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人事制度をクイックに作った話

「大体2ヶ月程度でクイックに人事制度を作っていきたいですね」

そんなご依頼をいただいたのは2024年3月の事でした。まず、「2ヶ月」と言う期間の設定において、びっくりしたのが本音ではあったのですが、「まぁやってみようか」と思い実施してみることにしました。

結果、本当に2ヶ月程度で人事制度の構築をクイックに、精度が高い内容に仕上げることができたと思っています。

本ブログでは、クイックに人事制度を策定するフローや注意したことなどを記載します。




0. 人事制度とは

人事制度にそこまでなじみがない、知見がない方は人事制度と聞いても認識がふわっとしていると思います。そのため、まず下記をご覧ください。

基本的には、人事制度は「等級」「評価」「報酬」が密接に関わって構築されます。この3つの項目を行き来しながら設計することが基本になっています。1つずつ簡単に説明します。

0-1. 等級とは

等級とは「レベル」のことです。とは言いつつ「レベル」と表現したとしても、イメージがわかないかと思いますので、当社では下記のように説明しています。

ロールプレイングゲームをプレイしたことがない方はピンとこないかもしれないのですが、例えば上の図はスクエアエニックスさんの代表作であるファイナルファンタジーの「ジョブ」と言われるプレイヤーの属性別の各能力の定義です。

例えば、ジョブにおいて「勇者」「魔法使い」の2つが存在する場合、各々のジョブにおいて「レベル10」が存在していた場合、

  • 勇者

    • スピード

    • 勝負強さ

  • 魔法使い

    • 魔術

    • ●●

    • ●●

の能力は高くなければなりません。そのため「ジョブ」によって求められる能力の定義が異なり、つまりレベルの定義が異なる、そんなイメージをしてください。

そして、会社によっても「レベルの定義」が異なります。例えば、営業に非常に強い会社と、技術に非常に強い会社のレベルの定義は異なります。この2つの会社の人事制度を同じにした場合は、おそらくメンバーから人事制度への不満が盛りだくさんに発生するでしょう。なぜならば、先程のファイナルファンタジーの事例で言うと「勇者」と「魔法使い」くらいレベルの定義が異なる可能性が非常に強いからです。

ちなみに、下記の状態が発生した場合、すべての業態においてレベルの定義が微妙に異なるのはご理解いただけますでしょうか?

  • 業態分類

    • サービス料金が非常に高いSaaS

    • サービス料金が非常に安いSaaS

    • 顧客の要望に完全カスタマイズをするSIer

    • 多数のSaaSを取り扱うことができる販売代理店

    • BtoCのビジネスで世界一のプロダクトを持っている会社

同じIT/Web業界における「業態」を微妙に変化させてみましたが、おそらくこれらの各業態の企業さまで「活躍する人材」の要件は異なるでしょう。なぜならば、ビジネスの特性が異なるからです。

例えば、サービス料金が非常に「高い」「安い」と記載しました。
「高い」企業さまは、顧客がお支払いする1ヵ月の料金が1,000,000円を超えるかもしれません。その分、顧客からの期待値は非常に高く、SaaSプロダクト「のみ」で価値提供するよりは、メンバーのフォローアップ(カスタマーサクセス)の能力が非常に求められる可能性が高いです。一方で、サービス料金が非常に「安い」企業さまは、出来る限り顧客フォローの時間をかけたくないと思っているはずです。なぜならば、1社あたりから数万円程度の料金しかいただいていない可能性が高いからです。仮に1社あたりから20,000円の料金をいただいて、顧客各社への1ヵ月あたりのフォローアップ時間が10時間を超えてしまったら、間違いなく赤字になります。

何をお伝えしたいかと言うと、等級の定義は確実に各社で異なります。業態の違いやカルチャーの違いによってレベルの定義は異なりますので、ご認識ください。

0-2. 評価とは

人事制度と聞いて、イメージがつきやすいのは本項の「評価」だと思います。例えば、「バリュー評価」「目標評価」「360度評価」と言う類です。

ただ、評価については前項の「等級定義」が決まると、割とすんなり決まることが多いです。なぜならば、その企業さまの「レベル」の定義が決まれば、その「レベル」を見極めるための「手法」が評価項目になることが多いからです。

