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『「硬め濃いめ多めで」些細な幸せの話』

あけましておめでとうございます。
読者諸君におかれましては益々の御多幸と御健勝をお祈りいたします。
本年もまた、どうぞ私めとお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。
と、まぁかしこまってはじめてみたもののそもそも私のアカウントに決まった読者なんか居らないため、誰に向けての挨拶なのか私自身もよくわかっていない。
とは言え礼儀を重んじるのは私の性分であるが故、年明けの投稿には「あけましておめでとうございます」と言ってしまう。
重ねてにはなりますがそんな私をどうぞ、今年もよろしくお願い致します。

小さい頃、新年の楽しみといえば「お年玉はいくらもらえるのか」「年賀状は何枚きてるのか」であったが、今月で25回目の誕生日を迎えようとしている私にお年玉はくれないし、年賀状なんか届きようものなら返信しなければならないと非常に面倒くさい気持ちになる。元旦に会社の先輩から1通だけ年賀状が届いていたが1月3日現在、まだその返信には至っていない。自分のズボラさに呆れてしまう。
実家を出てはいるものの、住んでるのは隣の駅だし、5歳離れた妹が居るが生活に余裕があるわけでもないのでお年玉を包む気合もないため、元旦の午前中に実家へ新年の挨拶に帰り、そそくさと執り行われたすき焼きを頬張って夕方と呼ぶには早い時間くらいに誰もいない自分の家へ1人帰った。
同棲をはじめて約2年。
2人とも家を留守にする時はこの正月の時期くらいかもしれないなーと思いながらアウターを脱ぐことなくソファで横たわってしばらく眠った。
起きた時はもう20時をまわっていて、小腹が空いていたので棚にぽつりと置いてあったカップラーメンにお湯を注いで啜った。
元旦に独り啜るラーメンは悲しく、危うく涙を流すところだったが何かに負けた気になりそうだったので耐えて眠った。

ダラダラと眠って起きたのが10時43分頃。
昨日から寝過ぎたおかげで痛む腰をさすりながらリビングへと這い起きて、テレビをつけたら新年番組で盛り上がっている。
遠い目を向けながらぼんやりそれを見つめていたが、おもむろに外へ出たくなり、テレビを消して財布片手に外へ出た。
とりあえず空腹を埋めたく、近所の家系ラーメン屋へ行くことにした。
徒歩4分弱。
すぐに着いたその店の扉を開ければ「いらっしゃあいっせえ」と何を言ってるのかよくわからない店長の元気な挨拶がこだまする。
とりあえず食券を購入して、1番奥の席に座った。
食券を女性の店員さんへ渡すと「お好みどうされますか?」と聞かれたので「硬め濃いめ多めで」と淀みなく答えた。
体重90kg超えを維持するのも大変なのだ。
無論、ご飯も注文した。
何を隠そうこの店はご飯が無料。
それだけではない、おかわりも自由。
ただ、並ライスは他のお店の特盛りくらいあるため、今回は小にした。
恥ずかしながら日和った。

着丼してからは一心不乱に食べた。
増したほうれん草にニンニクを絡めたり、海苔で米を巻いて食べたり、米をスープに浸して食べたり…。
まだ今年も始まって2日だというのにいつも通りの休日をエンジョイしてしまっているのがまたなんとも哀しさを煽られた。
お腹が膨れてきたので少し箸を休めて携帯をいじっていると、ひと席空いて座っていた男女の客が「そろそろ行こっか」などと話していた。
男性の方にはビールのジョッキが、女性の方にはビールのグラスがそれぞれあって、2人とも白米を食べた形跡もあった。
満面の笑みで会話をする2人を見て、「あぁ、なんて幸せそうなんだろう」と心から思ってしまった。
「正月だから実家に帰らなくてはならない!」「三ヶ日は家でぐだぐだするもんだ」「せっかくならご馳走を食べるぞ、正月くらい」こんな既成概念に囚われている私は自分が恥ずかしくなった。
いいじゃないか、普段していることに少しの贅沢を加えることだって。
休みの日にラーメンを食べながら飲むビールがどれだけ旨いか…そんな些細な幸せをパートナーと過ごせたらどれだけ幸せか…。
2人は身支度を済ませて「ご馳走様〜」と言いながら店を後にした。
止めてた箸を再び動かし、最後にスープを一口啜ったら少し休んで私も店を出た。
「あいつが帰ってきたらいつものところへ飲みに行こう」
そう思いながらラーメンで重くなった身体を揺らして自宅へと帰った。

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