海外の事例をハックした結果生まれた ポテンシャライト流のEmployee Experience(EX)について
「海外の会社を中心にEmployee Experience(EX)を専門に取り扱うチームが生まれてきてますね」
そんな会話がポテンシャライト社内であがっていたのは、ちょうど1年前の頃でした。
日本ではメルカリさんがEmployee Experience(以下、EXと呼ぶ) の部門を持っていることは割と有名な話ですが、今後日本でもある程度規模感がある会社を中心にEXの部門が立ち上がっていくかと思います。
ただ、そもそもEXとは何なのか。そして、なぜ昨今騒がれるようになったのか。正直、僕自身 完全に腑に落として理解できていなかったのですが、ここ最近EXの調査を進めるにあたり、納得ができる1つの解にたどり着きましたので、本ブログを書きたいと思います。
0. Employee Experienceとは
Employee Experience とは
従業員体験のこと。従業員が自社に入社する前、入社した後、そして退職した後のすべてのやりとりが含まれます。
昨今、「〇〇エクスペリエンス」と言う表現がトレンドかと思うのですが、EXは、従業員の体験設計であることは容易にご理解いただけると思います。
では、従業員の体験を定義する際に、EXは、何の「項目」で構成されており、どのような「順番」で整備していくべきなのか。 個人的に考えていたところ、ある1つの解にたどり着きました。
1つずつ説明して参ります。
0-1. Employee Experience の「項目」
まずこちらをご覧ください。
こちらは当社ポテンシャライトが定義している「人事組織」の項目マッピングです。なぜこのスライドをお見せしてるのか。少し遠回りして説明したいと思います。
では、次にこちらをご覧ください。
こちらは法人企業が人事活動をするにあたり、流れをマッピングしたものになります。この内容はいくつかにカテゴライズできます。
本ブログはこちらの内容に言及するものではないため、割愛いたしますが、ざっくり説明すると法人企業の人事活動は、「採用マーケティング」「採用活動」「人事組織」に大別することができます。
そして、「人事組織」のカテゴリーに焦点を当てると、下記のような項目で整理することができます。
こちらは最上段でご紹介していたスライドですね。つまり、「人事組織」は「採用マーケティング」と「採用活動」を終えた後に進んでいくフェーズになります。
細かい話をすると、ポテンシャライトは「採用活動」と「人事組織」の境界線を曖昧にしています。なぜならば、人事組織をうまく構築/運用するために「入社前」のアクションが重要だからです。「入社前」は選考途中である可能性もあるでしょうし、選考途中であればそれは「採用活動」に来訪されたりします。そういった意味合いで境界線を曖昧にしていると言うわけです。
話をEXに戻します。
本ブログの冒頭に「EXとは何か」を説明しました。そこでは、「入社前/入社後/退職後の一連の体験」と表現しましたが、これはポテンシャライトが定義している「人事組織」の分類に限りなく近いのではないかと感じています。
0-2. Employee Experience の目的
従業員の「定着」と「パフォーマンスup」だと個人的には思っています。なぜこの意見なのかは後述する「EX」と「人事組織」をほぼ同等と考えているからです。
0-3. なぜEmployee Experience を「人事組織」と呼ばないのか?
ここが個人的には非常に興味深い部分です。
ポテンシャライトが「人事組織」と呼んでいるのは、僕自身が2008年からHR業界に携わり、当時から使われていた言葉だからです。僕の固定概念としては「入社前」は採用活動。「入社後」は人事組織としてざっくり分類していました。つまり、入社後に起こり得る活動は人事組織である、と言う認識を当時持っていました。
そして、僕は2010年頃までは、人事組織≒「人事制度構築」を大雑把に表現していることがありました。
例えば、こんな話をしていたことを今でも思い出します。
「人事活動は3つに大別できます。1つは採用活動。2つ目は人事制度構築。3つ目は労務。すべて異なる能力なので、時々としてキャリアアップするためには、どの領域においてスキルを積むか考えましょうね」
この表現が、今の日本の人事領域における固定概念を生んでしまっている理由なのではないかと思います。
どういうことかと言うと、前述した「2つ目」において「人事制度」と表現しました。つまり、先程から申し上げている「人事組織」の内容を「人事制度」を中心に考えている時代があったかと思います。これは「採用」に軸足を当時置いていた僕の表現であります。
そのため、誤解がないように申し上げますと、2010年頃までの期間においても、人事制度以外にも人事組織活動はありましたが、大別するとこう認識していたのです。
改めて話を戻します。
なぜ、EX と呼ぶのか。それは、「当時の人事組織」と「EX」の「範囲(項目)」が大きく異なるからなのです。もう一つ理由を挙げるとするのであれば、日本の「人事組織」に強みのある会社が、人事組織における範囲(項目)を頻繁にアップデートしてこなかったが故に、今の日本ではEXの概念が曖昧になってしまっていると僕個人的には感じます。
0-4. で、山根が思う人事組織とEmployee Experienceの違いは何なのか?
