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人事部長・人事マネージャーが退職に至る理由と対策を詳しく記載します

「山根さん、人事マネージャーが退職になったのですが、お手伝いいただけますか?」

この類のご相談は割と多いです。人事マネージャーの退職はインパクトが非常に大きいと思います。そして、ノウハウや仕組みが人事マネージャーに帰属していることも多いかと思います。退職が確定すると、気が気ではない経営者の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

また、人事のメンバークラスの方々も、人事マネージャーや人事部長の方の退職に関しては不安でしょうし、何をすれば良いのか?についてはままならない状況かと思っております。
そのため、本ブログでは、人事マネージャーや人事部長が突然の退職に至った場合に、何をどのような手順で進めるべきなのか?についてノウハウをご紹介したいと思います。




0. 人事マネージャー・人事部長は何をしているのか?

まず、経営者をはじめ、非管理部門の方々は、人事マネージャーや人事部長がどのような仕事をしているのか?について正確に把握してる方は多くは無いかと思います。

「人事は採用活動をしてるんだよね?」

と言う、人事=採用担当のようなイメージをお持ちの方も少なくはないのではないでしょうか?
そのため、人事マネージャーや人事部長の方が何をしているのか?について簡単に説明する項目を作りました。

0-1. 経営陣との折衝

事業部長クラス以上と表現した方が正確かもしれません。
人事部長や人事マネージャーは、経営陣からの人事関連におけるオーダーをいただき、その詳細を理解し、そして人事部のメンバーに伝達する役割を持ちます。もちろん、人事部の人数が少ない場合は、経営陣との折衝+人事実務も実行します。

人事部のメンバーのレベル次第ではありますが、この経営陣との折衝におけるスムーズさ、ストレスのなさについては、経営陣からすると重要だと思います。
仮に人事マネージャーや人事部長が退職に至ったら、この指示を経営陣から人事のメンバーにする必要が発生します。何度も言いますが、人事メンバーのレベルは一旦さておいて、経営陣の要望の意図や文脈などの理解の精度やスピードが落ちるため、経営陣もモヤモヤすることが増えるでしょう。

0-2. 採用戦略・戦術の立案

採用活動における裁量を持っているこのクラスの方々は、戦略や戦術の立案を実行しています。
メンバークラスの方々は、採用の実務(手を動かす業務)は問題なく実行できますが、その上流部分となる業務については、経験がないことが多いです。
そのため、もし人事マネージャーや部長が退職したら、戦略や戦術については、人事メンバーに任せるのか否か、と言うディスカッションが必要になるかと思うのですが、経営陣クラスや事業部長クラス等の採用活動における機関を持っていらっしゃる方々は、「自分たちで採用の戦略や戦術を立案しようか?ただ、そこまで専門性がないぞ」と言う問題に直面するかと思います。

0-3. 人事組織関連の業務

他の項目と同様に、人事メンバーの人数や役割次第にはなりますが、いわゆる組織開発や人材開発を含めた人事組織関連の業務については、人事部においても上のレイヤーの方々が担っているケースが多いです。メガベンチャーや大手企業であれば、人事部自体が、採用チームと組織開発チームと人材開発チーム、そして人事制度を運用する部署などに分かれていることもありますが、当社の主要の企業であるベンチャー企業において、ここまで分類されていることはまずありません。
人事組織関連の業務は本当に多岐に渡ります。例えば、

  • ミッション/ビジョンの浸透

  • バリュー/カルチャーの浸透

  • 入社オンボーディング設計・運用

  • マネージメント研修・育成

  • 人事制度構築・運用

  • エンゲージメント控除のための施策立案

  • 福利厚生の設計・運用

これ以外にも多岐に渡りますが、多数の人事組織型施策を立案・実行する必要があります。
採用活動と比較すると、全社員を巻き込むことになること、またその企業でもレイヤーが高めな方々とのコミュニケーションを取る必要性があること、そして「なぜやるのか?」と言う異議を唱える必要があることなどが起因して、採用活動よりも難易度が高い仕事ともいえます。(採用業務と人事組織関連の業務のどちらが偉いと言うわけではありませんが)。

個人的な話を挟みますが、この人事組織関連の仕事においては、人間的な器が必要になると思っています。少なくとも、マネージャー以上の視座については、間違いなく持ていなければ務まらない仕事だと思っており、人事組織関連の担当をしているメンバークラスの方がいた場合、実際にはほとんどその上のレイヤーの方が全て指示をしていた、なんて事はよく発生する事実です。

