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2022年度 新潟大学 法学部 前期試験 小論文 模範解答


 
 政府・自治体による結婚支援への取り組みへの賛成意見として、男女の出会いの機会をつくるなどの結婚支援を実施することによって、婚姻後に夫婦となった男女であれば子どもを設ける確度が高まるため、少子化対策という行政課題に対し一定の効果が期待されるという意見が考えられる。
 他方で、反対意見については以下のような意見が考えられる。第一に、結婚支援が少子化対策として直接的効果を持つのか不明であるという点が挙げられる。というのも、男女が結婚して夫婦となっても、必ずしもその夫婦が子どもをもうけるとは限らないからだ。第二に、公的な組織である行政が、結婚という個人の価値観にもとづく活動や営みに対して干渉することが問題視されうるからである。なぜなら、結婚をするかしないかは個人の価値観や判断に委ねられるべきものであるにもかかわらず、行政が結婚支援を行うことは、少子化対策を目的としているとはいえ「結婚を可能な限りするべきもの」と判断し、個人の自由を抑圧しかねないからである。
 それでは上記のような賛成、反対の意見を勘案した場合、政府や自治体が結婚支援について取り組むことの是非について、どのように考えることができるだろうか。私は、政府や自治体が結婚支援に取り組むことは妥当ではないと考える。なぜなら、結婚支援によって男女が結婚をしても、その夫婦が必ずしも子どもをもうけるとは限らないからだ。さらに現代社会においては子どもを産み育てようと夫婦が考えても、子どもの養育には経済的・金銭的な負担が大きいことや、職場の理解や支援が不足していることを理由に、出産・育児に消極的になる諸要因があるからだ。
 たしかに政府や自治体は現行制度においても、子育て支援について各種施策を展開している。しかし、政府予算における子ども・子育て支援に対する公的支出の割合は、欧米先進諸国と比較するとその水準は下位にあり、我が国における出産・育児の環境はいまだ十分ではないことがうかがえる。
 したがって、本質的に少子化対策を目的とするならば、結婚支援だけではなく、子どもを産み育てやすい環境の整備を行うために、子育て支援や共働き世帯などへの支援をこれまで以上に拡充させるべきだと考える。さらに、少子化つまり人々が子どもを生まない原因を厳密に特定し、直接的かつ根本的な解決を図る努力を行うことが不可欠だと考える。(978字)

 

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