【第129回】ディズニー映画「Mr. インクレディブル」のシーンから使える英語表現をいくつか掘り下げてみました。
ヘレンは特殊能力を発揮したいダッシュに、なぜそれがダメなのか諭します。
① the world just wants us to fit in, and to fit in, we just gotta be like everybody else.
ここで取り上げたいのは fit in で、「(組織などに)溶け込む、馴染む」という意味の熟語です。
注意しなければいけないのは、fit in で「溶け込む、馴染む」なので fit in with … で「(人)に(うまく)溶け込む」、fit in at … で「(組織など)に馴染む」と、後ろに with や at をつけることです。
I had trouble fitting in at a new school. 「新しい学校に馴染むのが大変だった」
I could easily fit in with my new classmates. 「新しいクラスメートに簡単に溶け込むことができた」
② Dad always said our powers were nothing to be ashamed of.
ここで取り上げるのは、nothing to be ashamed of です。be ashamed of … で「…を恥じる」なので、それが nothing にかかり、「恥じることは何もない」という意味になります。
ですから、このセリフの our powers were nothing to be ashamed of は「我々のパワーは恥じることは何もない」という意味になります。「恥じることなんて何もないよ」というのはよく見聞きする日本語ではないでしょうか。
Making mistakes is nothing to be ashamed of. 「間違いを犯すことは恥じることでも何でもない」
Saying sorry is nothing to be ashamed of. 「謝ることは何も恥ずべきことじゃないよ」
You tried your best. There’s nothing to be ashamed of. 「全力を尽くしたんだから、何も恥じることはないよ」
There’s nothing to be ashamed of. で「何も恥じることはないよ」と意味が完結するので、何か失敗したりした人への“激励” に使えます。
この nothing to be ashamed of も色々なところで使えそうです。
Smaller bites, Dash.
夕食中に肉にかぶりつこうとしているのを見た息子のダッシュに、ヘレンが注意するシーンです。
bite は「ひとかじり」なので「より小さな (smaller) ひとかじり」が直訳です。
食べているのは肉なので「もっと小さく切って(食べなさい)」という意味なのですが、日本語字幕は「かじりつかないの」です。
どちらでもいいのですが、後者の方が口の動きがはっきりしていて好きですね。こんな字幕に出会うと「一本取られた!」と唸ってしまいます。
「かじりつく」というのは、次のようにbite into … や tear into … などで表現できます。
He bit ( tore ) into meat as he was very hungry. 「彼は腹ペコだったので肉にかぶりついた」
でも、ヘレンが言った Smaller bites のように、動詞を使わない簡潔な表現は「いい英語だなー」と感心してしまいました。
日本語字幕を見ていると、日本語にも“精通”する必要性と、文脈をしっかり踏まえた訳の必要性を痛感します。母語の日本語にとても“疎い”自分自身を感じてしまいます。
そのため、常に直訳以外の英語表現がないかどうかじっくりと考えながら、頭のトレーニングに励まなければならないと痛感する毎日です。日本語ってホントに難しい…。
ここは単語の勉強です。dissect は「解剖する」ですが、これは dis- が「離れて」、sect が「切る」を語源としての意味を持つので、「切って離れる」 = 「解剖する」になります。
「区分」を意味する section が“区切られた”場所なので、sect は推測しやすいと思います。
ちなみに、
bisect = bi (2つの) + sect (切る) = 「2等分する」
insect は中(in) に切れ込み(sect) が入ってるもの = 「昆虫」
です。
です。このように語源を頼りに意味を推測していく作業は“脱暗記”に結びつくと思います。
ダッシュが先生の椅子に画鋲を置いたと疑われるシーンです。
You could barely see it on the tape.
barely は「かろうじて…する」という意味で、hardly と同義語です。でも違いはあります。次の2つの英文の違いを考えてみましょう。
I could barely eat it.
I could hardly eat it.
barely の文は「かろうじてではあるが食べれた」とプラスを強調しているのに対して、hardly の方は「ほとんど食べれなかった」とマイナスを強調しています。
barely = bare + ly ですが、bare が「裸の」、「覆われていない」という意味で bare hands (素手) や bare eye (裸眼)のように使います。
また「覆われていない」ということは「余分なものはない」、すなわち「最低限の」という意味に結びつきます。
そこからbarely eat は「最小限食べる」=「わずかではあるがかろうじて食べる」という意味が生まれます。
日本語に直すとほとんど同じ意味になる語句でもニュアンスの違いがあるのは面白いですね。