(基本解説005)「国民主権」には2つの重要な意味がある
(政治や法律の基本解説)
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国民主権とは …
「国民が最終権力者」という意味です
そこに不安はないのでしょうか
フランス革命の例を見てみましょう
まず主権の意味をつかむ
日本国憲法の三大原則の1つである「国民主権」。それはとても大事なものとされています。まず国民主権の「主権」とは「国の政治を最終的に決定する力」を言います。決定する力とは国家権力そのものとも言えますね。また国家権力は「統治権」とも呼ばれ、立法権や行政権、司法権などの国家権力を総称します。
政治についての最終決定権
「国の政治についての最終決定権」を持つ主権は、国の統治のあり方を最終的に決定する権力、または権威を意味し、国民主権という場合の主権は、このことを意味します。つまり国民が最終権力者ということです。
増税に賛成した覚えはないのに
日本国憲法には、「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」と書かれています。たとえば、消費税増税の例で考えると、私たちは直接賛成した覚えもないですし、反対した覚えもないですよね。でも消費税を上げることを決めた「国会議員」を選んだのは私たち日本国民です。ですから、政治を「最終的に」決める力を持っているのは国民である、という理屈が成り立ちます。これを「間接民主制」と呼びます。
国民主権を振りかざしたフランス革命
憲法にある平和や人権、国民主権は素晴らしいものだという。でも本当にそうでしょうか。フランスでは王様が贅沢をしたり、勝手に増税したりと悪政が続いていました。それでついにギロチンで国王の首を刎ねてしまったのです。当時のフランスでは王様を殺してしまえ、という過激派が勢力を強めていました。そう、フランス革命です。聖職者が国民主権をとなえ、実際に国民が「最高の力」をふるい王様の首を斬り、さらには多くの国民を反革命分子とレッテルを貼り大虐殺をやったのです。フランス国内で数万人もの人がギロチンで処刑されたとも言われています。
大虐殺を起こした国民主権
いつの間にか王様の首を切り、そして王妃マリー・アントワネットを殺しその後、30万人もの人々を大虐殺しました。その原動力となったのが、国民主権というイデオロギーでした。特権階級を倒せ、フランスは国民みんなのものだ。主権は国民にあるのだと。本当に主権を行使したのがフランス革命だったのです。
国民主権の暴走を止められない
なぜ王様の首を切らなきゃいけなかったのか、理由もはっきりさせず、曖昧な裁判で殺してしまいました。国民が思うこと、それが善であるということになってしまいました。国民がそれを望むか望まないか、それだけが大事だと。この国民主権の暴走を止める力は、もうどこにもなかったのです。みんながそう思っているから正しい、それが国民主権の怖さでもあるのです。
国民主権には二つの意味がある
フランス革命は特別なケースであり、日本では起こり得ないと思う方もいるでしょう。国民主権には二つの意味があります。ひとつは自分の国の政治なのだから人任せにしないで、きちんと考え、正しい政治家を選ぼう、そういう真っ当な政治の原則です。もうひとつは国民が望めば何をやってもいいという怖さ、これも一面です。「支配者を打倒しよう」というイデオロギーが表裏としてある、とても危険な側面もあることを頭の中に入れておくことも必要です。国民主権によってよくなることもあれば、悪くなることもあるということです。
参考文献
『フランス革命の省察』エドマンド・バーク
『図説フランス革命』河出書房新社
『フランス革命』現代書館
『確認憲法用語300』大沢秀介 成文堂
『本当は恐ろしい日本国憲法』長谷川三千子・倉山満 ビジネス社
など
1,538字