ポテンシャライトとAIが生み出す未来
「ポテンシャライトさんとAIの相性はすごく良いと思いますよ」
そんな言葉を聞いたのは2017年の頃でした。
当社は2017年4月に産声をあげた、ベンチャー企業に特化したHR支援企業です。当時、代表の僕と現取締役の小原の2人でスタートしたポテンシャライトでしたが、設立時点では僕自身のエージェントとしての経験のみでした。
ただ、設立して半年が経過すると、すでに80名程度の入社決定を創出しており、さまざまな採用ノウハウを言語化していました。そこで、あるAIエンジニアの方とお会いしたときに言っていただいたのが、冒頭の一言です。
当時は、なぜそのような言葉をかけていただいたのか?は正直あまりピンとこなかったのですが、2024年9月時点において、「間違いなくそうだ」と断言できるほど理解できて参りました。
本ブログでは、その点についてお話をしたいと思います。
0. ポテンシャライトがHR業界の「仕来り」を変えたこと
まず前提として、僕はHR業界が大好きです。これからも、この業界で恐縮ながらトップランナーとして生きていきたいと思っています。17年間この業界で仕事をしてきて、日々新しいことの連続ですし、まだまだ勉強になることも多く、追求しきれていないこともあるのだろうなと。言うなれば、人類にとって「海」について理解・調査できていることは5%程度という話がありますが、それと同じような感覚をHR業界に対して持っています。
また、HR業界において最も影響を及ぼした会社は、リクルートさんだと個人的には思っており、そのリクルートさんのカルチャーがHR業界のカルチャーを作ったと言っても過言ではないと思っています。(これは個人的な解釈です)。そのため、目標達成文化が業界全体で強く、「個人別年間売上ランキング」なども社内において発表することも多い業界です。
そのため、まず社内において「HRノウハウ」を周りのメンバーに積極的に共有しようとは思いません。なぜならば、自分自身のノウハウを他のメンバーに共有することによって、自分自身の売上ランキングが下がってしまう可能性があるからです。僕自身も、長年努力してやっと掴んだ売上を作るためのノウハウを、周りのメンバーにすぐに共有することには足踏みをしていたことを今でも覚えています。
それと同時に、「社外」にノウハウを提供するなんて以ての外。必死で掴んだノウハウを社外に垂れ流し、同業他社に真似されてしまうと、自社にとっては痛手になることは容易に想像できるかと思います。
ただ、当社が2017年ごろから考えていたこととしては、
「ノウハウ・トレンドは、数年後にすぐに廃れる」
「ノウハウを発信している企業・人に、ノウハウは集まってくる」
「自社の顧客のみが幸せになる世界観よりは、日本全体の企業が幸せになってほしい」
そのような考えを持っており、2017年ごろから当社が得たノウハウを文言化し、社内のデータベースに格納するだけでなく、社外に公開するようになりました。このアクションはHRに携わる方々に多少なりともインパクトを与えたようで、
「なぜ、そこまでノウハウを公開するのですか?」
という類の質問を、控えめに言っても200回以上いただいたことがあります。
「自分」という視野・視点では、ノウハウを公開するメリットはあまり感じられません。また、「自社」という視野・視点でも、ノウハウを公開するメリットは一般的にはあまり感じられないかもしれません。ただ、「ベンチャー企業」「日本の成長」という視点になると、自分自身が持っているHRノウハウを、自分(自社)の範囲に留めることに対してのデメリットのほうが強いと感じていました。
このような背景があり、
「HR業界のルール(しきたり)を変えよう」
と2017年の8月ごろに決心したことを、今でも鮮明に覚えています。そのため、当時、僕と小原の2人で、週に3回HRノウハウのブログを更新するというルールを決め、2018年8月にはじめての社員が2名入社してくれたのですが、その2名は、毎週金曜日にブログを執筆するなどのルールを決め、積極的に外部発信をしていました。
2017年からこれまで7年半の間、HRノウハウを文言化し、外部発信し続けることで、今の生成AIを活用したパラダイムシフトに大きく役立つことを、設立当初は思いもしませんでした。
1. ポテンシャライトとAIの相性が良い理由
本ブログの冒頭に記載したのは、AIについて当時10年以上の経験を持つ方のコメントでした。そのコメントをいただいた方とは、僕は2度ほどしかお会いしていませんが、当時からAIのプロフェッショナルだったと記憶しています。
当時は、今の生成AIのパラダイムシフトが起きることなど予想しておらず、あの頃に言われた言葉が今非常に重要になっていることにも、もちろん気づいていませんでした。ただ、今冷静に振り返ったときに、当社とAIの相性が良い理由を明確に言語化できるようになったので、それについてお話ししたいと思います。
1-1. ノウハウを言語化し続けてきたこと
当社はこれまで、550本程度のブログを執筆してきました。ちなみに、HRノウハウ「以外」を記載したブログも合わせると、おそらく1000本を超えているかと思います。合計の文字数で言うと700万文字を超えていると見ています。
700万文字がどの程度のインパクトがあるかというと、
200ページほどの書籍35冊分
読破にかかる時間230時間分
A4サイズで14,000ページ分
と言われています。
