虎徹書林のチョイ怖シリーズ第三話『そば処千妖にいらっしゃい』 あとがきと付録
チョイ怖シリーズ第三話『そば処 千妖にいらっしゃい』を楽しんでくださった皆様、まさかの付録回までのお付き合い、誠にありがとうございます。
ご挨拶をあとがきにかえて
連載中に「お客様の素性がさっぱりわかりません……」という御声掛けをいただき、付録という形で簡単な解説を書き添えることにいたしました。
お客様方は妖しく怪しい界隈では知名度の高い方々で、本来ならば私の稚拙な解釈のもとで筆の上においでいただくのは畏れ多いこと。ハラハラドキドキしながら設定資料を作り、失礼のないように書いたつもりでしたが、それが反って読者様にわかり辛さを招いたのだとしましたら、これは物語作者としては痛恨の極みというものです。
この場を借りて、深くお詫び申し上げます。
今後の創作活動にあたり、さらなる修練を積んで、より皆様の直感にズバン!とお話を届けられるように頑張りますね!
さてさて。
読者様感謝企画後編の位置づけの今作。
カメオ出演してくださった読者様が御二方いらっしゃったのを見つけていただけたでしょうか(*´ω`*)
前編にあたる『Re:Co=miu』に続く仕掛け、物語の筋に絡めつつもなるべく気付かれる事無くご登場願うというのは、プロットを捻り出すよりも難易度が高く且つ楽しい体験になりました。
引用記事を書くのとは違って、ご登場くださる読者様の記事から滲み出るお人柄などを加味し物語も少し捻って読者様に添うようにしていくという作業は、特に二作にわたるこの企画の醍醐味だったように思います。今後もチョイ怖シリーズを細々と書き繋いでいく中で、時折はこうした企画ものを書いてみたいなと思った次第です。
最後になりましたが、長い連載を御一緒に楽しんでくださった皆々様に深く感謝を。温かいメッセージを寄せてくださった皆々様に御恩の循環を。心を込めてお届けしたいと思います。
チョイ怖第四話はまだテーマも決まっていないのですけども、けっこうしっかりめに怖い話を書きたいなと考えています。とはいえ「チョイと怖い話」の範疇を越えてしまってはシリーズになりませんのでね💦クラスの平均より少々怖がり寄りの中学生の奥歯がガタガタいうレベルを目指します。
それでは、また。
再び物語のコール&レスポンスを楽しんでいただけますように……。
希里峰ぽんぱ
【付録】
『そば処 千妖にいらっしゃい』お客様一覧
二把目 初春の熱燗
お客様は緑一色のスタイルにこだわりを持つ、河童様でした。
全国津々浦々に散らばる河童様の御一族は地域にお住いの人々とも交流も深く、土地ごとに個性的な愛称が多々残っていることも大いに頷けるというものです。
ご登場いただいた河童様は、生物多様性に優れた河童淵ご出身の方(という設定)でした。
時代の移ろいと共に人間との共存関係も変わり、おうちはかつての勢いがないとはいえ、紳士の心得と洗練された御洒落は忘れずにいらっしゃいます。ダンディーな御声がT田K次郎さんに似てらっしゃると、最近は若い方に褒められるのだとか。
お酒が大の好物というのはコチラの河童様も例に漏れず……といったところ。酔いが回ると、ついついお相撲がとりたくなってパンプアップしてしまう癖は、御本人様も気にしてらっしゃるようです。
三把目 甘くてしょっぱいのは餞の団子
緑の河童様に続いてご登場願いましたのは、赤い狐様でした。カップ麺から着想を得たわけではございません……ときっぱり言えたら良かったのですが、そういう安直なところが私の至らなさでございます。
お稲荷さんの愛称で親しまれる御社の御眷属として、狐様は現代社会でも大変に馴染みが深く、河童様同様に全国津々浦々に御一族がいらっしゃいます。
今回、お話に登場する狐様のモデルをお願いいたしましたのは、京都・鉄輪の井戸に隣接する命婦稲荷社の狐様(左右どちら?という御質問には、ご想像にお任せいたしますとお答えしておきますね)。一度しかご挨拶に伺ったことがありませんが、背筋がピリッとするような厳粛な雰囲気の中にも「あら、いらっしゃい。良かったらこの座布団使って?」みたいなフレンドリーさも感じたりして、ほのかに胸の奥を温かくしていただいた記憶があります。
四把目 舞茸の揚げ焼きは衣を薄く
こちらのお話のお客様に関しまして、だいぶ読者様を悩ませてしまったようで、申し訳ございません。
それもそのはず……と言い訳をいたしますと、私も未だにこちら――鉄鼠様には多く情報を秘密のままにされているのです。
その時々で御名前を変えて立ち回ることに付け加え、鼠に似た僧侶・僧侶に化けた鼠・象並みに巨大化した鼠と、姿かたちもまちまち。
寄る辺なく彷徨ううちに心を秘めてしまわれるのも道理なのかしら?と同じく鼠様が御眷属ですから……と大黒ベーカリーの神棚(の一角)をご案内した次第です。
頑固一徹、塩結びしか口にしないと公言なさっていましたが、近頃はホイップバターとこしあんがたっぷり詰まったあんバターパンにご執心という噂が入っております。
五把目 雑炊は春の海の味
もう何も申し開きはございません。
今が旬!のアマビエ様がお客様でした。
アマビエ様にご登場を打診する以前より、レディバグって名前だからってオスの個体が居ることも忘れるな!というような映画があったなあと記憶の片隅に引っかかっていましたので、昨今かわいらしい雰囲気でイメージされることの多いこちら様には敢えてマッチョ・態度MAX・男性ホルモン多めで役作りをオーダーいたしました。
独特の衣装につきましては、南の島の浜辺でひとり、ユーロビートでぎゃんぎゃん踊りまくって周囲がドン引きしていた、というイメージと七つの海を体一つで泳ぎ渡るならなるべく泳ぎやすい感じが良いだろうということであのような結果に……けっして、職質オチありきでのオーダーではございません。アマビエ様の名誉のため、付け加えておきます。
六把目 「うそ」は流れて、カマボコ板の舟
頂戴した御名刺をそのままお話に折りこみましたので、もう、ほんとに、そのまんま……御出演は、鼬様でした。
よく似た方に鎌鼬様が居られますが、鼬様は混同されることにあまりいい顔をなさいません。また、ラッコやカワウソの人気ぶりは多少羨ましいものがあるともおっしゃいます。
私のおうちには、にゃんこ先生がやってくるもっと前、フェレットの王子様が居ました。それはそれは大層可愛くて、動物病院の女性スタッフ全員に投げキッスするような性格でしたから、この世で一番のモテ男は自分であると信じて疑わなかった節があります。
鼬様は王子様ほど萌え萌えキュン要素が強くないにせよ、心の何処かでは常に「かわいい!と言われたい、ちやほやされたい」という願望をお持ちのように思えるんです。
嘘をつくのは照れ隠し。もっと突っ込んでしまうと、他者との距離感を掴むのが苦手で、不器用な生き方しか選べないのかもしれませんね。
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