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楽な選択ばかりでいいのか。相手はもちろん、自分のために考えるべし。【現役高校教員のエッセイ】

高校生に向けたエッセイです。実際に、教室に掲示しています。


 僕らはしばしば選択の場面に遭遇する。
大きなものから小さなものまで含めれば、
その数なんと1日に約35、000回にも及ぶらしい。数が多すぎてピンと来ないが、とにかくとんでもない回数の選択をしていることになる。

  • 朝、起きる・二度寝する。

  • パン・ごはん。

  • 靴下あれ・これ。

  • 歯ブラシ持つの右・左。

  • 挨拶する・しない。

  • レシートもらう・もらわない。

  • バスの席そこ・あそこ。

  • シュート・パス。

  • キャラメル・塩。

  • バーベキュー・マスタード。

  • 階段・エスカレーター。

などなど数えだしたらキリがない。

 こういった選択の連続の中で、僕らは無意識に楽な方を選んでしまってはいないだろうか。なかなか自分からキツい方を選ぶことはできない。これは仕方がないことだ。しかし、楽な方ばかりを選んで流れに身を任せているだけで良いのか。


 ある日、買い物に行くと店員さんにこう声をかけられた。
「お客様、そちらの商品なんですが、今大変人気の商品でして・・・」
と突然何の前触れもなく、商品の説明が始まった。
僕はそんなにこの商品に対して興味津々な瞳をしていたのだろうか。
真実は定かではないが、店員さんの説明が始まってしまった。ここで選択。

店員さんの話を聞く・聞かない。
つまり、相槌を打つ・話を断るという選択肢が生まれる。

さぁ、どうだろうか。

僕は無意識的に楽な方を選んでしまった。
気づいたら店員さんの話に相槌を打っていた。
そして、これは僕の悪いところだが、「へぇ~、そうなんですね!」
と必要以上に大きなリアクションをとってしまった。

買う気なんてさらさらないのに。
すると、店員さんのギアが一段上がった。声のトーンが上がった。

それからも説明は続き、僕もリアクションを抜かりなくとった。
そして、買わなかった。そんな気さらさらないから。

やはり、その時の空気は何とも言えない重さで、
「結局買わないのかよ。ちぇっ、おととい来やがれ。」という店員さんの気持ちがビシビシ伝わってきた。
僕も店員さんも、良かれと思って話していただけなのに。

店員さんは、僕に商品の良さを伝えるために一生懸命説明してくれただけだ。僕は、店員さんの説明に対して返答を繰り返しただけだ。
誰も悪くないのに、なぜこんな空気に…。


 いや、悪者はここにいます。

何を隠そう僕自身です。

すべては僕があのとき、店員さんの説明を断らなかったことによって起きてしまったことであり、楽な方を選択した僕のせいなのです。

「断る」というのは、実に大変なことで、かなりのエネルギーを要する。
流れに逆らい、断ち切るのだから、そりゃあキツいことなのだ。そのキツいことから逃げて、流れに身を任せてしまったがために、僕も店員さんもなんか嫌な空気に包まれてしまった。


 こういうこと、たまにないでしょうか。

一緒に遊びに行く気もないのに、「いいね、今度行こ!」と言ってしまったり、仲間外れにされたくなくて、好きでもないアイドルを応援するフリをしたり、お金を払いたくないのに、ノリと雰囲気で友達に奢ったり・・・

 そんなことありませんか。
楽な選択は、後々になって相手や自分に嫌な思いをさせることになるかもしれない。大変だけど断る勇気をもって、多くのカロリーを消費して、キツい方を選んでみよう。

痩せるかもしれない。僕もやってみます。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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