【号外:無料配信】第三十四回文学フリマ東京に出店したこと、書き残してみます【希里峰の苗床】
いつもお世話になっております。
虎徹書林所属文筆家の希里峰です。
五月末日。
気が付けば2022年も真ん中に差し掛かっています。
私にもちょいと節目といいますか、一つ大きめの事をやり遂げました。
今日は【号外】として、その大きめの事――初めてイベント出店てのをやったんですよというお話を書いてみます。
同じイベントに集った皆々様へ、広く広く有り難うの気持ちをお届けしたく有料の鍵を外しての配信です。
人見知り・あがり症・口癖はメンドクセエ
2022年5月29日。
数日前から天気予報で夏日になると言われていた。日を追うごとに最高気温の予想値が上がり、朝の情報番組のお天気担当さんの口から「30℃超え」の一言を聞いて、私の『持病』の発作が出た。
「いやだ、きょうは行きたくない。メンドクセエ」
持病――楽しみにしているイベント直前になると全てが嫌になっちゃう症候群。同行の家族はマタカヨという顔をするけれど慣れたもので、私を無視して出掛ける準備を整えていた。
生まれついての人見知りだ。
それに付け加えて、歳を重ねるごとに少々のことで緊張に挫けるようになってきた。
それなのに、だ。
半年ほど前に、何故だか文学フリマに出る!店側になる!と公式サイトで申し込みボタンを押した。アノ時、アノ瞬間、一体全体何を考えていたんだろう?
フリマ当日までの約二週間、憑りつかれたようにブースの準備にのめり込んで、そういう細かい事情はすっかりどうでもよくなり忘れてしまった。唯一おぼえているのは、目的は売り上げを伸ばすことではなく虎徹書林の名前を一人でも多くの方に「知っていただく」ことだという目的のみ。
しかし、天気予報と空のピカピカ加減を見るにつけ、その目的も忘れてしまおうかなという気分になっていた。
普段通りにきものを着たのに、帯を三回巻いてしまい、短すぎて結べないと泣きそうになった事。
食欲が全く無いのに駅前の立ち食いそば屋でざるそばを食べ、味なんてぜんぜんわかんなかった事。それなのに五分と掛からず完食した事。
不幸の連鎖が順調に進んでいるとしか思えなかった。
到着から設営
乗り換えに失敗しそうになりつつ、会場の有る流通センター駅に到着したのは11時11分。
出店者入場口まで迷子になることなく辿り着き、受付も問題なくクリア。指定されたブースはケの列13番だったのだけど、五十音って何だっけとド忘れしたのをきっかけに少々迷子になる。
同行の家族が居なかったら、迷子のまま一日を過ごしたかもしれない。
家族の助けで所定ブースに辿り着き、まずは両隣のサークルさんにご挨拶した。両親から(特に母から)は、挨拶だけはちゃんとやりなさいと言われて育った子である。これだけは、どんなにつらい時でもやらねばならぬ。
「お、おは……おはようございマス!」
既にあがり症が出ていて、喉の奥が乾いて貼り付いてしまい噛み噛みだった。
そんな私なのに、ご近所さん方はお優しかった。
「おはようございます」
「よろしくおねがいします!」
気持ちよくお返事してくださる。お隣のお姉さんに至っては、ゴディバのチョコを下さったのだ!
ついさっきまで、ざるそばの味もわからなかった(完食したけど)のに、いただいたチョコは口の中でスルスルと解けるのがうれしく、控えめな甘さにホッとした。
設営のシミュレーションは、前日までに何度かしていた。
並べる順番の逆順でパッキングもしたので取り出しからセッティングへの動作もスムーズだった。
なので、カバンを開けて虎徹書林出張所っぽいものの外観を整えるまではものの数分で終わったのだが、会場で準備する予定だった値札とPOPが書けない。挨拶を元気よくし過ぎたせいか、動悸が激しくなり、手の震えが止まらない。悪筆が更に悪筆になり、字を忘れる。
全ての用意ができたのは、開場数分前だったと思う。
ゲートオープン!
