『NE-TAXI』
「はーい、イルミネーションが綺麗な六本木の街にきておりますぅっ〜!こちら東京ミッドタウンではイルミネーションイベントを行っているだけあって、た…さんのカッ…ルたちが幻想的なイル……ションを楽しんでおりますぅんっ。少しインタビューしてみましょうか!ぅんっ。すいませ〜ん!ぅんっ。あっ、おたの…なところすいません。少しインタビューいいですか?ぅんっあっ、ありがとうございま〜っすぅんっ。聞き忘れました!お名前良いですかぅんっ。まゆみさん!ぅんっ。と?……しさん!ぅんっ。今日はどちらからお越しなんですか?ぅんっ。ふぇぇえ!埼玉の方から!ぅんっ。おふたり…カッ…ルなんですか?えええええええええ!さっきプロポーズされたんですか!!?!それでま…み答えは?ぅんっ。………ですか!えええええ、なるほど。ぅんっ。これからも仲良い2人でいられるといいで」
ぷつん。
沿道で手をあげる客を見つけたので、ラジオの電源を急いで落とした。
まだ金曜日の19時だというのに沿道に手が上がるこの街はやっぱり都会なんだなとつくづく感じる。
ウィンカーを出して車体を左に寄せたらドアを開けて、車を動かした。
「どちらまで」
「大宮の方まで」
「かしこまりました」
移りゆく景色を横目に東京を抜けるとあたりはすっかり落ち着いたいつもの夜になっていた。
「ねぇ、運転手さん」
突然後ろの席から声がした。
「はい?」
「これ、もらってくんない?」
そう言いながら徐に左手の薬指に手を伸ばして、光る指輪を外していた。
突然の出来事にかける言葉もなかったが、とりあえず何も言わずに後部座席の窓を静かに開けた。
3秒。
少しため息をついてからの3秒後、右手に持ったそれを眺めた後、外に捨てたのを見届けて、そっと窓を閉めた。
ぷつんっ。
「……大体お前32歳が12月にタンクトップ姿で街歩くってやっべぇだろ!!風邪ひくなよ!!そんなラジオネームぴーなっつ粉砂糖さんにはステッカー差し上げます!!んとじゃあまぁ続いての曲はそんなぴーなっつ粉砂糖さんからのリクエスト、クリープハイプで『NE-TAXI』」
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