よくある人事制度の失敗例としては、「等級定義」を作る前に「評価項目」を決めてしまうこと。この気持ちは非常にわかりますが、評価の仕方(評価項目)は「手段」です。評価項目は大きく「行動評価」と「成果評価」に分かれますが、下記の変数によって評価項目の設定の仕方が大きく変わってきます。

  • 等級定義

  • 職種

  • 等級の高低

他にも多数ありますが、一旦この3つに絞ります。

特に最近は、IT/Web領域の力が著しく、いわゆる「システム開発」に携わるポジションのみ評価項目を変えよう、そんな試みがある企業さまも増えてきています。

また、忘れてはならないのは「等級の高低」によって評価項目/評価割合を変えていくこと。例えば

  • メンバークラス(レベル1/レベル2)については、行動評価の比率を上げて、成果評価の比率を下げよう。

  • 部長以上のクラス(レベル5以上)については、行動評価の比率を下げて、成果評価の比率を上げよう。

このような設定の仕方は、大体どのような企業さまでも発生します。なぜならば、メンバークラスに「成果」だけを求めると、失敗する可能性も多分にあり、かつメンバークラスの報酬を鑑みるに、成果を求める報酬レベルではないことも理由の1つとして挙げられます。

何を申し上げたいかと言うと、評価手法(評価項目)は、等級定義に紐付いていること、そして評価項目は一筋縄に決めることができないことをご認識いただければと思います。

0-3. 報酬とは

「どう頑張れば、いつ、どれくらい給与が上がるのか?」

誰しもこの問いが自分自身の中で発生したことがあるかと思います。ここで言う「どう頑張れば」とは、等級定義と評価手法に紐付いており、「いつ」については、評価タイミング/評価期間に紐付いています。「どれくらい」については、本項の報酬レンジが紐付いています。

報酬レンジ表については、おそらく皆さまご覧いただいたことがあるかもしれません。各等級によって報酬が羅列されている表を指します。

ただ、「報酬」は、そんなに単純な話でもありません。例えば、基本給とインセンティブの割合、固定残業時間は何時間にする、などのいわゆる金銭の観点についても少々関係してまいります。

補足ですが、本ブログは人事制度の詳細の説明をするのではなく、クイックに人事制度を作った事例についてご紹介する内容になります。そのため、これらの基本的な内容をお知りになりたい方は、当社にお問い合わせいただければ丁寧に説明いたしますので、ご安心ください。


1. 人事制度構築において、決めるべき事項

人事制度構築をするにあたり、まず直面する課題は、

「何をどの順番で決めていけば良いのか?」

だと思います。少なからず私は最初に人事制度構築をした時、そしてお客さまと人事制度構築をご一緒したときにそう感じました。

また、「何を」「どのような順番で」に加えて重要だと感じたのは「重要度」でした。重要度とは、人事制度全体に与える影響度というか、すべての項目が均一に重要であるわけではないと思っています。確実にきちんと決めなければ、後々支障が出る項目に影響が出ると言う重要度が高い項目が存在しています。それらを本項で見て参りましょう。

1-1. <何を> 人事制度構築で決めるべき項目

まずはこちらをご覧ください。

これらが人事制度構築において決めるべき項目です。他にも決めるべき事はあるかと思うのですが、確実に決めるべきことを記載しています。

1-2. <重要度> 人事制度構築の決めるべき項目の重要度

本ブログの主題はこちらです。

人事制度構築を進める上で、前項の全項目を決めなければならないとなると、少し気が重くなると思います。項目数も多いですし、そして「どのように」決めなければならないのか、よくわからないかと思います。そのため、各項目における重要度を設定することによって、

  • 凝って作成すべき項目

  • 凝らなくて良い項目

に分類することができます。言うまでもなく、前者には作成時間を多くかけた方が良いでしょうし、後者は「郷に入っては郷に従え」ではないですが、ある程度よくある事例を適用しておけば、そこまで大きな問題は発生しないと思っています。

