GARO ARCHIVES*Extra〔2〕~〈アルファ創立55周年POP UP SHOP〉展示物ガイド
◎文:高木龍太 / TAKAGI, ryuta
先だって2024年9月10日から22日までの期間限定で、村井邦彦さんが設立した《アルファミュージック》の創立55周年を記念した”POP UP SHOP”が、タワーレコード渋谷店の3階に出店されました。
これは主にアルファミュージック関連の再発CD、復刻レコード、アーティスト・グッズなどの販売を手掛ける催しでしたが、それに留まらず、スペース内には各所属アーティストが1970年代~80年代当時に使用していたギターや衣装など、貴重な品々が併せて展示。
そんな中、所属アーティストの一組といえるガロ関連の70年代活動当時の貴重な品々も何点か、展示されていました。
しかしながらこの催しは東京での開催であり、期間もそれほど長いものではありませんでしたので、足を運べなかったという遠方の方、あるいは東京近郊でもご都合が合わなかった、という方もいらっしゃったかもしれません。
かくいう自分も生憎と時間がなく、場内の写真なども撮れなかったのですが・・、じつはそんなところに、ありがたいことにPOPTRAKS!のXアカウント宛てのポストにて、写真をお寄せ下さった方がいらっしゃいました。
そこで本項では、ご厚意に甘え、こちらにそのポストのリンクをご紹介しつつ、自分の知る範囲でそれら展示物についてのコメントも添えて、ちょっとした”誌上展示ガイド”ができればと思います。
■《ニコル》製”ガロTシャツ”
まずはこちらから。今回、会場に足を運ばれたガロ好きの方の目を特に惹いた展示物のひとつが、場内に入って中央に設置されていたガラスケース内に置かれていた、この「ガロTシャツ」だったようです。
これはファッション分野に関心のある方ならおなじみであろう有名アパレル・ブランド、《ニコル(NICOLE)》が製作したという、ガロの活動当時の”公式グッズ”のひとつでした。
ニコルは服飾デザイナーの松田光弘さんが1967年に創設したブランド。
このガロTシャツについては、当時のいくつかの紙資料を見る限り、ガロの公式FC《YOURS GARO》、あるいはこの頃ガロとはコンサート興行などで接点のあった音楽事務所《ヤング・ジャパン》などが窓口となって販売されていたものだったようです。
サイズはS・Mの2サイズが存在し、1973年頃から販売が開始された模様。袖に《NICOLE》のロゴが入っています。
ちなみにヤング・ジャパンには当時、〈アリス〉、〈バンバン〉、〈リンドン〉などが在籍しており、各グループはガロとは、特に地方公演などにおいて共演の機会が度々ありました。
■幻の『mush』
さて、Tシャツと同じガラスケース内には、ほかに、こんな展示物も。
まず、画像一枚目中央に見えるのが、『mush』です。
これは、ガロが所属したレコード会社《マッシュルーム・レコード》が、そのスタート前後に発行していたタブロイド新聞型の機関紙。展示されていたのは、その創刊号となります(1971年10月発行)。
マッシュルーム・レコードとは、アルファと同じ村井邦彦さんが代表を務め、ロック系音楽のリリースを志した独立レーベル(当時の販売元は日本コロムビア)。
その権利はのちにアルファに一本化され、当時リリースされた音源は現在、ソニーから再発されています。このマッシュルームから、その第一弾アーティストとして、ガロはデビューしたわけです。
この『mush』創刊号内の1ページである「INSIDE REPORTS」には、ガロの堀内護さん、日高富明さん、大野真澄さん3人による、マッシュルームに所属したことへの所感、期待などが述べられており、デビュー時の彼らの心情を知る資料として、大変に貴重なものとなっています。
同ページ内には、ガロ以外にも、小坂忠さん、成田賢さん、アラン・メリルさん、ジュニ・ラッシュさん(「GARO Session Works」参照)などのマッシュルームの所属アーティスト、さらに木村英輝さん(「How They Became GARO」第9回参照)、かまやつひろしさん、細野晴臣さんなど、周辺人物のコメントが寄せられています。
