ワタクシ流☆絵解き館その78 上田敏・翻訳詩集『海潮音』の世界と、青木繁「わだつみのいろこの宮」。
上田敏による西洋の詩の翻訳詞華集『海潮音』は、明治38年に刊行された。この詩集は、当時の若い詩人たちに絶大な反響を呼び、青木繁と深い交友のあった新進の詩人蒲原有明は、その強い影響を受けた一人だ。文学に深くのめりこんでいた青木もまた、当然、蒲原有明らとこの詩集について語り合い、熟読玩味した一人であろう。
『海潮音』より「珊瑚礁」という一編を掲げる。
文語表現のため、詩の意味が一読では入ってこないかもしれないが、目に止めてほしい詩句を並べる。そして頭に付した番号を、「わだつみのいろこの宮」の絵の中に挿入した番号の部分に照らし合わせて、もう一度見てほしい。
この詩句を絵画化したような両者の雰囲気の近さに気づかれるはずだ。
筆者は、青木が『海潮音』を一読後、すでに画想を練っていた「わだつみのいろこの宮」となる絵の場面構成に、大きな刺激を受けたと考えている。
上段下段とも 青木繁「わだつみのいろこの宮」
明治40年制作 アーティゾン美術館蔵
この解釈に興味を持たれた方は、タグの「明治時代の絵」をクリックしていただければ、「ワタクシ流絵解き館」の青木繁作品の頁を一覧できます。