読書日記31「やめるな外科医」-中山祐次郎

この巻では3人の人物の最期が対比的に描かれている。
前半部分は同時に運ばれてきた2人の女性。上品で丁寧な物言いをする女性の苗字には「上」が、派手好きできつい言い方をする女性には「下」が入っていた。分かりやすすぎるネーミングで思わず笑ってしまった。
後半部分は若くしてステージⅣの癌になった女性の話が軸となっていく。
それぞれの人物の最期がその人の人生を映す鏡になっているようだった。自分は誰の最後にも立ち会ったことがない。亡くなった親戚や恩師を思い出し、幸せな最期を迎えられたのだろうかと考えてしまった。

主人公は手術中にミスをしてしまい、一定期間執刀が禁じられてしまう。その流れで出てきた一定の条件の下、医師は人を切ることが合法化されるのではない、違法性を取り除かれるのだという言葉が印象的だった。執刀という行為に対する覚悟が表現されていると感じた。
この話を読んでアルバイトをしていた頃、「ヒューマンエラーは0にならない。でも限りなく0に近づける努力は怠らないように。」と言われていたことを思い出した。本当は面倒くさがりでうっかりしてしまうことも多い自分が仕事の時だけは注意深くなれているのはこの言葉のおかげかもしれないと感じた。

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