分自身の無意識的な行動をあぶり出す魔法のツールである

「自分が理想としている行動の"真逆"の行動を無意識的にしてしまっていた」

このような体験をしたことがある方はいらっしゃいますでしょうか?おそらくこの「免疫マップ」を体験した方「以外」はいらっしゃらない or ほぼいないかもしれません。なぜならば、「無意識的に」と記載している通り、自分1人で気づく事はほぼ不可能に近いです。

僕もこの免疫マップを知ってからは、ありとあらゆる自分の理想とする行動(改善目標)に対して、足かせになっていたのは「無意識的な自分」であることを認識しながら生活することができるようになりました。

本ブログでは「免疫マップ」を文言化して説明をすると同時に、良いワークとなるようなポイントについても記載したいと思います。




0. 免疫マップとは

免疫マップとは
「変わりたくても変われない」という心理的なジレンマの深層を掘り起し、変化に対して自分を守ろうとしているメカニズムを解き明かす手法。

なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践

自分自身 or 周りのメンバーが設定をした目標に対して、いまいちコミットしきれない or していないことはありませんか?その際に「自分、徹底力がないなぁ」「自分、意思が弱いなぁ」と自分自身にフィードバックをすることがあるかもしれないのですが、変化が進まないのは「意志」が弱いからではなく、「変化⇔防御」という拮抗状態を解消できないから、と言う考え方から免疫マップが誕生しています。

ご紹介が遅れましたが、この免疫マップは「なぜ人と組織は変われないのか― ハーバード流 自己変革の理論と実践」という書籍でご紹介されている手法で、この著者であるロバート・キーガンは、人が変わりたいのに変われない様を「まるでアクセルを踏みながらブレーキをかけているようだ」と強調して表現しています。

例えば、

「周りのメンバーに権限委譲したい」と言ってるのに「自分で仕事を巻き取ってしまっている」。
「フィードバックを真摯に受け止めたい」と言ってるのに「フィードバックをもらったらそれに反応してしまう」

などのイメージです。
免疫マップのワークに取り組むことによって、この「アクセル」と「ブレーキ」を「無意識的」に実行してしまってるところを「気づく」ということ自体が貴重な機会となります。

誰しも自分の問題を解決したい、という思いがあります。ただ、自分が掲げた問題の解決を何割できているのか?と振り返ってみると、2割にも満たないかもしれない。これは「目標を達成したくない」と思っているわけではないかと思います。

そして その結果に対して「目標達成意欲が低い」「目標達成意思が弱い」と「マインド」についての言及で終わってしまう場合があるかと思います。そして、「徹底力がなかった」という短絡的な着地となることは多いのではないでしょうか?ただ「徹底」と言うのは目に見える施策の「徹底」はわかりやすいのですが、ただ誰もが「やりたい」「取り組みたい」と思っているのにもかかわらず「徹底」できないことが存在するのはなぜでしょうか?

少し話は逸れますが、僕自身は、やると決めたことに対して「徹底」することについては得意な方だと思います。むしろ「約束を守る」というスキルがあるのであれば、割とレベルが高い自信があったりします。そのため、「徹底」ができない人の気持ちを推測することが難しかったのが本音ですが、この免疫マップを学ぶと、僕も「やる」と決めたことを徹底できていない「種類」が存在することに気づくことができました。少しずつ説明をしていきます。


1. 免疫マップの手順

免疫マップは下記の構成になっています。

改善目標
阻害行動
裏の目標
強力な固定観念

1つずつ説明して参ります。

1-1. 改善目標

自分にとって、解決難易度が低い目標ではなく、解決難易度が高い目標を設定すると良いです。ただ、難易度が「高い」「低い」については、目標の「大きさ」で決めるのではなく下記を念頭に決めていくと良いと思います。

