百年探しつづけた犬【SF短編小説】
「こんにちは」
僕はその声を聞いて、目を開けた。目線を下げて、足元を見下ろす。透明な壁の向こうに、空色の小さな巻き毛の塊がある。記憶ライブラリで照合する……『犬』。
巻き毛の中から、焦茶色の眼が見えた。丸くて艶々に光るその眼は僕の目を見つめる。僕も見つめ返し、発声してみる。
「こんにちは」
巻き毛の塊は尻尾をちょこちょこ動かして、その場でぴょんと小さく跳ねた。“それ”から、また声が聞こえた。
「良かった。起動した。君にはわたしが見える?どう見える?」
僕は答えた。