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2019年度 下関市立大学 前期日程(全学科共通 小論文「論述(図表理解)」 模範解答
設問1(300字制限)
図1からは、1999年以降、再分配所得の格差はほぼ横ばいであるのに対して、当初所得の格差は一貫して上昇傾向にあることが読み取れる。図2によれば、99年から2014年のあいだに、400万円未満の低所得層の割合が増大し、1,000万円以上の高所得層が半減している。以上から、変化は全体としての貧富の差ではなく、各所得層の構成にあり、とくに低所得層の割合の増加が顕著であることがわかる。また、図3では、相対的貧困率は一貫して上昇傾向であるのに対して、貧困線は97年を境に下降している。図4からは、高齢女性に貧困者が多いことがわかる。以上から、日本では90年代後半より、貧困化が進行し、その中心は高齢女性であることが読み取れる。(295字)
設問2(500字制限)
図5からわかることは、高齢層を除いて、日本の再分配政策が機能しているとは言いがたいことである。図6を見ると、再分配機能の大部分は社会保障制度に負っており、税制度が十分機能していないことがわかる。ここに日本の再分配政策の問題点があると言えるだろう。
今後の再分配政策として、私は貧困層への所得税の課税を撤廃するべきであると考える。なぜなら、設問1の解答で触れたとおり近年の日本では貧困層が拡大しつつあり、貧困層対策こそ日本の再分配政策にとって喫緊の課題となっているからである。それにもかかわらず、現状この層にも所得税が5%課されている。たしかに、課税撤廃は大胆な政策かもしれないが、しかしそれは十分実現可能だと思われる。というのも、この層の少ない所得に課せられた5%という税金を廃止したところで、税制全体に与える影響は小さいだろうからである。日々を生きることさえ大変な人々の生活を救うという緊急性、重大性に鑑みれば、むしろリスクは少ないと考えるべきである。必要となる財源は、高所得者への累進性強化によって十分賄えるだろう。したがって、私は貧困層への所得税課税を撤廃するべきだと考える。(490字)