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一番おすすめな運動ってなに?について考えてみた

こんにちは。最近、僕は健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 [1]を読んでいます。読みながら、運動って大事なのは分かるんだけど、有酸素運動と無酸素運動って結構違うけれどもあんまり理解していないな〜、とか、運動を美容(スタイル維持)の目的で行なっている人も多いはずだけど、健康という文脈とコンフリクトしないのかな〜などと考えさせられたので、記事にしてみようと思いました。

筋トレや有酸素運動、さまざまなスポーツ競技がありますが、その中で、どんな運動をしたらいいんだろ思った時に、この記事を参考にしていただけると嬉しいです。

著者:
Pon|食品会社勤務|元研究開発担当| PhD |食品の健康機能に関する研究を多数実施し、大学で疫学研究で学位を取得

健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023のポイント

まず最初に、このガイドラインを紹介しておこうと思います。このガイドラインは厚生労働省の研究チームが健康日本21というプロジェクトの”身体活動”という部会で策定した、身体活動の推奨事項です。

一言で言うと、健康のためにはこれくらい運動をしてね!という国の方針とも言えるものです。

こういったガイドラインはたくさんありますが、平易な言葉で超重要エビデンスをまとめてくれている教科書的な内容で、多くの場合、無料で読めるというものです。興味のある分野のガイドラインは目を通しておくと本当に有益です。

それでは、早速ですが、以下にこのガイドラインで推奨されている内容のうち、高齢者と成人のポイントを紹介します。

成人の推奨事項

・ 歩行と同等以上の身体活動を1日60分はしよう。
 (歩数に換算すると8000歩以上を目指そう)
・ 汗をかいたり、息が切れるくらいの運動を週に60分はしよう。
 (筋トレをこの運動に含めてもOK)
・ 筋力トレーニングを週に2-3日しよう。
・ 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにしよう。

高齢者の推奨事項

・ 歩行と同等以上の身体活動を1日40分はしよう。
 (歩数に換算すると6000歩以上を目指そう)
・ 有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動、柔軟運動など多様な運動を週3日以上しよう。
・ 筋力トレーニングを週2-3日しよう。
・ 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにしよう。

という感じです。

今回のガイドラインで推奨事項に筋力トレーニングが初めて入った、ということが割と注目ポイントなんですが、初めて推奨事項に入ったというのに、かなり存在感があります。

また、僕の中で、面白かったのは、成人に対しては、「なんでもいいから運動しときな!」みたいな雰囲気なんですが、高齢者に対しては、有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動、柔軟運動みたいにたくさんの推奨事項が書かれていて、「運動量よりも多様な運動を意識することが大事なんだよ〜」みたいな点が成人と大分異なるな〜と思いました。

でも、確かに柔軟運動とかバランス運動をしっかり行うことでケガをしにくい体づくりにつながるので、高齢になればなるほどそう言ったメニューは大事なんだろうな〜と思います。

健康という文脈での運動の目的って何?

では、この辺りで本題に入っていきたいと思いますが、健康という文脈で運動を行う場合には、皆さんは何をアウトカムと考えますか?

パッと思いつくところでは、

  • 心肺機能の維持

  • ケガをしにくい体づくり

  • うつ病の予防(治療)

  • 認知症の予防(治療)

などが出てくるかなあと思います。一方で、疫学研究で出てくる最も重要かつハードなアウトカムは死亡ですね。僕は疫学研究に興味があるので、全ての死亡をメインに考えたいと思います。

そうすると、スポーツ別に調べるとテニスが最も長寿だということがとても有名です。

テニスが最も長生きするスポーツだった

競技別に死亡リスクを比較した研究は有名なものがいくつかありますが、デンマークの高齢者研究 [2] でも、英国の研究 [3] でもスポーツ別に比較をするとテニスが最も長生きをするスポーツだったという結果が出ています。(英国の研究ではスカッシュやバトミントンも含めたラケットスポーツとしています)

この研究では、どちらもテニスの運動量よりも、テニスがコミュニケーションを必要とするスポーツであることに注目をしています。確かに、テニスはラリーをする時には相手とコミュニケーションがありますし、ダブルスをする場合にはペアの人とコミュニケーションがあります。

そして、孤独であることは、タバコ毎日15本に相当するなんていう有名な研究 [4] があるくらいなので、大事なのは分かるんですが、ただ、これだと、運動の効果は社会性などに埋もれてしまう程度の小さいものなのか?という話になります。

それに関しては、僕は運動の効果は非常に大きいと思っていて、例えばランニングなどでも有意に死亡のリスクを下げているので効果はあるんだと思います。ただ、テニスには他の運動のメリットに上乗せして、社会性というプラスアルファの効果が期待できるということでしょう。

