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語学アプリと学習法「短期記憶+α」について

学生時代、赤い下敷きで英単語や古文単語を頑張って覚えていたことがあったのを皆さんはよく覚えているかもしれない。時間が経ち、モバイルアプリが進化し、今や英語だけでなく様々な言語が携帯電話で勉強できる時代になった。昔の紙の時代を考えればとんでもない時代になったものである。

しかしながら、語学アプリになっている発想の骨子は、まさにこの「赤い下敷き学習法」と同じ原理がベースになっている。その原理は記憶の仕組みと関係している。

語学アプリというと様々な種類があるが、ここではいわゆるフラッシュカード形式(単語帳タイプ)のアプリを念頭においている。

記憶

人間は毎日膨大な量の情報を脳で処理している。そのため、全ての情報を保存してパンクしないように、人間には忘却という機能が備わっている。

しかし、忘れるというプロセスの前に人間は、瞬間的な感覚情報として処理するか、記憶を少しの間だけ覚えておくか、長期にわたって覚えておくかを無意識に選択している。二番目を短期記憶三番目を長期記憶という。

ただし、これは心理学的な分類で、他の分野では異なる方法で記憶を分類している。したがって、記憶についてこの三つが普遍的な分類ではないことは留意しておいてほしい。

「短期記憶+α」

語学アプリが提供する学習方法は基本的に「短期記憶+α」だと思っている。

「短期記憶+α」とは私の独自の用語だ。それは短期記憶となり忘却されがちな情報に様々な情報をくっつけることにより、情報の内容を濃くして、長期記憶としてユーザーに記憶してもらおうとするアプリの試みを端的に伝えるための用語である。

考えてみてほしい。例えば語学アプリで勉強しても大抵の人は出てきた単語をすぐに覚えることは難しいだろう。例えば語学アプリで勉強しているときにいきなり"🇮🇩di atas bandara itu ada kantor pengendalian perbatasan"や"🇦🇿Azərtac xəbər vərib ki, Prezident İlham Əliyev Şuşaya daxil oldu"などと表示されても覚えられないだろう。「こんなの覚えきれないよ!」となるのが関の山である...、多分こんな例文はいきなり出てこないだろうけど。

そのため、語学アプリは単語を小出しにして、繰り返し勉強させるように促す。そしてその内容をだんだんと長く、複雑にしていく。例えば上記の例で言うと、"atas"や"ada"など単語レベルで単語を登場させる。それを繰り返し勉強させ、目につく頻度を上げていく。そして、徐々に単語を組み合わせ、複雑な文にして、学習者に理解させるのである。

短期記憶はそのままでは脳内で行方不明になる重要度が低い情報だ。そのため、語学はアプリはそのような単語を繰り返し登場させてユーザーに学習させ、内容の情報を濃くすることにより、登場させた単語をユーザーの頭の中で短期記憶から長期記憶へと転換させる試みを行っていると考えられるのである。

メジャーな語学アプリ

例えばDuolinguoは「ゲーム感覚で」勉強できると自分たちの製品を宣伝しているが、上記の「短期記憶+α」の枠組みがそのゲームの下地にあると考える。

https://ja.duolingo.com

Duolingoは日本語で勉強できる言語はまだ多くはないが、英語版であれば一〇言語以上が学べる。人工言語のエスペラント語やクリンゴンもある。

勉強する際のインターフェース言語を問わなければ、DuolinguoのほかにもMemriseやMango Language、Drops、Mondly、Ling、OptiLingoなど数えきれないほど語学アプリがある。どれも他社のアプリと差異化を図るためか、デザインや機能が異なる。そのため、自分が何に付加価値をおくかを考えると選ぶ際の助けになるだろう。

ちなみに私はDuolinguoがシンプルで使いやすいと思っている。ただし、Duolingo Pushのように特定の時間になると「勉強の時間だよ」と連絡がくる機能はうざったいので使用していない。基本は時間を意識せず、モチベーションがあるときはあるだけ勉強し続けるのが自分の語学スタイルだからだ。

個別言語向け語学アプリ

個別言語向けの語学アプリの環境もざまざまだ。Hello!Chineseのように中国語だけに特化したものやAyo!のようにアルメニア語を集中して覚えるためのアプリなど個別言語的なアプリも存在している。話者の環境を反映していると伺えるものもある。例えばヘブライ語学習アプリはユダヤ人の言語模様を反映してか、ロシア語で勉強できるアプリがより目につくのが大きな特徴である。

草々


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