では、この2つの項目に分けられるとして、どのような分類になるのか?こちらをご覧ください。

これは私の主観で作っています。そのため、人事制度構築の百戦錬磨の方がご覧いただくと、細かい修正はあるかもしれませんが、個人的にも会社の代表として人事制度を構築/運用する立場として、そして様々な企業さまの人事制度を構築する立場として、感じた結果を記載しています。

なぜこちらの図の分類になったのか?については、本ブログの「3」で説明します。


2. (少し遠回り) 人事制度を構築する前に抑えるべきこと

2-1. 給与の原資の基本は利益であること

まず前提としてここを押さえなければ、メンバーと不要な関係を構築できなくなります。

一般的に、給与の原資は「売り上げ」ではなく「利益」から捻出されます。なぜならば、どんなに大きな売り上げがあっても、その分コストが増大してしまうと、給与を上げたところで赤字になってしまう可能性が高いからです。

そのため、下記を覚えておくべきです。

  • 「売り上げ」が上がっても「利益」が下がっていれば、「給与」は上がりにくい。

  • 「売り上げ」が上がっていて「利益」が上がっていれば、「給与」は上げやすい。

  • 「売り上げ」が上がっていて「利益」が上がっていて、ただ「社員数」が増えていると、「給与」は上がるかもしれないが、上がり幅は小さくなる。

また、少し別の角度で説明をすると、

  • 「前回の評価」で「給与」が上がった。ただ、「今回の評価」が前回と同じであったが、前回ほど給与が上がらなかった。なぜならば「利益額」が上がらなかったから。

こんなことも発生し得る可能性があります。ただ、評価される側(社員)からすると「なぜ前回と同じ評価なのに、前回と同じ給与の上がり幅ではないのだ?」と不満を漏らすのが普通です。これは、「そもそも給与の原資が利益額であること」を理解していない上に発生する不満です。

2-2. 利益を上げるための行動が評価されるべき

前項で説明をした内容をブレイクダウンしていくと、「評価項目」にも適用することができます。先ほど「給与の原資は利益額」と記載しました。そのため、「利益額を上げるための行動」が評価されるべきであることは、皆さま納得感があるのではないでしょうか?

ただ、利益額を上げるための行動とはどういった事例があるでしょうか?
例えば、

  • 売り上げの向上(成果/目標評価)

  • 自身のスキルアップ(スキル評価)

  • 社内へのアクション(マネージメント/リーダーシップ評価)

  • 社外へのアクション(情報発信など)

これらが挙げられます。利益を上げるために最もわかりやすいアクションとしては売り上げを上げることだと思いますが、すべてのポジションにおいて、自身の職務内容が売り上げ向上に短距離で直結しているとは思いにくい職種も発生しています。ただ、全てにおいては、利益を上げることに遠からず近からず直結しています。

繰り返し説明をすると、前項の話をブレイクダウンしていくと、評価項目についてもおのずと決まってくる可能性があると言う話です。

給与を上げるためには、自社の「利益額」が増えなければなりません。利益額が減っていて、給与を上げるとなると、会社は赤字になる確率が上がります。もし仮に利益額が大きくなっているのに、給与が上がっていなければ、会社とメンバーはフェアではありません。

2-3. アジャイル人事制度の在り方

これは私がベンチャー企業育ちなので、特に強く感じていることかもしれませんが、人事制度をかなりこだわって作ったとしても、結局運用している途中に、会社の状況が変わったり、事業/サービスの方向性が変わったり、個人の役割が変わったり、なんて事は日常茶飯事に発生します。

そのため、すごく自信を持ってリリースした人事制度だとしても、その内容を変えざるを得ない状況に直面することは多くあります。その際に、「ここまで時間をかけてじっくり作ったのに…」「メンバーに発表した直後に変えることなんてできない…」と思うことが必然的に発生してしまいます。ただ、