他の競技との比較など、詳しく知りたい方は下記の記事を読んでみてください。

ということで、こちらの研究は、おもしろい研究ではありますが、運動と死亡リスクに関する直接的なエビデンスとは言えないんじゃないかと思っています。そこで、次に疾病などと関連づけて考えてみたいと思います。

無酸素・有酸素運動の比較

疾患別とは言っても割と難しいとは思うのですが、①心肺機能の強化、②転倒防止、③精神疾患(うつ病など)の予防、④認知機能の維持、の4つがパッと思いつくところかなあと思います。

これら4つのアウトカムに対して、無酸素運動と有酸素運動で比較してみようと思います。多くの方がご存じだとは思いますが、無酸素運動と有酸素運動は

無酸素運動

短い時間に大きな力を発揮する強度の高い運動を指します。
筋肉を動かすためのエネルギーを、酸素を使わずに作り出すことからこのように呼ばれています。エネルギーの発生に酸素を必要とせず、糖をエネルギー源として利用します。全力もしくはそれに近い筋力を短時間で発揮しやすいのが特徴です。短距離走や筋力トレーニング、ウエイトリフティングや投てきなど

有酸素運動

有酸素運動とは、軽~中程度の負荷を継続的にかける運動のことです。酸素を使って筋肉を動かすエネルギーである脂肪を燃焼させることから有酸素運動といいます。脂肪を消費するため、体脂肪の減少や高血圧などに効果が期待できます。水泳、ジョギング・ウォーキング、サイクリングなど

江崎グリコ https://cp.glico.jp/powerpro/training/entry05/

基本的に無酸素運動でも有酸素運動でも運動によって心肺機能が強化されたり、筋肉がつくことで転倒防止や認知症予防になります。また、適度に体を動かすことで自己肯定感が高まったり、集中力が高くなり、精神疾患に対しても予防的効果が期待されます。

つまり、基本的には無酸素運動、有酸素運動、どちらでも良いからやっておいた方が良いですし、望ましくは両方やったほうが良いよね!というのが大前提ではあるのですが、その上で、

生活習慣病関連の予防を意識する場合には脂肪を燃焼し、血圧を下げる有酸素運動がおすすめです。一方で、痩せ型の体格の場合には脂肪を燃焼させる必要が少なく、痩せた体格の場合には筋肉が少なく、フレイルのリスクも大きいことから有酸素運動よりも無酸素運動、特に筋力トレーニングを意識して行うことが重要ではないかと思います。

また、高齢者の場合には直接的なアウトカムとしては転倒防止が大事だと僕は思っています。これは転倒がトリガーとなり、ケガをして動けなくなり、認知症や要介護へとつながっていくことが多々あるためです。

高齢者では有酸素運動、筋力トレーニングに加えてバランス運動も行うことが推奨されていますが、バランス運動はまさに転倒防止、基本的な生活に必要な運動機能の維持というのが目的だと思いますので、ぜひ意識してほしいなあと思いました。

【結論】一番おすすめの運動は?

記事を書いていて、僕の結論は、下記になります。

・ 生活習慣病が気になるなら有酸素運動を中心に
・ 痩せている人は筋力トレーニングを中心に
・ 高齢者は上記の2点に加えて、バランス運動を取り入れる

結局のところ、答えは人によって異なるのですが、僕としてはある程度適切な回答ができるくらいに頭の中は整理されたと思っています。また、何かの競技を習ってみようかな〜という方はコミュニケーションというプラスアルファの恩恵が得られるテニスを検討してみるのがおすすめではあります。

筋トレのやり方など、興味があれば、下記の記事を読んでみてください。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、楽しいスポーツライフをお過ごしください。

参考文献

  1. 厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 LINK

  2. Various Leisure-Time Physical Activities Associated With Widely Divergent Life Expectancies: The Copenhagen City Heart Study - Mayo Clinic Proceedings https://www.mayoclinicproceedings.org/article/S0025-6196%2818%2930538-X/fulltext

  3. Oja P, et al. Br J Sports Med 2017;51:812–817
    Associations of specific types of sports and exercise with all-cause and cardiovascular-disease mortality: a cohort study of 80 306 British adults  https://doi.org/10.1136/bjsports-2016-096822

  4. 孤独は1日15本の喫煙と同じくらい寿命を縮める…世界的研究でわかった「がんが劇的寛解した人」に共通の習慣 プレジデントオンライン LINK

  5. 江崎グリコ 有酸素運動と無酸素運動の違いを知っていますか? https://cp.glico.jp/powerpro/training/entry05/

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