ワタクシ流☆絵解き館その96 青木繁「わだつみのいろこの宮」鰐なのか、鮫なのか、そして蛇も。
青木繁 「わだつみのいろこの宮」 1907年 重要文化財
アーティゾン美術館蔵
以下の図版はすべて「わだつみのいろこの宮」の部分図 図の一部に加筆
赤い衣の方の豊玉姫の本態は、「古事記」には、「和邇(わに)」と記述されている。そして「古事記」にいう「わに」は「鮫(さめ)」のことと解する論が根強くある。しかし一方、やはり文字どうり「鰐(わに)」を指すという論もある。
この「わだつみのいろこの宮」の絵解きシリーズでは、その56とその68で鮫と解釈して絵解きした。
先ずは鮫と解釈して眺めたとき、豊玉姫のシルエットの中に鮫が見えてきた。それが下の図版。どうだろう。鮫の姿が浮かばないだろうか。黄色の実線で描いた輪郭部分だ。(図版は横向きにしている)
次に、鰐と解釈したときに見えてくる輪郭が下の図版。
次に、この「わだつみのいろこの宮」の絵解きシリーズの、その88で述べたことを再度掲げる。
山幸彦の座るカツラの木は、蛇と見立てられており、それは葛(カズラ=くねくねとうねるもの=蛇)と発音の類似から同等視されたためであること。
また山幸彦をわたつみの国へと送り出した塩椎神(しおつちのかみ)が、その乗り物として与えた、竹で固く編んだすきまのない小舟は、海底にも潜って行ける蛇に見立てられていると考えられ、塩椎神によって、山幸彦は蛇神としての力を備えらていること。
そこから山幸彦=蛇神、というイメージで見たとき、浮かんでくる蛇の輪郭が下の図版だ。蛇神山幸彦は豊玉姫をからめ取っている(すでに恋のとりこにしている)。
そして最後は、思い込みで見れば、そんなふうに見えるお遊び編の続き。見えやすくするためにモノクロとした。
何に見えて来るかは、読者の想像に委ねよう。山幸彦と豊玉姫の出会いの一部始終を‥‥というヒントを添えておく。
令和4年1月 瀬戸風 凪