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外資系クソデカ工場は地方都市を救えるのか?

地方の衰退が止まらない。

急速に進む少子高齢化によって東京首都圏と関西、愛知、福岡などの中核都市を除く地方都市は、もはや風前の灯だ。

人口減少によって産業は衰退、仕事や出会いやエンターテインメントを求めて若者はどんどん大都市に流出し、街に残されたのは高齢者と、彼らの社会保障に群がる介護施設、個人医院、整骨院、歯医者、美容院、パチンコなどの偏った産業のみ......

そんな地方衰退都市を救う一筋の希望がある。

それが"巨大工場"だ。

巨大工場とは、半導体や自動車、工作機械、化学薬品、製薬などを生み出すために建設されるモノづくりの城だ。

たくさんの仕事がこの世界には存在するが、そのなかでなぜ二次産業の大きな工場は地方を救える可能性を持っているのであろうか?

その最も大きな理由は良質な雇用を大量に生み出せることだ。筆者も以前から指摘しているが、製造業界は特別な能力を持たない男子にも、安定してそこそこ稼げる業界なのである。

地方から若者が遠ざかる最も大きな理由が、割のいい仕事がない、稼げて安定した就職先がないことである。

特に男性にとって仕事選びは人生選びといっても過言ではない。

地方公務員や地元にある極わずかな大企業に就職できなければ、年収300万円以下で介護施設で働くか、非正規雇用でぶらぶらと人生を浪費するしかない。そんな街に若者が骨を埋めようと考えるはずがない。

当然仕事のない地方都市から男性は我先にと逃げ出すことになる。都会で仕事と家族を得た彼らが地元に戻ってくるのは年末年始のごくわずかな期間と、親の不幸事の時ぐらいだ。

そんな地方都市の最も大きな雇用問題を、製造業界の巨大工場は解決してくれるポテンシャルを秘めているのである。

さらに、令和の日本は製造業界の国内回帰の機運がかつてないほど高まっている。筆者が若かった時代は、日本のブルーカラーワーカーの給料が高すぎる!グローバリゼーションの時代に国内生産にこだわる意味はない!という掛け声のもとで、巨大工場の海外移転が相次いだ。

しかし、今は急激に進む円安と世界的なインフレ、燃料費の高騰などによって、国内で消費される製品は海外で作って輸送するより、国内で作った方が得、という時代が訪れているのである。

社会の少子高齢化によって経済成長できずにいる日本は、幸か不幸かいつの間にか世界の中でもそこまで人件費が高くない国になっているのだ。

日本人の人件費が安くなっていることに目を付けたのは、なにも日本の企業だけではない。そう、海外の最先端モノづくり企業も、どんどん日本に進出してきているのである。

シャープを買収したことで一躍有名になった鴻海、そして熊本に半導体工場を建設したTSMCと、アジアのメガカンパニーが安くて質の高い労働力や、豊富な水資源、安全な治安を持つ日本に進出しているのである。

残念ながら鴻海の大阪堺工場は液晶パネル需要の低下により停止してしまったが、熊本は今まさに巨大工場によるバブルが訪れている。

巨大工場が生み出す良質な雇用は、その地域全体に波及していく。

巨大工場の下請け企業の町工場、物流倉庫といった新たな雇用も創出される。そしてそこで働く多くの労働者が街に集まることで、彼らや彼らの家族が利用する飲食店や飲み屋、寮やワンルーム、ファミリー向けマンション、ショッピングモール、保育園や学校、産婦人科や小児科などが次々と生み出される。

枯れかけた街が巨大工場を中心とした城下町となって生まれ変わるのである。

かつて、日本の製造業界が安さと品質で世界を席巻していた時代、多くの日本メーカーによる巨大工場城下町が日本中に広がっていた。

しかし、今や巨大工場の多くが海外に移転、あるいは工場ごと倒産し、城下町として栄えた地域は干からびた街へと変貌してしまっている。

いくら国内回帰の機運が高まっているとはいえ、高度経済成長期のような大工場の建設ラッシュを起こせるほど、今の国内製造業にパワーはないのが現状だ。

そんな中で期待されるのが、先にも述べた海外の製造会社だ。

しかし、海外のビッグカンパニーによる巨大工場は、国内の巨大工場と同じような城下町を長期間維持することは可能なのだろうか?実はそこについては3つの大きな懸念点が存在する。

一つ目の懸念点が……

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