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第1回AI歌壇 選評(ぽっぷこーんじぇる)
第1回AI歌壇、人間選者のぽっぷこーんじぇるです。
選評の結果を発表します。
自由詠
特選
折り紙を教えてくれた祖母の手の形を探す火葬場の午後
あおいそうか
火葬場で「祖母の手の形を探す」のがいつどのようなタイミングか、それは分かりきっていますが、あえて「火葬場の午後」とぼかしています。景があるところまで具体的になったら、それ以上の具体化を避けて、広い場面に開放している。きっとそれが詠み手の描きたかった世界なのでしょう。
入選
存在をふと思い出してほしいから空が好きだと伝えました
楠木かな
とてもやわらかな言葉遣いです。58576と音数律が乱れていますが、「ふと思い出して」のふくらみ、「伝えました」の余韻が効果的に働いています。詠み手の声が聞こえてくるようです。
葉つぱと言ふときの訛りのたびきみの見たことのない故郷を思ふ
高田月光
訛りから故郷が分かっても、〈私〉の想像する故郷と「きみ」の実見した故郷は違います。下の句の情感に惹かれました。
「夜ごはん、リクエストある?」「そうだなぁ。しいて言うならふつうがいいな」
早乙女さぽ
恣意的な読みかもしれませんが、「ふつうがいいな」という言葉が、夜ごはんではなく話者の人生観を表わしているように見えました。「しいて言うなら」という修飾句がこの読みを補強するように思います。普通に生きるのって難しいですよね。
くり返し熱中症を叫びゐるテレビも熱を持ちたまふなり
つるじい
内容の軽やかさと文語旧かなのギャップが笑いを誘います。「持ちたまふなり」の仰々しさは口語では出せませんね。テレビが熱中症で倒れなければいいんですけれど。
永遠はここにあるって信じてた同じ天井臨む背泳ぎ
くぼたむすぶ
学生時代が「永遠」だというのは既知の感覚ですが、その景が「同じ天井臨む背泳ぎ」であるというのが見事でした。思えばプールの水の味や水中を泳ぐ体験は独特で、人によってはそれきりのものでしょう。まさに回想されるにふさわしい一回性の景色です。
警報が出ると日本のそこここにwinnie the poohが現れている
ef
「winnie the pooh」はプーさんのこと。着眼点が素晴らしいです。警報を楽しむような目線は現代的にも思えます。
熱に喘ぐ子に添いながらこれからは楽しいことがいっぱいあるよ
アカマツヒトコト
作者の意図に反するかもしれませんが、「これから」が何を指すのか分からず不気味な歌に見えました。死後の世界を指す、というわけではないでしょう。熱の回復を祈るのではなく、遠い先の「楽しいこと」を伝えるのも少し不思議です。そうした奇妙なズレが魅力的に感じられます。
何杯も水を飲んでも濾過されてわたしに水はたまらぬのです
虚光
飲料が尿に変わる過程を「濾過」と捉える、その視点が素晴らしかったです。水を飲み続けることへの違和感を訴えているのだとすれば本質的な歌でもあります。
見切り品をしずかに乗せて方舟のようにフロアに並んだカート
梅鶏
夜のスーパー、見切り品をカートに入れてレジに並ぶ人々、そうした当たり前の光景が、言葉の機微によって幻想の世界に踏み込んでいます。「見切り品」は捨てられる前に、主体によって救われたというわけです。
テーマ詠「針」
特選
なし
入選
剣山の上にさされた生け花の代わりになりたくないと思った
松本桃英
生け花を人間の比喩と捉えるのではなく、目の前の景から発送を飛躍させたと考えるべきでしょう。上の句から下の句への飛躍が、「の」で結ばれることでスムーズに行われています。生け花を「針山の上」にあるものとして捉える目線も、主体の感性の鋭敏さを示しているようです。
針と糸を市場で買って火曜からコサックダンスを踊りつづける
寿司村マイク
突拍子もない飛躍の歌ですが、「踊りつづける」がいいですね。上の句とは全然つながらないことをし続けるのかよ、という。とにかく面白い歌です。
感想
人間選者は多くいらっしゃるので、簡潔な選評を目指しました。ほかの選評とセットでお読みいただけたらと思います。
たくさんの歌を読むことができて楽しかったです。弾けるような素晴らしい歌ばかりでした。まるでぽっぷこーんですね。
ぽっぷこーんじぇるには何の実績もありません。いちぽっぷこーんの意見としてご参照ください。
主催の深水英一郎さま、そして参加者のみなさまに心からお礼申し上げます。
以上、ぽっぷこーんじぇるでした!🍿