※下記、レベルが高ければ高いほど、免疫マップで説くべき問題としては相応しいと個人的には思っています。

  • レベル1 他者との合理的/数値がある約束

    • 「待ち合わせ」や「出勤時間」などの約束。

      • これはものすごく最低限の約束と言える。おそらく小学生でも守れるし、年齢/年次によって差異が出る項目では無い。

    • いわゆる「提出物」や「業務における納期」など。

      • 前述した内容よりも、偶発的に発生する項目。

  • レベル2 自分との合理的/数値がある約束

    • 自分が決めた目標であり、且つ人に「共有している」目標

      • ●月までに●●を●件実施する、など。

        • 改善後も自分がイメージしやすい、もしくは目標が目指しやすいためコミットが上がる。

        • また他者に伝えている故、コミットが上がる。

        • ただ、これも達成できないことも非常に多い。

    • 自分が決めた目標であり、人に「共有していない」目標

      • 同じく、●月までに●●を●件実施する、など。

      • ただ、これは改善意欲あるが、改善コミットが低い場合が多い。

  • レベル3 他者との約束だが合理的ではない「状態」目標

    • この改善目標は明確なゴール(目標)が表現しにくい「状態目標」のイメージ。

      • 例えば、「他者との会話において、寛容になる」「フィードバックを真摯に受け取る」など。

    • どのような状態になれば達成なのかが分かりにくいが、本人はその改善の意思を持っている目標。

      • 山根がよく表現する「感情を伴う問題」はここに該当する。

  • レベル4 自分との約束だが合理的ではない「状態」目標

    • 他者と約束しているわけではなく、自分自身で決めた改善目標であり、且つレベル3に記載をした内容。

    • 改善された状態を合理的に / 尺度で表現することが難しいため、必然的にコミットメントも落ちる。

  • レベル5 自分は無意識だが、他者から問題視されていること

    • レベル4までは自分自身で合意している、もしくは他者と合意している問題(改善項目)であるが、レベル5は自分自身が無意識になってしまっていること。

      • ただ、他者からは問題視されており、自分の界隈のメンバーからすると改善してほしいと思っていること。

    • 本人がその項目を問題視しているかの尺度によるが、意欲は低めの場合が多い。

  • レベルn 自分の範囲「外」にも影響する改善目標

    • n と表現したのは、前述したレベル1からレベル5の「間」に内包したほうが良いかどうか判断がつかなかったため。

    • 「自分の範囲」で解決することができる問題は、解決難易度がそこまで高くないと仮定した際に、自分以外の n人 を巻き込む場合の難易度が上がる。

      • そして、nが大きければ大きいほど、難易度が上がっていく。

    • これに対して「状態目標」であったり「感情」「価値観」が伴う問題について、さらに難易度が上がる認識。

ちなみに改善目標を立てる際に、下記のステップを入れると良い改善目標設定をすることができます。

  • 皆さんのことを大事に思ってくれている人を思い浮かべる

  • 自分のことを思って言ってくれていること

  • きみはこうしたほうが良いよ、と言われること

例えば、山根の場合で言うと「もっと人の話を聞いたほうが良いよ」と言うアドバイスを親しいメンバーからもらうことがあります。僕はどうしても「自分」で物事を決めたいと思うタイプで、それ自体を意識的に取り組んでいるというより、無意識的に取り組んでいることが多いです。
そして、ここで出てきた意見の「逆説」を改善目標にすると良いです。上記の事例で言うと、「もっと人の話に耳を傾けられるようになりたい」という改善目標が出来上がるわけです。

ここでのポイントとしては「無意識」と「意識」の間くらいに存在する問題を設定することが僕としてはお勧めです。ただ、僕は社会人としての経験がそこそこあるほうですので、社会人としての年次が若い方はもう少しわかりやすい問題の方が良いかもしれません。

1-2. 阻害行動

阻害行動とは:
改善目標を妨げている自分の行動のこと

記載してる改善目標に対して、自分自身が実行している目標達成を「阻害」している行動があるはずです。この阻害行動を出来る限り徹底的に洗い出してみると良いです。

阻害行動を洗い出す際のポイントとしては、

  • 「感情」「意見」「反省」は書かないように注意する。あくまでも「行動」に着目する。

  • 周りの「他者」からのフィードバックもいただきながら作成したほうが有意義なものが生まれる。

    • 現に、僕の場合は創業メンバーからもらった阻害行動を深ぼった際に強烈な気づきを得ることができました。

1-3. 裏の目標 ※不安ボックスについて

不安ボックスとは:
阻害行動と「反対」の行動をとった場合、あるいは阻害行動をとらないまま時間が流れた時に起きる「最も不愉快な」「最も恐ろしい」「最もやっかいな」事態

免疫マップで最も面白いアプローチは本項だと思っています。
仮に、改善目標を一般的な問題解決のアプローチで解決しようとすると、「問題の原因」を追求すると思います。そしてその原因に対して「解決策」を考えて実行していきます。

一方で、免疫マップでいう「阻害行動」を炙り出したあとに「不安ボックス(裏の目標)」を炙り出します。この手法がユニークだと思っています。なぜならば、普通は 阻害行動を「原因」と定義した際に、「阻害行動をするのをやめよう」という「解決策(施策)」を立案すると思います。ただ、免疫マップでは、この段階で「不安ボックス(裏の目標)」を設定している。本来は「改善目標」を急いで設定したいのにもかかわらず、その「逆」のアプローチをしている。

