読書日記138「アーモンド」-ソン・ウォンピョン(矢島暁子訳)
書店で物憂げな表情をした男性の表紙が目に止まった。気になってあらすじを調べてみると「生まれつき扁桃体が小さいことにより、感情が分からない主人公の物語」とあった。なんとなく暗そうな雰囲気を感じて一度本の前を通り過ぎたが、2020年の本屋大賞翻訳小説部門を受賞したしていることや口コミ評価がかなり高いことを知り、読むことにした。
まず、感情が分からない人物の目線で描かれる物語が独特でそこからストーリーに引き込まれていった。あらすじから想定していたほどの起伏がないストーリーではあったが、感情が分からない主人公が愛を学んでいく様子に心温まる気持ちになった。
この本を通じて人間が持つ複雑な仕組みである感情について考えさせられた。
自分は他人の感情に敏感なところがあり、人疲れを起こしやすい。また、他人には何を考えているのか分かりにくいと言われることが多い。感情とのバランスの良い付き合いかたがずっと分からないままだったが、この本からそれに対するヒントのようなものをもらったような気がする。
身近で抽象的な概念である感情について新しい視点で考えさせられる本だった。