今振り返ってみても、本当に取り組んで良かったと思っています。これまで当社に所属してくれたメンバーの頑張りが大前提にはなりますが、設立当初から僕のわがままに付き合ってくれた小原と、当社の主力事業であるHRインキュベート事業部で当社メンバーの中で最もブログを執筆してきた寶田には頭が上がりません。
この700万文字のHRノウハウを文言化し続けてきたスキル、いや、カルチャーはものすごい差になっています。
生成AIのプロンプトを書いていて感じるのは、「課題解決の言語化」が非常に重要であること。
このAというプロンプトは、「誰の」「どのような課題を」「どのような手法で」解決するのか?ということを簡単に言葉にできますが、複雑なHRの世界では、この課題解決のアプローチを一つのブログに5000から13000文字程度で継続的に執筆し続けています。それを毎月続けてきたことで、生成AIのプロンプトを書く方が正直楽に感じるほどです。
1-2. 文字を書く力
「話す」「書く」のどちらを好むのか?「聞く」「読む」のどちらを好むのか?というテーマで2年ほど前にブログを出しましたが、
「話すのは得意だけれども、文章を書くのは苦手」
という方は多いかと思います。その場合、生成AIのプロンプトを書こうとしても、億劫に感じることでしょう。個人的には、「書く」よりも「話す」方が得意ですが、これまで膨大な数のブログを発信してきました。そのため、とにかく「文字を書く力」は自然と鍛えられたと思います。
生成AIの時代において、この「文字を書く力」は非常に重要です。なぜなら、AIに「指示文」を書かなければならないからです。しかし、ただ「文章を書く力」があっても不十分です。なぜならば、生成AIで実行したいのは「課題解決」だからです。シンプルな指示文だけを文言化して書くのは誰にでもできることですが、そうではなく、「課題解決」×「文章を書く力」が非常に重要です。このトレーニングを積んできた人は、生成AIのプロンプトを書く際に非常に相性が良いと言えるでしょう。
1-3. 他社が持ち得ないデータに触れてきたこと
当社はこれまでに約400社のHR活動を支援してきました。さまざまな企業さまのHR活動データに触れさせていただき、非常に勉強させていただきました。私が前職までに経験したエージェントとしての立場では触れられなかったデータ、求人広告メディアを取り扱う企業さまや、採用管理システム(ATS)の企業さまでは触れることができないデータにも触れることができました。
もちろん、ある特定の企業さまの人事担当者は自社のデータに深く触れることができるでしょうが、これまで400社のHR活動に関わり、その根幹まで触れた経験は非常に希少価値が高いと感じています。誤解がないよう申し上げますが、これまでお付き合いした企業さまのデータを当社が保有しているわけではありません。しかし、私やメンバーの頭の中にノウハウとして蓄積されています。そのため、HR活動におけるあらゆる「基準」を認識しているつもりです。
例えば、「スパイダープラス」という企業さまとの取り組みが事例として挙げられます。スパイダープラスさまの「市場評価」に基づいた人事評価支援を行いました。プロダクト開発職の方々の職務経歴書を拝見し、恐縮ながら市場評価と連動した年収額を算出させていただきました。この支援を行うにあたっては、さまざまな葛藤がありました。なぜなら、人事評価に関して影響を与える内容を、私の経験から算出するのは簡単なことではなかったからです。
ただ、あくまで参考値としての話をいただいたため、多くのプロダクト開発職の年収を見てきた経験を活かし、お受けしました。去年の10月ごろにある方から「ここまで山根さんの予想年収が合うなんて、すごいですね」と言っていただいたことを、今でも鮮明に覚えています。
生成AIに関しても、プロンプトに「ルール」を明記する必要があります。そのルールの設定によって出力内容が大きく変わります。過去に得られた定量データや定性データに基づいてルールを設定することが可能であり、この点で当社は非常にAIと相性が良いと感じています。
1-4. 当社でしか持ち得ない、理解していないノウハウが多数存在すること
当社の保有しているノウハウで、他社のノウハウを転用・真似したものはほとんどありません。もし当社のノウハウの範囲外の課題に直面した場合は、徹底的に自社で課題解決に取り組んできました。なぜなら、あるノウハウが存在したとしても、「何の課題」を「どの原因」を解決するためのノウハウかによって、その用途が異なるからです。
例えば、Aという課題が発生したとしましょう。
その課題の「原因」が複数存在している場合、優先順位を設定していくつかの施策を立案します。その施策を実行し、成功すればそれが「ノウハウ」となります。重要なのは、「ノウハウ」が「何の課題」を「何の原因」に対して解決するかという要素です。
ウェブ上に転がっている他社のノウハウが、必ずしも自社や顧客の課題解決に適しているとは限りません。そのため、自社の課題解決に徹底的にこだわることが大切だと思っています。
当社はこれまで1000以上のHR系課題を解決してきた実績がありますので、どのような課題に対してどのような原因が存在し、どのような施策を投じれば良いかを理解しているつもりです。ここに当社のユニークな点があります。それは、「施策(課題解決策)が完全に独自であること」です。
