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022「もうひとつのMY BABY」

 唐突だが、新しいシリーズを始めてみようと思う。

「The introduction of my favorite song」

 女版back numberと自分が勝手にあだ名をつけている、シンガーソングライターの阿部真央(通称:あべま)。いつごろ聞き始めたのかは覚えていないが、恋愛経験なんてほぼなかった”筆者少年”の胸に歌がずかずかと刺さりまくった記憶がある。年齢を重ねるごとに、それなりに恋愛経験を積み、だいんだんとあべまのつくる恋愛ソングのすばらしさに気が付き始めている。なかには理解しがたい、というか共感したくないような、辛い歌詞もあるのだが、とにかく自分はあべまが大好きだ。ということで、あべまの歌について語るというシリーズものを開始してみようと思う。

 記念すべき第一回目は、「もうひとつのMY BABY」。あべまはとにかくどんなシチュエーションの人物にも、憑依し、歌詞を作れる。片思いの女の子、片思いの男、両想いのカップル、ないしは夫婦、遠距離恋愛中のカップルの不安、あなたに会いたくてたまらない歌、キュンキュンするような歌ばかりかと思えば、元カレの悪口をぶちまける歌、勘違い野郎を罵る歌、etc. とにもかくにも一言で恋愛ソングといっても、あべまの場合はジャンルが広い。よくもこんなシチュエーションを歌にしようとしたな!と思える、一風変わった恋愛ソングを中心に、あべまを紹介出来たらなと思う。この歌は、どんな人に憑依しているのでしょうか。見ていきましょう。

「もうひとつの MY BABY」歌詞
歌:阿部真央
作詞:阿部真央
作曲:阿部真央

ほらまたひとつ 胸にちくりと
貴方の言葉が刺さる
俺の前でアイツの話なんかすんなよ
聞きたくもねえよ…

 この歌の主人公は「俺」、そして「貴方」という人がいる。「あなた」ではなく「貴方」としているところが「俺」の「貴方」に対する距離感や尊さを表現しているのか。「俺」は「アイツ」の話を聞きたくないようだ。「アイツ」とは誰だろう。「貴方」の言葉で胸がちくりとしてしまうほど、「アイツ」のことを嫌がっているらしい。だが、「俺」と「貴方」は言葉を交わせる関係ではあるらしい。ちょっとまだこの2人の関係性は断定できない。

このトゲを全部抜いてしまえたら、どんなに楽なんだろう
でも抜いてしまったら貴方との
わずかな思い出も消えてしまいそうで

 「トゲ」という表現が出てきた。もちろん比喩だろう。「トゲ」というのは「貴方」との関係の中で生まれてしまったものなのだろうか。この「トゲ」は痛い。できるものなら早く抜いて楽になりたいのだが、抜いてしまうはいいことばかりではないようだ。「俺」と「貴方」の間には、思い出と呼べるものがある、だが、「トゲ」もある。この「トゲ」とは一体何なのだろうか。それが、サビになると明らかになる。

苦しいだけの恋なんてしたくないと思ってた だけど
好きになってしまったよ Baby

 「俺」は「貴方」に恋をした。好きになってしまった、この言い方にはなにか後悔の念のようなものを感じる。次の歌詞で謎が解ける。

他の奴が好きだって 笑った貴方の笑顔に
惚れちまった俺はどうすりゃいいの? 教えてよ、Baby

 なるほど。一気に謎が解けた。この短い歌詞にもあべまの細かいテクニックが隠されていると思う。「奴」と少々乱暴な言い方を「俺」はしている、嫌っているのだろうな、「奴」のことを。「俺」が「貴方」のどこを好きになってしまったのかというと、「笑顔」、そう「笑顔」なのだ。笑った貴方に惚れた、でも十分良いのだが、笑った貴方の笑顔と付け足すことで、なんというか、一本取られた感じがする。また、「好き」ではなく、「惚れる」という言葉を使うあたりが、あべまらしい。並大抵の表現はしない。そしてサビの最後、「教えてよ」と誰かに対してつぶやくのだった。