そのため、もし人事マネージャー・部長の退職があった場合は、人事組織関連の施策がほぼ手薄になる可能性もあります。この場合、すぐに会社の定着率やエンゲージメントに影響がある事はありませんが、半年後、1年後にじわじわと影響が及んでいくことが多いでしょう。そして、「時間」が伴ってくるため、「何が理由だったんだ?今回の退職は。」と言うふうに、まさか半年前や1年前に退職をした人事マネージャーの影響だった、ということもあったりします。

0-4. 細かい火消し・退職の阻止

本ブログを書きながら、「これが最も効能として大きいのでは?」と感じました。社員数が多くなればなるほど、とてつもなく多くの細かい問題が無数に発生します。

  • 隣のメンバーとその隣のメンバーが人間関係的な歪みが発生していた

  • 隣の部署とその隣の部署が冷戦状態であった

  • 突然退職をすると言い出したメンバーがいた

など、本当に様々な問題が多数発生します。

「世の中で発生する問題の80%は人間関係が原因である」

という言葉は、アメリカの著名な心理学者であるデール・カーネギーが述べたとされています。彼は人間関係やコミュニケーションの重要性を説き、多くの著作を通じてその知見を広めました。
細かい人間関係における歪みの発見や火消しを、人事マネージャーの方や人事部長の方が幾分か実行していた場合は、退職に至るとものすごく大変です。

「え、人事マネージャーや人事部長の方は、そんな業務やっていないでしょう」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、会社やその方によってやっていたり、やっていなかったりだと思うのですが、なぜその業務が明るみに出ないかと言うと、「センシティブな内容であるゆえに、公開されることがないから」です。

皆さまがお勤めの企業でも、いらっしゃいませんか?
「この方、役職が高いんだけれども、何の業務をしてるかよくわからない」と言う類の方、もしかしたら皆さんに公開ができないような社内の問題を日々解決していらっしゃるかもしれません。

話を戻すと、もし仮に人事マネージャーや人事部長の方が本項目に記載がある内容に、当事者として携わっていらっしゃらなかったとしても、そういったセンシティブな問題については、「ジャッジ」には、その人事マネージャーや人事部長の方が携わっている可能性も大いにあり得ます。そのため、そのジャッジができる人材がいなくなると言うのは大きな損失なのではないでしょうか?

0-5. PDCAサイクル

人事全般の業務において、いわゆる「運用」は問題なくできる方が多いかと思います。ただ、実務(運用)をこなしていた場合、その効果検証(PDCAサイクル)は実行する必要があります。また、効果検証とは言いつつも、問題発見、課題提起などが非常に重要度が高いですので、ここの難易度は高いです。そのため、現場で採用活動を主導しているメンバーの裏に、人事マネージャーや人事部長が、問題特定や課題提起など、そしてアドバイスをしている事は大いにあり得ます。そのアドバイスが、採用活動における前進につながっている可能性も大いにあります。

人事マネージャーや人事部長の退職をした際に、ある方が、「ただ、ほとんど実務は現場の人事メンバーが行っていたので、強度があるかというと、そんなこともないかもしれません。」と言うお声を直接的に僕も聞いたことがあるのですが、実態を見てみると、ほとんどPDCAサイクルが正確に回っていなかったり、シングルループ学習でなされるような効果検証サイクルしか回っていなかった、なんてことも大いにあり得るのです。

0-6. 様々な意思決定

人事マネージャーや人事部長は、経営陣や事業部長クラスと連携し、採用活動や人事制度の優先順位、リソース配分などの重要な意思決定を担っています。また、経営陣の意図を現場に適切に伝える翻訳者的な役割も果たし、組織全体がスムーズに機能するよう調整しています。こうした意思決定の迅速さや正確さは、組織の方向性を支える基盤とも言えます。

しかし、彼らが退職に至ると、経営陣の指示や要望が現場に正確に伝わらなくなり、意思決定のスピードや質が低下するリスクがあります。その結果、採用や人事施策の進行が遅れるだけでなく、全社的な優先順位が曖昧になり、組織全体のパフォーマンスに影響を与える可能性が高まります。

0-7. メンタルヘルス支援

人事マネージャーや人事部長は、社員一人ひとりの心理的な課題や不満を早期に発見し、適切に対応することで、組織内の心理的安全性を支える重要な役割を果たしています。こうした支援は表に出ることが少ないものの、社員が安心して働ける環境を作る上で欠かせません。
しかし、彼らが退職すると、この役割を担う人材がいなくなることで、社員の不満やストレスが蓄積されやすくなります。結果的に、メンタルヘルスの問題が放置され、離職者の増加やチームの士気低下につながる可能性があります。こうした状況は短期的な影響に留まらず、組織全体の安定性に大きな課題をもたらすでしょう。