なおアートワークは、はっぴいえんど、小坂忠、サディスティック・ミカ・バンドなどのレコード・ジャケットでも著名な《WORKSHOP MU!!》が手掛けたものです。
この『mush』について、または掲載のガロのコメントなどについての詳細は、後日、当ウェブジンでもあらためて触れられればと思います。
ちなみにガロの話題からはちょっと離れますが、画像2枚目で、この『mush』の隣に見えるのは、小坂忠さんが関与されていたらしいミニコミ『COUNTRY』。
その下にチラッと見えるのは、東横劇場で1969年に上演されたラヴ・ロック・ミュージカル『ヘアー』(「How They Became GARO」第7回など参照)の、会場の模様を伝える雑誌グラビアの切り抜き。
このグラビアには、当時出演者であった小坂忠さんと、同公演を手掛けた《アスカ・プロダクション》のスタッフで、のちに忠さんの奥様となる、高叡華さんの姿などが掲載されています。
そしてガロに戻って画像3枚目ですが、これは1972年4月にガロがかまやつひろしさんと共に滋賀会館大ホールにてコンサートを行った際のチラシ(※このチラシのみ、後述の会場奥のガラスケースの隅に掲示されたもの)。
まだ「学生街」が発売される以前の時期のコンサートですが、手元にある資料によれば、この日、ガロは単独演奏と、かまやつさんのバックの2部構成でステージに登場したようです。
■大野真澄氏秘蔵の品々
さらに、会場奥のガラスケースには、こんな貴重な品も。
1973年12月31日、ガロが「学生街の喫茶店」の大ヒットでNHK『紅白歌合戦』に出場した際、大野真澄さんが実際着用していたステージ衣装!
その下に置かれているのは同時期にロンドンに赴いた際、大野さんが現地で購入したという、短靴です。
ちなみに『紅白』の衣装の方は、新宿にあった《JUN》のショップにて購入したものとのこと。大野さんの物持ちの良さには驚かされます。
このほか会場内には、ガロの70年代当時に配布されていたポスター(今年発売になったガロの最新ベストCD『シングルズ&オリジンズ』のジャケットに使用された写真と同じ図案のもの)も展示されていました。
■ブレバタの特注ギターも
おしまいに、ガロ以外の展示物についても触れておければと思います。
小坂忠さんのものとしては前述のミニコミ等に加え、会場奥のガラスケースにて、東京・有楽町の国際フォーラムでの「小坂忠 ほうろう」コンサート(2018年11月26日)で着用されたステージ衣装や、愛用されたアコースティック・ギターが展示。
忠さんは当ウェブジン「How They Became GARO」でもご紹介している通り、ガロのメンバーとは、デビュー前から縁深い方であり、前述のように《マッシュルーム》ではレーベル・メイトともなった方です。
そして、忠さんのガラスケースの隣には、こちらもガロとは結成前後にはちょっとした縁のあった《ブレッド&バター》(岩沢幸矢さん、岩沢二弓さん)のおふたりの、それぞれの愛用アコースティック・ギターなど、貴重な品々も展示されていました。
特に幸矢さんがかつて特注で作られたという、ご自身オリジナル・デザインのギター(ボディにマーメイドのイラストが描かれたもの)は、通常よりも幅広なそのシェイプもユニークで、目にも興味深いものでした。
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以上、自分の判る範囲で、駆け足での”展示ガイド”でした。
今回の”POP UP SHOP”はタワーレコード内の一区画での展示ということもあり、小規模ではありましたが、それでも貴重な品々が惜しげなく披露された、興味深い催しだったと感じます。
今後、アルファに限らず、こうした1960年代~1970年代の息吹を伝える展示が増えることを期待しつつ・・・。
※リンク許諾をいただきましたTomocho様、ロミー様。ありがとうございました(五十音順)
©POPTRAKS! magazine / 高木龍太
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