見出し画像

オレンジ色のキツネに出会った。『いのちの木』――絵本を思い出すところ#18

絵本の中の風景へ想いを巡らすとき、それを手にした幼い頃の記憶もまた、絵本の思い出の一部になっていく――そんな「絵本を思い出すところ」を編集者とカメラマンが探していきます。



画像17

画像17



朝起きて、一番はじめにするのは
植物に水をあげること。



画像17

画像18



息苦しい日常に、
少しずつ集めた植物たちが
寄り添ってくれる。



画像18

画像18



つい最近、本屋さんでオレンジ色の
キツネに出会った。
その日に、家に連れてくることにした。



画像18

画像18



ソファに座って、
出会ったばかりの絵本の
ページをめくる。



画像18



キツネは、ゆっくりと瞼を閉じて、
その目は二度と開かなかったんだって。



画像19



やがて、オレンジの木が生えた。
この木が大きく育つたび、
みんなの悲しみは軽くなったんだって。



画像18

画像18



ふと、窓辺を見ると、
絵本とそっくりな
オレンジの木が伸びていた。



画像18



これまで自分が別れた、
何人かの大切な人のことを考えた。



画像18



別れた人たちが残した物に囲まれて、
自分の毎日は続いていく。



画像18



日の光を浴びた植物のように、
大切な人との記憶も、
ゆっくりと大きく育ってゆく。



画像18



画像1

『いのちの木』 作・絵/ブリッタ・テッケントラップ 訳/森山京
ある日、森の中で旅立ってしまった一匹のキツネ。森の動物たちは悲しみに暮れていましたが、思い出を語り合ううちに、キツネの横たわっていた場所からオレンジの芽が生えてきました。芽はやがて、大きな木になり、キツネの仲間をやさしく包みこむ、みんなの生きる支えとなりました。
命のあたたかさを描いたイギリスの絵本に、児童文学作家の森山京さんが美しい日本語訳をつけました。静けさを感じると同時に、鮮やかな色彩がいつまでも心に残る珠玉の作品です。https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/2730037.html

(文・編集/齋藤侑太 写真/白井晴幸)

ポプラ社 齋藤侑太
1985年、茨城県生まれ。2012年、ポプラ社入社。営業職、社内デザイナー、幼児向け書籍の編集を経て、2020年から絵本の編集を中心に担当。
白井晴幸
東京都生まれ。2010年、多摩美術大学卒。作家として活動する傍らカメラマンとして本の装丁や風景、建築などを撮影している。≪Website