「僕らはベンチャー企業で、本当にスピーディーに状況が変化する中で仕事をしている。そのため、会社において評価されるべき項目や割合が変化する事は発生することを前提に考える、人事制度のあり方や等級定義/評価項目についてもフレキシブルに、スピーディーに変えなければならないかもしれない。そのため、半年に1回人事制度の内容のレビュー/改修もする前提で、人事制度の運用してみようと思う。」

と言う類の話を、事前にメンバーにしておくと、メンバーにとってもメリットがある話だと捉えてくれることが多く、個人的にはお勧めしています。


3. 凝って作成すべき項目

前項の続きです。先ほど、「凝って作成すべき項目」と「凝らなくて良い項目」で分類しました。繰り返しになりますが、あくまで山根の主観で作成しています。

3-1. 等級定義

言わずもがな筆頭が等級定義です。等級についての説明は前述した通りですが、等級の在り方は各業界、各企業さまによって大きく異なります。仮に同じ業界で同じターゲットに同じような商材を提案していたとしても、等級定義が異なる可能性は十分にあります。なぜならば、カルチャーが異なる可能性があるからです。

本ブログでは、人事制度構築における各項目の策定の仕方を細かく言及する目的ではありません。そのため、等級定義の策定の仕方についての言及は致しませんが、等級定義は下記3つの種類が存在しています。


これらはあくまで代表的な種類で、3つのどれにすれば良いと言うわけではなく、2つが混在していることも大いに発生します。

等級定義が決まれば、評価手法(項目)の方向性が導かれます。

3-2. 評価項目

評価項目と言うのは、評価手法だと思っていただいて問題ありません。ただ、前述しましたが、評価項目は「行動評価」と「成果評価」に大別されます。これ以外の細かい評価手法は存在していますが、評価手法にトリッキーな要素を入れることのメリットはそこまでなく、むしろ正当に評価するためには、行動評価と成果評価において実施することがオーソドックスになるとご理解ください。

参考までに、当社が評価手法についてまとめた表をこちらに記載します。

3-3. 行動評価の詳細設計

ここはさすがに時間がかかります。ここで言う行動評価とは、いわゆるバリュー評価/コンピテンシー評価、そして業務スキルの評価も内包しています。もちろん、業務スキルの評価を独立させ、業務スキル評価と行動評価と成果評価の3つで分けても良いのですが、運用してみるとわかりますが、3つの評価項目を並行させて評価をしていくのが難易度が高いことをご理解いただけるかもしれません。

話を戻して、行動評価の詳細設計について時間がかかる理由は、下記の通りです。

  • 何の行動「項目」を評価するのか

  • 各項目は何の「要素」で成り立っているのか

  • 各項目/要素が含まれた「説明文」の作成をどうするか

  • 等級ごとの各項目/要素/説明文をどうするか

これらを決めなくてはなりません。

「そもそも、当社はどのような行動を評価するのか?」と言う議論からスタートする場合は、割と大変です。会社にはバリュー(行動指針)が存在することが多く、そのバリューがミッション/ビジョンの達成につながっていると言う前提で申し上げると、バリュー評価が適切な場合もあります。

3-4. 成果評価の詳細設計

成果/目標評価についても時間がかかります。下記をご覧ください。

成果/目標評価をきちんと実施しようと思えば思うほど、その運用工数は上がります。一方で、運用工数を下げて実施した場合、成果/目標評価に対しての不満は大きくなってきます。これが本当に難しい。

ただ、皆さま、ここで1つ思い出してください。

人事制度を構築するそもそもの目的は何か?各社においてそれぞれ目的があるかと思います。けれども、オーソドックスな目的としては、
「社員の定着率を上げる」
「社員のパフォーマンスをアップさせる」
「社員の成長促進」
などだと思いますが、人事制度がそれを逆に阻害してしまっていた場合、人事制度がない方が良いかもしれません。

何を申し上げたいかと言うと、先程のスライドで成果/目標評価の丁寧さと業務工数が反比例していることをご理解いただいたかと思います。人事制度の策定をした目的からブレイクダウンしていくと、成果/目標評価については、時間がかかるものだと捉えていただいた方がわかりやすいかもしれません。