最近貴方がキレイになったのは
恋をしてるからなのか
俺には見せないけど
アイツには見せる弱さとかあんのかな…

 「貴方」がキレイになったことがわかるくらい、近い距離に2人はまだいる。またしても「アイツ」と言う。これは、「「貴方」が好きな人」のことだろう。

いつも元気な貴方だから 泣き顔を見せてほしい
辛い時は無理して笑うなよ
他にバレなくても、俺にはわかっちゃうよ

 「俺」と「貴方」はそこそこ互いを知っているのだろう。いつも元気な「貴方」が実は泣き顔を隠していることを「俺」はわかっている。それほど近くにいるのだから。このあたりでも、俺には見せないけど アイツには見せる弱さとかあんのかな…の歌詞に繋がるのだろう。気になるよな。「アイツ」なんかより「俺」のほうが「貴方」のことをよく知っていると自信があるんだろうな。悔しいよな。さて、これらの気持ちを「俺」はどう整理つけるのだろうな。「俺」の熱い決意があとの歌詞に続く。

こんなふうに貴方を思うことしかできない だけど
誰より思っているよ Baby
他の奴が好きだって 俺なんか見ていなくたって
惚れちまった俺は 惚れぬくしかねぇ そうだろ? Baby

 「俺」は「貴方」のことを思うことしかできない。だってもう「貴方」は「アイツ」のことが好きなんだろ?でも、「貴方」に惚れてしまったこの気持ちを捨てることはできない。捨ててしまったら、「貴方」とのわずかな思い出さえも消えちゃうもんな。「俺」なんて見てくれなくていい、あなたの気も知らないで惚れちゃった「俺」が悪いんだ。これは「俺」自身で片付けないとな。惚れぬくしかねえ。なんとも不器用な、そして淡くつらい決断である。

苦しいだけの恋なんてしたくないと思ってた だけど
好きになってしまったよ Baby
他の奴が好きだっていいさ…貴方が好き
それだけが俺の思い そうだろ? Baby

 苦しいだけの恋なんてしたくないと思っていた、「俺」が嫌に思っていたことが現実に起きてしまった。ああ、なんて辛いのだろう。「「貴方」が好き」、「俺」はこの気持ちを抱きながら、隠しながら、「貴方」との関係を続け、そして聞きたくもない「アイツ」の話を聞かされ続けるのだろう。こうするのが一番ことを荒げることもなく、「貴方」との関係も壊すことないベストな方法、「そうだろ?」と「俺」は誰かに問いかけて終わるのだった。

曲名についての考察

 曲名にも歌詞中にもたびたび登場する英単語「baby」。これはどういう意味だろう。

baby

1赤ちゃん、赤ん坊、乳児、幼児、新生児、乳幼児
2〈俗〉ベイビー、かわい子ちゃん、彼女◆親しい女性に対する呼び掛けとして使われるが、軽蔑的と感じられることもある。
3末っ子、最年少者
4〈話〉大事なもの、宝物
5《one's ~》〈話〉大変な[厄介な]仕事[任務]、責任、義務、役目
・It's your baby. : それはあなたの責任[役目]でしょ。
6〈話〉弱虫、泣き虫、子どもっぽい[赤ん坊のような]人[大人]
7〈話〉関心のあること、関心事

引用)英次郎on the WEB/ https://eow.alc.co.jp/search?q=baby

 個人的には、2と4の意味が近いのだろうと思う。

曲名の「もうひとつのMY BABY」、MYはもちろん主人公である「俺」、「俺」のBABY。

「俺のBABY」は、親しい女友達である「貴方」
「もうひとつのMY BABY」は、「アイツが好きな「貴方」」

この解釈でどうだろうか(正解かどうかは作者本人しかわからないのだが)。「もうひとつのMY BABY」に向けた「俺」の精一杯の決意の歌。ということに解釈しておこう。

あべまメインになりそうです(笑)

 どうでしたか。阿部真央、すごいでしょ?(笑)今回第一回目で取り上げたのは、好意の捨て方がわからない不器用でかっこいい男の歌でした。紹介したい曲はまだまだたくさんあります!次回以降予定作は、

「貴方」に好まれようと「私」が苦しんでいく「貴方が好きな私」4月上旬
お前なんかはなから眼中にない、入ってくるな「デッドライン」4月上旬
あんな目で僕を見ないでよ勘違いしてしまうよ「じゃあ、何故」4月中旬

引き続き書いていきますー

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