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【書評】『死に至る病』S・キェルケゴール
『死に至る病』S Kierkegaard
(実存主義の祖セーレン・キェルケゴール(1813-55)。デンマークに生きた孤高の哲学者は、主著である本書で生の意味を問い、「死に至る病とは絶望のことである」という鮮烈な主張を打ち出した。
そして「絶望」と「罪」の診断から「病」の治癒に至る道筋を描く。絶望が深まる21世紀の世界に限りない教えと救いを与える決定的名著、ここに甦る。
【読書感想文】
「絶望を絶望と知らずにいる絶望」、「絶望して自己自身であろうとしない絶望」、「絶望して自己自身であろうとする絶望」の三つを“死に至る病”であると主張する著者が、キリスト教との連関の中で絶望について論じる世界的名著。
察しの良い方はここで気づくかもしれないが、この三つの絶望は全ての人間に当てはまる。そして、この絶望から逃れる手段として“キリスト教への信仰”を提起するという構造になっている。
西洋思想は新約聖書を読みこむことにより、初めて理解できるというのは私の持論であるが、これは突飛な意見ではない。
ドストエフスキー、ニーチェ、ドゥルーズなど、キリスト教徒か否かに関わらず、西洋の哲学者、文学者たちはすべからく聖書に依って立っている。
キリスト教との連関の中で、いかにして論を展開するかを知るためのロールモデルとする読み方もあるだろう。
哲学の入門にこの本を選ぶのは少し難しいが、ある程度の読解力を身につけた自負のある方は本書に挑戦することをお勧めする。