3-5. 仮評価

仮評価とは、メンバーに人事制度の発表する前に、その時点までに決定している人事評価手法で、実際にメンバーを評価してみる、と言うステップです。

前述しましたが、仮評価で、これまで策定してきた人事制度の概要/詳細がひっくり返ってしまうこともあります。もしかしたら、設定した等級定義が厳しすぎてしまっている可能性もあれば甘すぎてしまっている可能性もあります。また行動評価の基準値についても厳しすぎたり、甘すぎたりと言う事象が発生します。

個人的にお勧めなのは、前述した内容の設計にそこまで時間をかけずに、仮評価に早めに入ることです。


4. 凝らなくて良い項目

4-1. 等級数

まず前提として、等級数は7つ程度で個人的には良いと思っています。
この場合、

  • 等級1:見習い

  • 等級2:一人前(初級)

  • 等級3:一人前(上級)

  • 等級4:マネージャー(初級)

  • 等級5:マネージャー(中級〜上級)

  • 等級6:部長/執行役員

  • 等級7:取締役

このように、割ときれいに収まります。ただ上記で示した「一人前」と「マネージャー」を同じ等級にしたい場合は、等級を5つにすることも可能です。また、部長以上を同じ等級にしたい場合については、等級を4つに絞ることも可能です。

ただ、等級数を5つにするのか、6つにするのか、7つにするのか、のようなディスカッションが発生しますが、そこまで大きな意味をなさないと感じています。なぜならば、後述しますが「仮評価」と言うステップにおいて「等級を増やそうか? (減らそうか?)」と言うディスカッションに及ぶことがあるからです。

本項以外にも何度か記載することになると思いますが、「仮評価」をした上で、人事制度構築が全てひっくり返る可能性もあります。なぜならば、実際に評価(仮評価)をしてみると、正当ではない場合も大いに発生するからです。そのため、等級数を序盤のタイミングで深いディスカッションにおいて決めると言うのは、私はそこまでしなくて良いと考えています。

4-2. 入学要件/卒業要件

等級定義を決める際に、入学要件と卒業要件のどちらにすべきか?と言うディスカッションをする必要があります。私は、入学要件の方が良いと思っているタイプです。

入学要件と卒業要件の違いや、入学要件の方が良い理由などはこちらに記載している通りですが、ここでディスカッションを長めに取る必要もないと思っています。これも「仮評価」をする場合に、多様な意見が出て参りますので、そこで少し変えてみようか?と言う軌道修正も可能になりますので、ご認識ください。

4-3. 評価者

誰が評価者なのか?については、その時点で全く決まっていなければ、割とディスカッションをする必要があるかもしれませんが、概ね抑えるところを抑えられれば、そこまで長く時間を取らなくて良いと思っています。
参考までにいくつかスライドを記載します。


一次評価/二次評価と言う考え方と、メイン評価者/サブ評価者、と言う考えもあったりします。ベンチャーフェーズの企業さまであれば、社長中心とした決裁者が評価を決定することが良いと思っており、このタイミングで長くディスカッションするのも、そこまで必要性は薄いのかなと個人的には考えています。

4-4. 評価期間

6ヶ月で良いと思っています。いくつか参考までにスライドを記載します。

評価期間は3ヶ月、6ヶ月、1年、この3つがよくある評価期間になりますが、3ヶ月では短く、1年だと長いと感じられることが多いと感じています。特に私はベンチャー企業界隈へのHR支援をする人間ですから、3ヶ月と言うのもありだとは思いつつ、評価者に大きな負担が及びます。また1年でも良いとは思いつつ、ベンチャー企業においては1年後に全く違う会社になっている可能性も多いに発生します。

そのため、評価期間については概ね6ヶ月で良いのではないか?と考えています。

4-5. 等級公開の是非

全メンバーの等級を社内で公開するのか?と言う議論が必要です。ある企業さまでは「〇〇部長」「〇〇マネージャー」と言う名称で社内で呼ばれている場合もあるかもしれません。ただ、そもそもメンバーの等級を全体公開していなければ、このような名称で呼ぶこともありません。