本ブログの最初のメイントピックスはココです。このトピックスをわかりやすいように表現すると、下記の3つのスライドをご覧いただくと良いかと思います。
※ EXの範囲(項目)は定義している方によって異なる事は認識ください。
自社のことを棚に上げるわけでは無いですが、ポテンシャライトは、これまでの日本の「人事組織」の項目に疑念を持っていました。この項目は、昨今の変わりゆく働く価値観やコロナ禍における働き方に順応することが難しいのではないか。Web業界を中心に、仕事において使用するツールが進化し人が仕事をするときに求める要素も変化している中、人事組織におけるアップデートができていないのは良くないのではないか。そんなことを感じていました。
こんなブログを約1年前に書いていましたが、当時から感じていたことです。
本項の結論としては(繰り返しになりますが自社を棚に上げて表現をすると)、ポテンシャライトが定義している「人事組織」の範囲(項目)と昨今トレンドになっているEXの範囲(項目)は限りなく近いです。そのため、EXを語る上で、ポテンシャライトの「人事組織」の範囲(項目) を中心に、本ブログは話を進めたいと思います。
※補足
海外を中心にEXの記事を読み漁りましたが、僕が出した結論は前述した通りです。ただ、ポテンシャライトが定義している人事組織の「結論」にたどり着いた手法と、EXの項目の「結論」にたどり着く「やり方/観点」が異なります。
ポテンシャライトは人事組織の「課題」を様々な事例からかき集めたり、日本/海外の「退職理由」を分析して自社のノーハウにたどり着いています。ただ、後ほど説明しますが、EXは「エンプロイージャーニー」を用いて項目を整理していることが多いです。
ただ、たどり着いた最終的な答えは限りなく近かった、と言う事は先に申し上げておきます。もちろん違いがあったので、本ブログはその言及をしたいです。
1. Employee Experience の項目
EXの項目をハックするために、海外のEXに強みを持つ企業の記事を参考に、15社程度のEXの項目を羅列してみました。
これらを調査した上で整理してみたEXの項目の結論は下記です。
◆EXの項目
- カルチャー
- テクノロジー導入/業務ツール
- フィードバック
- マネージメント
- オフィス
- コミュニケーション/チームワーク
- 成長環境
- オンボーディング
- 研修環境/教育研修
- 福利厚生/ワークライフバランス
- ミッション/ビジョン
15社さまのEXの項目を調査した際に、項目件数が多い順に並べています。これらの項目を一つ一つ見てみましょう。
1-1. カルチャー
従業員の体験にもっとも影響があるのは「カルチャー」でした。これは僕個人的にも腑に落ちており、どんなに働きやすい環境だったとしても、会社の「カルチャー」がミスマッチであれば短期退職に繋がるかと思います。そのため、従業員体験を司る第一番手はカルチャーであると言えるのではないかと思います。
1-2. テクノロジー導入/業務ツール
確かに!と思った項目でした。日々仕事をするにあたり使用している業務ツールが従業員体験に大きく影響しているということです。確かに、当たり前のようにSlackを使っていますが、もしSlackでなければ仕事の仕方が大きく異なるかと思います。そう考えると業務ツールが従業員体験に大きく影響が出ていることは頷けます。
1-3. フィードバック
仕事内容に寄るかと思いますが、社内において多くのフィードバックを受けるかと思います。そのフィードバックの量・質については従業員体験に大きく影響が出ていることは頷けます。確かにフィードバックがあまり上手ではないマネージャーだった場合、毎日の仕事が少ししんどくなってしまう可能性はありますよね。
1-4. マネージメント
前項よりも広義な項目ですね。皆さま、下記のデータをご覧ください。
