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はじめまして と さようなら の間に



一期一会、一生に一度の機会。

旅は、一期一会を体現する最高の機会だと思うのです。

旅先で出会う、おいしいもの。旅先で見る、美しい景色。そして、旅先で偶然出会う人。

また会うかもしれない、もう会わないかもしれない。はじめましてとさようならが同時に訪れるようなすてきな出会い。わたしはきっと、そんな出会いを楽しみたくて、旅に出たくなるのです。



日常にも、偶然の出会いタマゴはコロコロと転がっています。

朝、駅までの道ですれ違った人。通勤電車で同じ車両に乗っている、自分が好きな作家さんの本を読んでいる人。信号が青に変わるのを隣で待った人。ひとり入ったカフェで、ひとりでコーヒーを飲んでいる人。

話しかけるきっかけがなくて、話したことのない人たち。日常に転がる偶然の出会いタマゴは、孵化する機会を持たず、今日もタマゴのまま。


日常を飛び出して、旅をする。
旅先で、その日その時、偶然出会う人。

不安げに時刻表を見つめながら、バスの列に前後で並んだ人。飛行機の席が隣になった人。観光地で一生懸命手を伸ばして写真を撮ろうとしているふたり組。思わず扉を開けたカフェの店員さん。

いつもの を離れたわたしは、いつもよりちょっと解放的で、ほんのり高揚していて。だから、旅先で転がる偶然の出会いタマゴは瞬く間に孵化してしまうのです。




これまで海外旅行に行ったことは3回。そして3回とも、飛行機の席が偶然隣になった人と会話を弾ませました。

初めての海外旅行だと告げると、前後の座席で家族会議を始めてオススメのレストランを教えてくれたニュージーランドの旅。

英語力が不十分でアライバルカードに悩んでいたところを助けてもらって、そのままお喋りしながら機内食を食べたオーストラリアの旅。

アフリカから船で日本まで来ていたというご夫妻と、世界地図を見ながらお互いの故郷を紹介しあったシンガポールの旅。



通勤する電車で座席に座れたとしても、その隣に座った人に話しかけることはきっとありません。そこにはきっと、お互いがお互いの日常に踏み込まないようにという配慮なんかもあって。たとえその人がつい先日わたしが読み終えた小説を読んでいたとしても、おそらく声はかけられない。

けれど、日常を飛び出したところにあった偶然への好奇心には抗えません。目が合って、相手のニコッが確認できたら思いきって話しかけます。偶然の出会いタマゴが孵化します。

話してみたいなという気持ちはどうやら伝わるみたいで、それはきっとフォトンの仕業。話すきっかけになるちいさなハプニングなんかも起こります。


国内の観光地へ出向けば、いらっしゃいという雰囲気をこれでもかと纏った人々が迎えてくれることがよくあります。それはとても嬉しくて、ありがたいことです。

わたし自身もホテルで接客業に従事していた頃、歓迎の気持ちを伝えることを心がけていました。日常から非日常の世界へ行くには、実は勇気が要るものだから。思い切って旅に出た人はきっと、歓迎されることを求めているはずです。

国内ひとり旅は、思い立ったが吉日でふらっといけちゃうところが好き。下調べも殆どしないで行った先で偶然見つけたお団子屋さん、そこで働く現地の方にオススメを聞いて、次の行き先を決めたりします。

ゲストハウスでチェックインのタイミングが重なった人と夕食を一緒にとったり、共有スペースで話を弾ませたり。ひとり入ったレストランでカウンターのお隣同士になった人と会話が始まったり。そんな思いがけない出会いこそが旅のハイライトだったりします。




国内旅行でも海外旅行でも、偶然出会った誰かに親切にされたり歓迎されたりした経験はいくつもあって。その経験があるからこそ、わたし自身も偶然出会った誰かにそうしたいと思えます。受け取ったすてきなものは、巡らせていきたい。

人脈をひろげる とよく言いますが、この出会いは人脈をひろげることが目的ではありません。そもそも目的のある出会いって、なんだか窮屈で苦手です。

ただ、同じタイミングで同じ場所に居たからこそ出会えた。そんな偶然を、すこしの間だけでも一緒に楽しむ。目の前にいる人に楽しんでもらう。そして自分も嬉しくなる。旅の写真を見返す頃、ふと出会った人たちの笑顔を思い出したりもして、元気でありますようと願う。

そんな時間を過ごすために、十分な配慮とひと匙の図々しさをもってして、偶然の出会いタマゴを孵化させるのです。

一期一会。偶然の はじめまして と さようなら、その間に生まれるとっておきの時間にわくわくする気持ちで、また旅をしたいです。

ニュージーランド南島のビーチ


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風音 ぽっぽ
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