🪻恐怖支配

私の人生は、養父が現れたことで、大きく変わりました。

養父は、まるで“大人になれない子どものような人”でした。
優しかったのは、最初の方だけ。
もちろん、優しい時もあります。
でもそれは、優しいというより機嫌が良い、という表現が合っています。

機嫌がコロコロ変わる人で、些細なことで機嫌を損ね、機嫌が悪くなると、家中に不穏な空気が漂います。
ちょっとしたことで怒り、怒鳴ります。
それも、ものすごい大声で。

どんなことでスイッチが入ってキレるか、わかったもんじゃありません。
まるで子どものような機嫌の損ね方をします。
そして、それはほとんどが理不尽な理由です。

例えば、休みの日に養父が元々家族を連れて行きたいと思っていた場所があるとします。
でも、養父はサプライズが好きなので、直前まで私達には言いません。
休み当日、誰よりも遅く起きてきて、私達が養父の意に反した行動をします。（ダラダラしていたり、別の用事を作る等）
そうすると、途端に不機嫌になり、無視を始めたり、明らかに怒っているような声を発します。
そもそも、私達は休みの日に何処か行くなんて聞いてなかったのだから、仕方の無いことなんですが、養父はそれが気に食わないのです。

そして、怒るととにかく怒号で威圧する。
怒号怒号怒号。
5軒先くらいまで響き渡るくらいの、怒鳴り声です。
とりあえず怒鳴る怒鳴る怒鳴る。

男の人の怒鳴り声って怖いですよね。
養父は身長も体重もかなり大柄な体格だったので、余計に声が大きいし、怖かったです。
後、養父の方に非があっても決して認めない、謝らない。

また、弟は頭が非常に悪かったので、勉強を余儀なくされていたのですが、勉強中に寝てしまうことが多かったんですね。
養父は、弟が寝ていないかそーっと部屋を覗きに行って、寝ていたらブチギレました。
ただ怒鳴るだけではなく、物が飛びます。
扇風機が何台も壊れました。

私は「女の子だから」と「物分かりがいい」という理由から直接叩かれたりしたのは、数える程です。
でも、弟は昔からヤンチャで、悪さばかりする子だったので、その度に養父はキレまくり、馬乗りになって殴っていました。
私はその度に己の無力さを痛感していました。
もちろん弟が悪いことをしているのがいけないのですが、あそこまで怒鳴られたら誰だって萎縮するし、殴られたら怖いです。

ただ、弟は男の子なので、成長すると体格も良く力も強くなり、養父は歳をとって衰えるだけなので、最終的には養父は弟に力で勝てなくなっていました。
だから、物を投げる方にシフトしたんですね。

でも、私は手をあげられることは弟より少なかったにしろ、言葉の暴力に加え、怒号の威圧等で毎日怯えながら生きていました。
なるべく怒らせないように、怒らせてしまったらなるべく早く済むように。
怒鳴られたら最後、2〜3時間は立ちっぱなしのまま怒鳴られ、罵られました。
私は、自分の爪で自分の指を血が出るまで削り、ひたすらその時間をやり過ごそうとしていました。

最後に手をあげられた時のこと、まだ覚えています。
大学生の時、母が洗い物をしていて、その洗い終わった食器を拭いて片付けてと私に言ってきたんです。
私は当時はあまり家事が好きではなかったし、別のことをしていたので「え〜」みたいな反応をしました。
すると、それを聞いていた養父がいきなりブチギレ、「もういい！！！」と養父自ら食器を拭き始めたのです。
と言っても、養父は普段何にも家事を手伝わない人なので、食器を拭いても片付ける場所がわからないのは目に見えていました。
母もそれをわかっていたので、「あんたが代わりなさいよ…」とアイコンタクトをしてきました。
私はまた怒られるのも嫌だったし、空気も悪くなるので、仕方無く「私がやるよ」と言って代わろうとしました。
その時、養父はすごい勢いで私の顔面をその大きな手で振り払ったのです。

私は顔面にものすごい衝撃を受け、立ちすくみました。
その瞬間、ポタポタッと、床に血が滴り落ちたのです。
私の口が切れ、そこから流れ出た血でした。
着ていた服も汚れました。

一瞬、養父も「あ」という顔をしましたが、何しろ自分の非は認めない人なので、そのまま無視をされました。
私はそのまま自分の部屋に篭りました。
その後しばらくして、母が部屋に来ましたが、言われたのは「あんたが悪いんだからね」です。
「初めからあんたがやっていれば」とか、「血なんか垂らして、お父さんが悪いみたいにして」とか。
「後で謝りなさいよ」と言い残して、部屋を出て行きました。

これって、私が悪かったんですかね？
仮に私が悪かったところがあったとしても、養父がしたことは正しかったんでしょうか。
私は唇を切り、口の中は衝撃でたくさん口内炎が出来、翌日には唇は腫れ上がりました。
その後もちろん養父からの謝罪はありませんでした。
私は、これがキッカケで、次手をあげられたら家を出ようと決意していました。

大学でも、友達に私の生い立ちを話すと「積み木くずしじゃん（冗談で）」とか「児相案件だね」と言われていました。
実際、12歳頃からずっと怒鳴られ続け、常日頃機嫌を損なわないように顔色を窺い、人生の大半を抑圧されて生きて来ました。
かと言って、12歳までは幸せだったのか？というと、12歳までも実父とはほとんど会話もせず、興味を持ってもらえずな関係性でした。
つまり、私は「父親からの愛情」をまともに受けたことがありません。

じゃあ、母親からの愛情は？
母親からは愛されていたと思います。
でも、それも歪んだ関係性でした。
いわゆる「毒親」というものです。
母のことも別の記事でお話ししようと思いますが、これまたおかしな人でした。
養父がこんな人なのに、離婚しようともせず、また私達を助けてくれることはありませんでした。
「養父を怒らせた子ども達が悪い」というスタンスです。
あまりに行き過ぎた暴力があった時にだけ「もうやめてよ」のようなことを言いますが、母も火に油を注ぎたくないし、怒らせた後がめんどくさい（母も怒られる）のであまり口出しはしませんでした。

養父は、人前では、猫を被ったように大人しくニコニコしていましたが、家では王様のようでした。
どんなに酷いことをされて母に訴えても「でも周りの人はいい父親だって言うよ」と言うばかり。
周りの人がどんなに「いい父親」と言えど、その当事者である子どもが苦しんでいたら、本当にそれは「いい父親」でしょうか？
外面ばかり良く、体裁を気にする母には良かったのかもしれませんね。

私は母からも2人の父からもまともな愛情を与えられず育ちました。
少なくとも、養父から与え植え付けられたものは間違いなく“恐怖心”でした。
私は人生の大半を、養父からの恐怖支配の元過ごしました。

こういう養父からされて来たことを、虐待と呼ぶのか、そうじゃないのか、今だにわかりません。
ただ、こういう家庭を「機能不全家族」と呼ぶのだと知りました。