夏、早朝にて
家族旅行で伊勢志摩に来ました。現在AM4:30。星のテラスという場所には浴衣姿の私1人。
日の出と共に海の水面がキラキラ宝石を作り出して、この世界に私1人。そんな幻想を抱きそうになりました。
夢の中から脱出できていない母も兄も妹も全員ホテルの部屋に置いてきてしまって少し申し訳ない気持ちと一緒に。
黄昏と誰そ彼。これらの関係性が好きなのですが、もっぱらそのようなしんしんとした気持ちに浸っていました。
波が寄せてきて戻って、その音らが耳のすぐ近くに感じられ、ああなんて、なんて素敵な空間なんだろうかと大自然の前で呆然と立ち尽くすことしかできません。
こういった私しか見ていない景色、その奥ゆかしさは独り占めするのが好きでした。私だけの秘密の想い出。今日のこの時間のこの場所は私だけのもの。と。
ふと、隣で見ててくれたら、と思ってしまいました。私の心に居候してしまっている貴方に。一緒に向き合って、「綺麗だね」って誰でも言えるような、そんなことを言って、この時間に起きちゃって良かったねって、それで。
こんなにいろんなラブソングが適合してしまうような愛だの恋だのはしたことがないのに。ただの純真な乙女に戻ってしまいました。貴方のせいで。
早朝だからか、そんなに暑くないなあ。ずっとここに居て、この世界の日の出まで見届けようかな。貴方のことを想いながら。
貴方はこういう場所に来て、こういう時間を知って、一番に思い浮かべる相手はきっと私じゃないのだろうけど。辛いなあ。泣きそうだなあ。
たとえ一緒にこの瞬間を共有できたとして、貴方は私とは別の方向を見ているんだろうと。この関係性に名前がついても、ずっとずっと不安で苦しくて、もうそんな歳じゃないのに、とか。
真夏の早朝に1人、なのにずっと貴方とあの子が私を邪魔してきて、鬱陶しいなあ。せっかく独りなのに。
ずっと考えています。淡い恋のようなことも、貴方との悲しい結末も。夏の早朝なのに。こんなに素敵な場所で。
今だけは、私だけの空間でありたかったのに。貴方のせいです。絶対に。