これはachieversという企業さまのデータを参照しています。つまり、「退職者の4人に3人は直属の上司が退職理由に直結している」ということです。個人的に、これはびっくりしました。確かにこれまで自分の部下にあたる方々が退職をしていった際に、僕の影響が大きいとは思っていましたが、まさか4人に3人とは思っていませんでした。そう考えると、従業員体験においてマネージメントが大きく影響を及ぼしていることは頷けますよね。
1-5. オフィス環境
オフィス環境が良い/悪いは従業員体験に影響します。前項と比較すると少し件数は少なかったのですが、疑念の余地なく従業員体験を設計している一つの項目となるでしょう。当社ポテンシャライトは2022年の7月に移転予定ですが、新しいオフィスにはさまざまな体験設計をつくる予定です。集中するスペース、集まるスペース、談笑するスペース、リラックスするスペースなどがオフィスに設計されているため、従業員体験は良くなるかと思います。
1-6. コミュニケーション/チームワーク
社内外におけるコミュニケーションは従業員体験を作っている一つの項目です。これはカルチャーも関係してくるかと思うのですが、社員同士のコミュニケーションの取り方によって従業員の体験は異なってきます。また、チームワークが良い/悪いも重要な要素の一つになります。
1-7. 成長環境
従業員が成長できる環境を準備できているのか、についても従業員体験を設計している一つの要素です。メンバーのWillを満たすことができない仕事が多いと、メンバーも成長しないですし、成長環境を作ることが従業員体験をより良くするのです。
1-8. 入社オンボーディング
入社オンボーディングは入社直後に体験する重要なイベントです。入社する誰しもが経験するものであり、入社オンボーディングの良し悪しによって、メンバーから自社への印象が決まってしまう、と言っても過言ではないはずです。
1-9. 教育 / 研修
前述した「成長環境」とやや近しいですが、教育/研修環境をどの程度準備してもらっているのかも重要な要素になり得ます。メンバーはいつも成長をしようとしています。そのため、教育/研修がある程度整っている場合は、従業員体験が良くなる一つの要素となり得ます。
1-10. 福利厚生/ワークライフバランス
いわゆる働き方、そして福利厚生が整っていることは、従業員体験をより良くする要素です。ただ、闇雲に福利厚生を充実させるだけでは効果の最大化は難しいです。ペルソナに沿った方々が活き活きとしていただけるような福利厚生を準備すべきなのです。
1-11. ミッション/ビジョン
最後にミッション/ビジョンを持ってきましたが、これは割と当たり前に準備しておいていただきたい項目です。会社の根幹はミッション/ビジョンですし、「なぜ」会社が存在しているのか、「どこ」を目指していくのか、は非常に重要です。従業員の体験設計をする際に、「なぜ」「どこ」がないと、何のための従業員体験なのかがブレてしまいます。
2. Employee Experienceから項目をあぶり出してみる
前項では、海外のEXに強みがある企業の各社の項目を羅列して整理していきましたが、「〇〇エクスペリエンス」の設計の一般的な手法である、「〇〇ジャーニー」をきちんと設計して、結論を出す手法もちろんあります。
おそらく、マーケティングに強みがある方、UX/UIデザイナーの方、プロダクト開発に携わっている方は「カスタマージャーニー」を作成されたことがあるかと思いますので、カスタマージャーニーの「エンプロイー版」とご認識いただければ良いかと思います。
ただ、カスタマージャーニーを設計するのはものすごく時間がかかるかと思います。そして、エンプロイージャーニーを人事部の方主導で作成するのもすごく大変ですし、他部署の方を巻き込んで作成するのも本業がある中で大変かと思います。
エンプロイージャーニーからアプローチする方法は好ましいかと思いますが、時間がかかることをご認識ください。そのため、本ブログで公開している「項目」を理解いただいた上でEXの設計に反映していくことは、効率面で申し上げると良いアプローチかと思います。
3. Employee Experienceの落とし穴
