
2019年度 下関市立大学 前期日程(全学科共通 小論文「論述(長文理解)」 模範解答
問1
ものごとの意味や価値などは人によって異なる以上、それらによって構成される世界も、主観的なものである。人間は他者と主観的な世界の意味や価値を言葉によってやりとりし、それにより世界が間主観性を帯びる。ところで、各人が同一の客観的世界に住んでいるという共同幻想をもったほうが、言葉のやりとりが円滑になる。だから、あたかも世界が人間主観とは無関係に、自立して存在するかのような客観的世界観が成立する。(196字)
問2
現代において、専門知はその専門性ゆえにタコツボ化しているが、それにたいして現実社会の問題は多分野にまたがる複合的な問題である。それゆえ、単一分野の専門家では、対処しきれない。それにたいして、アマチュアの知は専門知の限界を補うことができる。なぜなら、専門家が自分の専門領域の狭い細々とした前例にとらわれ、凝り固まった考え方をする傾向があるのにたいして、アマチュアは枠にとらわれず柔軟な考え方と常識的発想のもと、ものごとを全体として捉えることができるからである。このような知のほうが、現代の社会問題に対応するのに適している。
さまざまな社会問題を解決するためのアマチュアの知の活用法として、私は各人がSNSで積極的に発言できる社会をめざすべきだと考える。なぜなら、多様な社会問題に解法を見出すためには、できるだけ多くの人間の多様な知恵と経験を社会で共有することが有効だからである。そのために、SNSほど適したメディアはない。たしかに最近、SNS上での理性を欠いた言行が社会的に問題視されている。しかしだからといって、アマチュアの知の集約場としてのSNSの役割と価値そのものが否定されたわけではない。この問題はSNSを使用する個人のリテラシーの問題であり、それには教育で対処できるはずである。したがって私は、多岐にわたる社会問題を解決するためにも、多くの人が自由に意見を発信できるSNSの利点を強調したい。(587字)