整理をすると、

一般的な問題解決のアプローチ
「問題の特定」 ⇒ 「原因炙り出し」 ⇒ 「解決策を立案」 ⇒ 「実行」

免疫マップのアプローチ
「改善目標の立案」 ⇒ 「阻害行動の炙り出し」 ⇒ 「不安ボックス」 ⇒ 「裏の目標」 ⇒ 「固定観念の見える化」

という感じです。

ただ、ここで「なぜわざわざ "逆"の状態(目標)を明瞭にしなくてはならないのか?」という疑問に思う方がいらっしゃるかもしれません。ただ、ここで言及しておきたいのは、免疫マップに取り上げる「改善目標」は前述したレベルに設定をすると良いこと。おそらく皆さんの心中にも存在すると思うのですが、

「自分が決めたのに、なぜか徹底できないこと」

ってありませんか?おそらくイチローさんにも大谷翔平さんにもあるのではないかと思っています(わかりませんが)。
免疫マップで取り上げるべき問題は「慢性的に自分を苦しめていること」のほうが良いです。「簡単に達成し得る改善目標」については、わざわざ免疫マップを作成しなくても良いと感じており、一般的な問題解決手法で良いかと思っています。ただ、「改善したくてもできない」「変わりたくても変わらない」という、そういった問題を取り扱うため、今回の免疫マップのアプローチが有効的であるのだと思います。

また、少し話を変えますが、
不安ボックスの説明は前述した通りですが、"阻害行動と「反対」を取った場合、起きてしまう最悪な事態" というような表現をしました。ここで感じたこととしては、キーガンさんが言っている「アクセルとブレーキを両方踏む」という表現の合致感です。本当は解決したい「改善目標」があるのにもかかわらず、"阻害行動と「反対」を取った場合、起きてしまう最悪な事態" も存在している。改善目標に対してのアクション=アクセル、最悪の事態=ブレーキという感じです。そして、興味深いのは、最悪の事態を抑えるブレーキは無意識的であることが多いことです。そのため、自分がブレーキをかけていることに気づきません。僕も気づかなかったです。

つまり、

アクセル
 - 改善目標に対してのアクション
 - 意識的 / 意図的

ブレーキ
 - 最悪の事態を抑えるアクション
 - 無意識的

このように表現できるのだと思います。

1-4. 裏の目標

不安ボックスを「対極」で表現したものが「裏の目標」になります。
例えば、

不安ボックス:批判する側の同調者が増えてしまう
裏の目標  :批判する側の同調者が増えないようにする

不安ボックス:会社の方針が崩れて、不正解な感覚が社内に広がる
裏の目標  :会社の方針が崩れて、不正解な感覚が社内に広がらないようにする

こんな感じでしょうか。

1-5. 強力な固定観念

固定観念とは:
「決めつけ」「思い込み」
※免疫マップでいうと、裏の目標を作り上げている「決めつけ」「思い込み」というイメージ

免疫マップに取り組んでみて感じるのは、自分自身が「無意識的」に実行をしていたことは、一種の「決めつけ」「思い込み」が起因していたのかなと思っています。ただ、「決めつけ」「思い込み」と表現をしてもピンとこないかもしれませんので、下記と近しいということはお伝えしておきます。

すべて過去にブログで記載をしておりますので、ご興味をお持ちの方はご覧ください。


2. 免疫マップの事例紹介

手法やポイントは前述した通りですが、山根の場合の解説をしたいと思います。ブログに公開しようか迷ったのですが、山根の固定観念も皆さまに知っていただいたほうが嬉しいなと思いまして出すことにしました。

2-1. 改善目標

改善目標はこれにしました。
僕はこれまでおそらく50名以上の退職者と接してまいりましたが、どうしてもうまくコミュニケーションを取ることができません。というか、通常通りの接し方をしたいのですが、無意識的に避けてしまうというか。もちろん在職中のメンバーとのコミュニケーションを大事にしたいのは本音ではあるのですが、これまで頑張ってくれたメンバーに対して、これまで通りのコミュニケーションを取りたいと思っていながら、なぜか関係性が微妙になることがこれまで何度かありました。これを改善したいと思っていました。

2-2. 阻害行動

これらが阻害行動です。次の不安ボックスで詳しく説明します。

2-3. 不安ボックス

阻害行動を起こしている背景である不安ボックスがこちらです。
阻害行動と「反対」の行動をとった場合は、このような体験をしてしまいそうで怖かったのだろうなという気づきがありました。ただ、僕はこれまで阻害行動を取ってきたため、この不安ボックスの通りになるかなんてわかりません。ただ、この不安ボックスについても僕の「決めつけ」が大いに含まれているのであろうと感じました。