例えば、当社には「採用ブランディング」というサービスがあります。このサービスが誕生したのは2017年のことで、これまでに約280社の採用ブランディングに携わってきました。ノウハウは20回以上アップデートされ、サービス提供当初と現在の手法は全く別物になっているかもしれません。これは顧客の課題解決を愚直に追求した結果であり、世界でも唯一無二のノウハウだと確信しています。
1-5. Deploy Drivenのカルチャー
当社には「デプロイドリブン」というカルチャーがありますが、これは「まずやってみよう」という精神を指します。今、生成AIのパラダイムシフトが起きようとしている中、このようなブログを書いていることからも分かるように、当社は会社全体で「まずやってみよう」の精神を大切にし、多くのメンバーが主体的に取り組んでいます。
「AIといっても限界があるだろう」と慎重になる企業もあるかと思いますが、僕は今回のパラダイムシフトが非常に大きなものであると考えており、毎日のようにメンバーにその重要性を話しています。また、当社は一般的な企業と比べると、「まずやってみよう」と手を伸ばすスピードは非常に速いと感じています。
つい先日、「サイバーエージェントさんが全社員に生成AIのリスキリングを実施」というニュースがありました。これには驚きました。歴史があり、規模の大きいサイバーエージェントさんが、すでに非エンジニアの方々に向けたリスキリングをクイックに行っているという事実には、僕も感心しました。当社も負けずに進めていきたいと思っています。
1-6. 継続的な学習力・アンラーニング力
「1年前のHRノウハウは廃れる」
当社のメンバーは少なくとも一度は聞いたことがあるかもしれません。
私は度々、メンバーにこの話をしています。平成後期から令和にかけて、SNSによる情報の伝達スピードは昭和時代に比べて10倍以上に速くなったと感じています。(僕は昭和は4年間しか生きていませんが、あくまで感覚値です)
そのため、必死に手に入れたノウハウが1年後には使い物にならなくなることがある、という体感をしてもらいたく、メンバーに伝え続けています。特に若手メンバーが多い当社では、初めて必死で掴んだノウハウを1年後に手放すという考え方はなかなか受け入れにくいかもしれません。しかし、この「アンラーニング力」こそが、令和の時代に生き残るための重要なスキルであり、生成AIとの相性も良いと考えています。
どういうことかというと、当社が今取り組んでいる生成AIの実践についても、1年後には全く異なる戦略にシフトしている可能性も十分に考えられます。それを理解しており、そのような状況に直面した際にはすぐに対応できるように準備をしています。
僕はトレンドによって生じる大きなパラダイムシフトに対して、興味や関心がある分野に突き進む傾向があります。これは僕の強みでもあると感じています。今回のパラダイムシフトも、一時的なものではなく、今後も続いていく大きな波になるでしょう。平穏な時代に仕事をしてきたメンバーが、今後は常に変化の波に飲まれるような環境で仕事をしていくことになるかもしれません。そうなった時に、「継続的な学習力」と「アンラーニング力」が非常に重要なスキルになると確信しています。
2. (補足)APAC(アジア太平洋機構)でHRコンサルティングサービスでNo.1をいただけた実績
また別の機会で発信したいと思っているのですが、当社はAPAC(アジア太平洋機構)45カ国において、HRコンサルティングサービスでNo.1の称号をいただくことができました。この結果をいただけた背景には、当社がこれまでアウトプットしてきたノウハウが大きく影響しているとのことです。
表彰をいただいた企業さまのお言葉を借りると、「見たことがないようなノウハウ」と評価されました。当社が保有しているノウハウは、世界でも希少なものであると感じています。ただ、冷静に考えれば、それは当然のことです。なぜなら、当社が独自に課題解決を行ってきた結果としてのアウトプットだからです。
何を申し上げたいかと言うと、当社と同じような思想・カルチャー・経営/事業スタイルを持っているHR企業が世界に存在するかもしれません。ただ、少なくとも日本国内では見たことがありません。このスタイルだからこそ、結果的にこのようなノウハウを今保有していて、生成AIに非常に相性の良いカルチャーを形成できたのだと思います。大げさな言い方をすると、
「結果的に生まれたポテンシャライトという企業は、世界においても稀に見る存在なのではないか?」
と思っています。
これから僕らがノウハウをどんどん実装していくことで、日本の企業に活用していただく。そして、まだ細かいことは決めていませんが、世界中にそのノウハウを実装していくことになった場合、当社のノウハウを用いたHR企業がたくさん生まれるかもしれない。そんな世界観も想像できるわけです。誤解がないように申し上げますが、現時点ではそのような展開を具体的に決めているわけではありません。参考までに記載しているだけです。
ポテンシャライトがノウハウをAIに搭載することで、間違いなく世界は変わるだろう――そんな価値観を持っています。
最後に
皆さんいかがでしたでしょうか。
※当社の採用/人事組織系支援にご興味がある方はお気軽にお声掛けください。
今後も採用/人事系のアウトプットを続けていきます。
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