EX、つまり「従業員体験」を設計する際に、闇雲に「これは入れよう」「これは良い」と進めていくのは良くありません。
僕自身も会社の代表として、このEXについて、闇雲に人事部が進めていた場合は「ストップ」をすると思います。それはなぜか。説明したいと思います。
3-1. 「誰」のためのEXなのか
もちろん「従業員」のためです。ただ、従業員と一言で言っても様々な従業員が存在していますよね。もちろん各社によって従業員数も様々ですし、求める人物像に合致している従業員の比率も様々かと思います。
何が言いたいかと言うと、「御社が求めているペルソナ(人物像)」にとって最適なEXを設計すべきだと強く感じています。
例えば、EXをリッチにするために「福利厚生を充実させよう。早速〇〇を導入しよう」という話があったとします。ただ、導入しようとしている「〇〇」という福利厚生が、御社のペルソナ(人物像)にとって最適な内容ではなければ、積極的に導入をすべきではないかもしれません。
EXは、何でもかんでも充実させれば良いと言うわけではありません。そして、会社がDXについて充実させることを従業員に明言をすると、ありとあらゆる意見が従業員からあがってきます。そして、従業員はその意見が近い未来に反映されると信じます。そのため、結果的にエンゲージメントが下がる1つの要因になってしまうこともあるかと思いますので、ご注意いただければと思います。
3-2. 重要なのはペルソナ(人物像)の設計
下記のブログをご覧ください。
本ブログはEXについて言及するため、このペルソナについての詳しい説明は致しません。内容を見ていただければご理解いただけるかと思いますが、すべての「人事組織」の施策はこの「ペルソナ」が起因していると言う内容です。
すみません、👆 こちらであえて「人事組織」と表現したのですが「EX」でも同じ話が言えます。
言い換えます。すべての「インプロエクスペリエンス」の施策はこの「ペルソナ」が起因していると言う内容です。
4. Employee Experienceに取り組むタイミング
一概に人数で結論を申し上げにくいのですが、あえて答えを申し上げるのであれば、社員数が「15〜20名」程度のフェーズかなと思います。
理由はシンプルで、社長を始めとした経営陣が、目が届く範囲「外」が発生してくるからです。
冒頭のほうに記載しましたが、EXの目的は従業員の「定着」と「パフォーマンスアップ」だと個人的には思っています。と定義したときに、少人数のフェーズにおいて社長や経営陣が全メンバーを見える範囲にあり、コミュニケーションにおいてEXのフォローができるのであれば、何とかなることはあります。
ただ、一般的に20名程度の組織になってくると様々な歪みが生まれます。その歪みの種類をいくつかご紹介すると、
あくまで一部ですが記載してみました。
そしてこれらの問題は、各社の状況によってそれぞれの「タイミング」で訪れます。一概に「〇〇人で必ずこの問題に直面する」と言うのはありません。なぜならば会社はいつものであり、社長や経営陣、そしてそれまでに採用したメンバーのタイプ/レベル、カルチャーの浸透度合よって直面する問題が変わるからです。
話を戻すと、EXは社員数が15〜20名程度のフェーズから取り組むべきかと考えていますが、問題が表面化してくるタイミングは会社によって様々ですのでご認識いただければと思います。
5. 具体的に何から取り組めば良いのか?
本ブログは割と大枠の概念について言及しておりました。ご理解いただけたかと思うのですが、これらを全て取り組もうとするとすごく大変です。
そして、本ブログで全てご紹介するのも、ものすごい長文になってしまいます。そのため、本日ご紹介した内容で可能な限り当社のブログで補足させていただければと思いますので、必要に応じてご覧ください。
これ以外にもあるのですが、ものすごく多くなってしまいそうなので一旦こちらで本ブログを締めたいと思います。
最後に
皆さんいかがでしたでしょうか。
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