0-8. 部門間連携

人事マネージャーや人事部長は、他部門との調整や、経営陣からの指示を他部門に適切に伝える役割を担っています。特に、部門間で発生する摩擦や誤解を解消し、組織全体のスムーズな連携を維持することが求められます。
しかし、彼らが退職すると、部門間の対話が減少し、情報の伝達が滞る可能性があります。その結果、各部門が個別最適化に走るリスクが高まり、全社的なプロジェクトや取り組みが遅延することもあります。部門間の連携が失われることで、組織全体の一体感が損なわれる可能性が出てきます。

0-9. タレントマネジメント

人事マネージャーや部長は、社員のキャリアパスを設計し、リーダー候補を育成するタレントマネジメントを担っています。これにより、優秀な人材が長期的に成長できる仕組みを構築しています。
しかし、彼らが退職すると、このプロセスが停滞し、成長機会を失った社員が不満を抱えるリスクがあります。キャリアパスが不透明な状態が続けば、社員のモチベーションやロイヤルティの低下に繋がるだけでなく、組織全体の競争力も低下する可能性があります。

0-10. 他事業部のメンバーからの人事部への信頼感欠如

人事マネージャーや部長は、現場の業務を深く理解し、各事業部と適切な連携を図ることで、人事部全体の信頼を築く役割を果たしています。しかし、この役割を担う人材が退職すると、人事部への信頼感が低下するリスクが生じます。
特に、現場の状況を理解していない、視座が足りない、といった印象を他事業部に与えることで、「人事に相談しても無駄だ」といった認識が広がる可能性があります。この信頼感の低下は、人事施策への協力が得られなくなるだけでなく、全社的な連携にも悪影響を及ぼすことがあります。


1. どのように対処すれば良いのか?

もし仮に最悪な事態が起こる、つまり人事マネージャーや人事部長が退職に至ってしまったらどうすれば良いのか?様々な対応策がある中でお勧めの手法を記載しておきます。

1-1. 前提として採用活動は困難を極める

もちろん退職をしてしまったわけですから、採用活動を開始しようと言う考えを持つのは普通だと思います。ただ、人事マネージャーや人事部長の採用は、エンジニアのマネージャークラスと同等以上に困難を極めると思ってください。非常に希少価値が高いポジションですし、そもそも採用の部署の統括をしていた人事マネージャーや人事部長がいなくなったのですから、そのポジションを採用するための戦略や戦術を立てる人がいなくなっています。そのため、難易度が上がっているでしょう。

ちなみに、人事マネージャーや人事部長の入社動機になるのは間違いなく社長を始めとした経営陣の思考や振る舞いです。彼らの上司は経営陣になるわけです。かつ人事マネージャーや人事部長の方々は、それぞれ人事業務に対しての「思想」を持っています。過去に失敗体験もあるでしょう。成功体験もあるでしょう。「〇〇の経営陣は人事として仕事をするのは難しい」と言うアンチテーゼも持っていることでしょう。そのため、経営陣の選考における一挙手一投足、発言が非常に重要度が高いと思ってください。

1-2. 別の部署の部長クラスでの代替は妥当策

人事部長や人事マネージャーを、別の部署のマネージャークラスの方が部署異動によって補填をする話はよく聞きますし、僕も何度も直面したことがあります。「役職」というポイントにおいては補填することが可能なので、妥当策だといえます。ただ、もちろんのことその「職域」についてのノウハウがないわけですから、その点については苦戦しますし、人事のメンバークラスの方がノウハウが長けている、なんてことも発生する事は普通でしょう。

ただ、本項においては、外部の人事業務におけるプロフェッショナルにご協力いただき、ノウハウの部分は補填していただき、社内の仕組みや役職業務に長けている別の事業部の部長やマネージャークラスの方をアサインする、という手法にて乗り切っていくことは良いと思います。

1-3. 逆に状況が好転することも

「会社は人事担当のクオリティーで成長角度が決まる」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、僕はこれは本当にそうだと思います。
例えば、採用領域においては、採用担当の振る舞いによって、採用できる人材のクオリティーは変わってきます。非常に優秀な人材が採用業務に携わることによって、優秀な人材を採用することができるでしょうし、一方で平均クラスの人材が採用を担当することによって、優秀な方の採用を逃してしまうなんてことも多く発生します。

仮に、人事マネージャー・人事部長が退職してしまい、前項・前々項目の施策を投じた場合、逆に採用活動が前に進む、なんてことも僕も何度も直面してきました。もしかすると、人事マネージャーや人事部長が、HRという枠組みのみにとどまったキャリアであり、かつ事業側の経験がない場合は、視野が狭くなっている可能性もあり得ます。そんな中、外部の知見を使ったり、別部署のマネージャーや部長クラスを登用した場合に、別の化学反応が生まれ、さらに優秀な人材が採用できた、なんてこともあり得ます。


最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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