2-4. 裏の目標

これはいわゆる「アハ体験」でした。アハ体験というのは、つまり気付けていなかった自分の背景/本音と言いますか。あ、なるほど僕は「裏の目標」を達成するために、この阻害行動を取り続けていたのか、という強烈な気づきを得ました。ただ、最も大きな気づきは次項にありました。

2-5. 強力な固定観念

「免疫マップはすごいな…」と驚嘆を通り越して唖然としました。

ここまでのプロセスで最も大きな気づきは「退職者が退職決定後に"喜んでいる" "幸せそう" な姿を見たくない」と僕は無意識的に考えていることでした。僕は会社の代表です。全社員に愛情を持って接してきたつもりです。ただ、退職というのは別れなわけで、僕からすると退職決定後に「やった!やっと退職ができるぞ!」と喜ぶ姿を見てしまうと、もちろんショックだったりします。

そして、僕は退職について下記のように思い込んでいることに気づきました。

退職=自分(山根)のことを嫌い  と思い込んでいる

そして、お恥ずかしながら下記のように変換をしていました。

自分(山根)のことを嫌い = 自分への愛情がなくなった  と思い込んでいる

退職 = 自分への愛情が消えた、と思い込んでいる

なるほど…。

前述した、NVCで言う「ニーズ」推論のはしごで言う「信念」「メンタルモデル」にて明瞭になった僕の根本的なニーズは「愛情」です。これが欠損すると僕はイライラしたり、これが与えられると嬉しかったり、感情が大きく動く傾向があります。

免疫マップを実行することにより、

退職 = 自分への愛情が消えた

と自分に呪文をかけるようにしていたことがわかりました。
もちろん、そういった退職者も存在していたかもしれませんが、自分で言うのもアレですが、僕のことが嫌いになって退職をしたメンバーは、間違いなく全員ではないことも理解しています。

何を申し上げたいかというと、

  • 僕は自分の改善目標に対して

  • 自分の阻害行動を起こすことにより不安を増大させ

  • 裏の目標を大きく達成することによって

  • 自分のニーズである「愛情」を、自分自身で欠損させていった

  • その結果イライラすることになった

という一本の線を繋ぐことができてしまいました。
あー、そういうことかー、という気づきでした。


99. 免疫マップにおけるその他気づきについて

気づけば長文になってしまいましたが、免疫マップについて僕が感じたこと/気づいたことを記載したいと思います。

99-1. どんな人であっても免疫マップは存在する

どんなメンバーでも会社で成果を出すこと、業務の成果を出すことの「逆」のことを意図的に取り組むことはしないと思いますし、個人/チーム/グループ/事業部などにおいて意図的に崩壊をさせようとする人はほぼいないと思います。
ただ、自分が向かいたい方向に対して、「逆」の行動をしていることは、誰しもしてしまっていることは認識して良いと思います。現に、僕自身も決めたことはやる、というタイプではあるかと思うのですが、ある項目においては「逆」の行動を取り続けてしまっていたのですから。

99-2. 免疫マップは当事者意識を持つのに有効なツールと言える

改善目標を掲げて、どうしても改善ができないということを、100%自分の責任(理由)と捉えている人は少ないのではないかと思います。例えば、環境のせい、人のせい、などいくらでも言い訳はあります。もし仮に、強引に自分の責任(理由)にしたとしても、本質的にそう思っているかわからないし、むしろ口だけの可能性は高いのではないかと思います。
そんな中、免疫マップを実施すると、改善目標が達成できない根本的な理由は、「自分が作り上げてしまっていた裏の目標を追いかけていたから」ということになります。つまり、自分がその問題を発生させている/達成することができない理由の一部であると認識することができるツールであると言えます。心のどこかで「環境のせい」「人のせい」だと決めつけてしまっていた自分をきちんと省みることができる良いツールだと思いました。
つまり、これは「当事者意識」を構築することができるツールなのかなと個人的に思っています。

99-3. 内省に慣れていない人が取り組むと逆効果なのかもしれない

自分に正直であり本音でシートに記載することができなければ、意味が薄いワークになると思いました。なぜならば、他責にしてしまう可能性が非常に高く、「自分が悪い」と思えないと感じたからです。
また、記載する内容が本音ではなく繕ってしまったり「結局自分がなんとかすれば良い」という結論に早期に帰結してしまうのではないかなと思っています。「自分のことをよく、自分は理解している」という人ほど理解していない可能性が高いと思っています。なぜならば、自分のことを理解し内省できている人は、自分の潜在意識や盲目の窓を理解しようとして、理解/内省ができてくると、自分の理解には限界がないことを認識してくるからです。

そのため、免疫マップのワークが成り立つ、という時点で組織が良い状態なのかもしれません。且つ深いところまで内省できていたらさらに良い状態と言えるのかもしれない、と感じました。


最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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