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2020年度 新潟大学 法学部 前期試験 小論文 模範解答


 民間企業において定年制を廃止することのメリットとして、ベテラン従業員の知識やネットワークを活かすことができる点が挙げられる。というのも、定年制が廃止されれば、長年企業に貢献した優秀な人材を手放す必要がなくなり、長く勤めてきた人材ならではのノウハウや経験、顧客とのつながりを継続して活用できるからである。また、人材採用・教育コストを削減できる点もメリットである。なぜなら、定年退職者がいなくなれば、新たな採用の機会が減少し、若手への教育コストを抑えることが可能になるからである。
 他方で、定年制廃止のデメリットとしては、人件費が増加する点がある。というのも、従来の年功序列制を基本としたまま定年を廃止すれば、高齢の社員に多くの賃金が支払われ続け、経営を圧迫することになるからだ。また、定年による退職がなくなれば社内に占める高年齢者の割合が増え、同時に新卒の採用枠が少なくなり、「世代交代が進まない」 、「新しい技術や考え方が浸透しづらい」等の理由によって若手の士気が下がり、若者が離職するケースが想定される。
 それでは、以上のようなメリットやデメリットを勘案した場合、法律により全ての民間企業に対して定年制の廃止を義務付けることは妥当だろうか。私は民間企業において定年制を廃止することは妥当であると考える。なぜなら、定年制の廃止が検討されるようになった要因は、我が国における少子化の影響により、現役世代の労働力を確保しづらくなっているからである。したがって、今後、労働力を確保するためには、定年制を廃止し、現在働いている人にもっと長く働き続けてもらう必要が出てきたといえる。
 しかし、定年制の廃止を義務付ける場合には、上記のようなデメリットを解消する必要がある。そのために、定年制の廃止の際は、同時に昇進システムや賃金制度の見直しも必要になる。たとえば、「一定の年齢で役職から外す」、「業務内容の変更に伴う減給(昇給)」、「成果報酬制を導入する」などの制度の改変が不可欠となる。したがって、各年齢層の従業員の意見も取り入れ、定年制を廃止した後の制度設計を十分に行う必要があると考える。つまり、定年制を廃止後も、各世代の従業員に期待している役割を説明し、年齢に関係なくすべての従業員が活躍できる環境を整えていく必要があるといえる。

 

 

 

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