読書日記111「太陽の棘」-原田マハ
少し前からAmazonのおすすめに目力の強い人物の表紙が目を引くこの本が表示されるようになった。
読むことが決まっている本が少なくなってきた時、この本のあらすじを調べてみた。戦後の沖縄の人々が作ったニシムイ芸術村とアメリカ軍の軍医の実話に基づく物語と知り、興味が湧いた。
物語と関係ないところとなるが、占領下の沖縄に派遣されていたのアメリカ軍の医師が含まれていたことに驚いた。軍医も軍の一員なのだから当たり前と言われればそうなのだが、私は勝手に占領に必要な武力を持ついかにも軍人っぽい人だけが派遣されていたものだと思い込んでいた。上手く言えないが、このことを知ったことで自分が漠然と持っていた占領という概念に対するイメージが変わった気がした。
物語全体を通しては主人公とニシムイ芸術村の人々との温かい交流が描かれている。その一方、バックグラウンドの異なる者同士がどう頑張っても分かり合えないことがあるという事実をそっと示す物語でもあった。
自分は以前から努力したり、相手に寄り添ったりすれば他者を理解できるという考え方に違和感を感じていた。努力や寄り添う姿勢を否定している訳ではもちろんない。その先に必ず「理解」という成果がついてくるという考え方に懐疑的ということだ。かつては、自分が冷たいだけなのだろうかという不安もあった。しかし、この本で主人公が周囲の人と衝突する様子を通して、自分の持っていた違和感は間違ってはいなかったと思えた。理解できないかもしれないなりにどう行動するかが大事なのだと思う。