公式さんのアナウンスがあって、開場宣言に合わせて拍手を……したんだっけな?この辺りは、ほんとうに何も覚えていない。
なにがあったか、知ってる方オシエテクダサイ。
WEBカタログでバッチリ予習済みと思われるお客様が、広い歩幅で続々と入場してくる。出入り口から距離がある私のブースそばにも早々に辿り着き、前を通り過ぎる。
何がどうというわけでもないのに、とにかく怖くてしかたない。
人見知り大爆発だった。
会場内にお客様の数がどんどん増えていく。
怖がってばかりでは駄目だ、何のために来たのだと、体育会系の営業マンよろしく「声出し作戦」に出るも、雨に打たれた野良の仔猫よりも弱い震え声しか出ない。
そんな自分が情けない……とは思わなかったが、声出しそうそうに諦めて、プランB――地蔵のように座り倒す作戦に切り替えた。
菩薩様が次から次へと訪れる
前後左右だけでなく、上も下も、何時何分何秒もわからなくなった。
帰りたい……という感情さえも手応えに乏しくなってきたころ、虎徹書林のブースに関心を寄せてくださるお客様が少しずつ現れ始める。
(とにかく「知っていただく」のだ!)
「あああああ、あの、あの、フリーペーパーを!フリーペーパーだけでもどうぞぅぅぅ……」
動かぬ地蔵は、フリーペーパーを強力に推す銅像になった。
そうこうするうちに、拙著みほんを手に取り、立ち読みしてくださる方も現れた!
もう何が何だか……銅像はフリーペーパーしか推せないので、目玉商品である新刊『コトコの言霊』をおススメすることができない。シングルタスクでしか動けない……。
そんな時だった。
救いの神が……ここnoteだけでなくSNSでも仲良くさせていただいているみきたにしさんが遊びに来てくださったのは!
モノレールが好きな事、猫の話で盛り上がったこと、油断するとすぐに照れてしまいウフフ……となってしまうところ等々、共通点が多すぎて生き別れの姉妹かと錯覚してしまいそうになる(図々しくてすいません……)。
この和やかな時間のお陰で、私は銅像から人間に戻れた。
みきさんの粋な計らいはそれだけではない。私に人生はじめ、本にサインをするという貴重な経験をさせてくれたのだ!
その後次々とお客様――菩薩様が現れては、会話や笑顔を交わしてくださる。そんなブレイクスルーを経て、私はようやくイベントが楽しくなり始めた……。
反省点
人間らしいアタマを取り戻してみると、ブースの内側でパイプ椅子に座っているからこそ、見えてくることや閃くことがあるのに気付く。
出店予算の配分を、新刊本の仕入れに全振りしていた。
既刊本に関してはAmazonのオンデマンドによる受注生産と電子書籍だったから、そちらのシステムにお任せしちゃって安心してたのだ。
ところが、である。
ペーパーバックの見本を手に取って読んでくださる方の多いこと!そしてその場で「買います」と即決してくださる方がほとんどだ!!
QRコード出品にも興味を示して下さるお客様は居たけれど、その場で現品を手にしたいという熱量の方がはるかに高い。
イベントってのはそういうもんだよ……よくよく考えればすぐに気付きそうなものだが、経験値が低すぎる私の考えはそこまで及ばなかった。次回はその場でお買い上げいただけるよう、仕入れの配分にも気を配ると強く誓った。
ディスプレイの仕方の工夫やバックヤードの動線の作り方なども、リアルに店番しないとわっかんないよねー!ってことばかりだった。
あと、店番の時間と会場を見て回る時間のスケジュール調整とか。
分刻みに両の目玉から鱗が落ちた。
一つなにかを知るたびに「目からウロコでしたあ」と大袈裟に言う人をメンドクセエってずっと思ってたんだけど……正直スマンかったて感じだ。
目玉には何枚も何枚も鱗が重なっていて、未知の領域に踏み込むたびにポロッポロ落ちるもんなのだ。
お祭りは続く
17:00のチャイムが鳴って、閉会になった。
帰りの電車か飛行機の時間に合わせて早めに撤収したサークルもあって、閉会間際はちょっと寂しい雰囲気も漂っていたんだけど、残ってる参加者全員で拍手をして終わるっていうのは、学生時代に楽しみつくせなかった文化祭をやり直しているみたいでちょっと照れくさいような、清々しいような気分だった。
とはいうものの。
机といすを片付け、ご近所さんにご挨拶して、帰りのモノレールに乗っても、未だ祭りの興奮冷めやらずだった。ていうか、どんどんヒートアップした。
「楽しかった!また出よう!!」
次のブースはこういう設計にしたい、新刊の構想はこんなのにしよう、フリーペーパー作り過ぎたわ!……とにかく頭の中は「次だ、次も絶対、店側で出よう!」でいっぱいだった。
というわけで。
次回は11月20日だそうです、文学フリマ東京35。
新刊、どんな話にしましょうか?
ペーパーバックも在庫を揃えて(数は少ないですが💦)参ります。
希里峰ぽんぱ
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