この文章だけ見ると「等級公開はしないのが普通でしょ」と思うかもしれませんが、等級を非公開にすることによるデメリットも発生します。

僕の意見としては、ベンチャーフェーズは等級は非公開で良いのではないかと思っています。なぜならば、採用活動において、どうしても人事制度の報酬レンジを「外れた」年収を設定せざるを得ないタイミングが発生することが多いからです。また、各業務の正解(マニュアル)が完全に整っていない中で、誰が活躍するかもわかりません。そのため、一般的にビジネススキルが高いメンバーが存在していた場合、ビジネススキルがそれよりも低いメンバーが年収について上回ってしまっている可能性が発生していることもあります。そうなると、秩序が保てなくなりますので、最初は非公開で良いのかなと個人的には思っています。

誤解がないように申し上げると、その企業さまの人事制度を策定した目的やゴールによって、この議論のゴールは変わってくると思いますが、ご認識いただければと思います。

4-6. 中途入社の評価対象者について

ベンチャー企業では、中途入社が毎月のように入社してきます。もし仮に3月が評価月だったとして、1月に入社した方は評価対象になるのか?と言う類の話です。


私の意見はこちらですが、中途入社の方がいつから評価対象になるのか?については、各求職者さまの選考の後半にお話ししていただいた方が良いと思います。これは何が正解か?と言うよりは、情報をきちんと明示しておくことの重要性の方が高いと感じています。

4-7. 絶対評価か相対評価か

絶対評価と相対評価の文言の違いはこちらに記載した通りですが、どちらにするのか?と言う部分について決めておく必要があります。少し補足説明をすると、この絶対評価と相対評価については、2つの側面があります。

1つは、各評価時における絶対評価と相対評価。
どういうことかと言うと、例えば行動評価をするとしましょう。その際に〇〇さんは3点なのに、△△さんは4点なのはありえない、という類です。

2つ目は、最終評価決定時における絶対評価と相対評価。
前述した1つ目は「行動評価」についての言及でした。ただ、この2つ目は「最終評価決定時」に限定しています。どういうことかと言うと、絶対評価と相対評価が存在している1番の目的は、「給与決定における決定基準」を作るのか作らないのかと言う話です。もし仮に、今期の利益がほとんど出なかったと言う場合は、相対評価を導入しておくと、給与への還元額を調整することができます。なぜならば、給与の原資は利益であり、その利益が少なくなってしまった場合は、周りのメンバーと相対比較をしながら、給与の「上がり幅」を貢献度合いに応じて決定していく。そのため、最終評価決定時にうまく調整できるのが相対評価です。

ただ、そもそもベンチャー企業はまだ利益が出ていないこともありますし、ベンチャーキャピタルさんを中心に資金調達をした額でビジネスを進めていく必要がありますので、その金額の範囲内で絶対評価にすると言う感じが良いのではないか?と感じています。


5. (補足) 人事制度を構築/運用する際に念頭に置いていただきたいこと

こちらのブログに詳しく記載していますが、

人事制度構築は、人事組織の中に内包される1つの仕事です。人事組織領域については、人事業務の中で「採用業務」の経験をそこそこ積んだ後に経験をすると言う雰囲気があります。

ただ、声を大にして言いたいのは「採用業務」と「人事組織業務」は全く別の職種だと思ったほうが良いです。使う筋肉も違いますし、ゴール設定も異なります。何を申し上げたいかと言うと、人事制度構築には完全なる正解がありません。その企業さまのミッション/ビジョンのあり方も異なりますし、どのような人事制度を作ったとしても、全メンバーが納得感を持ってくれる人事制度を作る事はほとんど無理だと言っても良いと思います。なぜならば、そのメンバーの価値観が異なりますし、何より発達段階が異なると思っているからです。発達段階の話を始めてしまうと、本ブログが長くなってしまうので、割愛しますが、わかりあえないことが発生すること自体を認識しておかなければ、人事制度に過度な期待をしてしまうことも多いかと思いますので、ご認識ください。


最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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