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「Pointer」を始めた理由。

とある沿線のマンションの一室。
片付いたリビングで、パパと息子が食事をしている。

パパ:どうだ、美味しいか? 息子よ。
息子:……ママいつ帰ってくるの?
パパ:来週かな。
息子:…………
パパ:嫌な顔をするな! 仕方ないだろ! 出張なんだから!
息子:ねえパパ。
パパ:どうした息子よ。
息子:パパってふだん何してんの?
パパ:どうしたんだいきなり。
息子:作文の宿題が出たんだ。「お父さんの仕事」っていうテーマで。
パパ:そんなの適当に書けばいいだろ。
息子:そうなんだけど、ちょっと気になっちゃって。
パパ:てかいまどき、大丈夫かそのテーマ。
息子:そういえば、パパが毎日どこで働いてるのか、聞いたことなかったなって。
パパ:そうか。お前もそんな年になったんだな……。
息子:ギャンブルで稼いでるとかじゃないよね?
パパ:ちがうわ! ギャンブルで家族養えたら、それもすごいけどな!
息子:じゃあ、何してるの?
パパ:実はお父さんな、ポインターっていう会社を経営しているんだ。
息子:ポインター? 会社?
パパ:要は、社長だ。
息子:ふーん(なんか胡散臭いな)……。
パパ:(あれ、反応薄いな……)

挿絵_1


息子:どんな会社なの?
パパ:うん。説明が難しいんだけどな。業者を紹介したり、補助金の申請を手伝ったり、いろんなサービスで飲食店の経営をサポートする会社だ。
息子:ふーん(よくわかんない)……。
パパ:(やっぱ反応薄いな……)
息子:なんで会社を始めようと思ったの?
パパ:うーん。実はな、お父さん、昔、レストランを経営してたことがあったんだ。
息子:レストラン?
パパ:そうだ。本格イタリアンだ。
息子:パパ、料理できないのに?
パパ:息子よ、レストランで働いてるのはシェフだけじゃないんだぞ。
息子:じゃあ、何してたの?
パパ:そりゃあ、料理を作ること以外、全部だよ。
息子:全部? 全部って?
パパ:接客、レジ打ち、オープン前準備、片付け、メニュー表作り、食べログ・ぐるなび・ホットペッパーの更新、予約管理、給料計算、シフト管理、仕入れの支払い、販促企画、面接対応……

挿絵_2

息子:なんか、大変そう。
パパ:大変だったよ! 一日4時間睡眠だったし、数えたら、月の労働時間が570時間だったこともある。月に570時間ってことは、
息子:一日19時間。
パパ:そのとおり(計算早いな)。睡眠・食事・排泄を除けば、ほぼ休みなしで働いていたことになる。
息子:よく死ななかったね……
パパ:体重は7キロ減ったし、耳鳴りが収まらなかったな。
息子:それで、そのお店はどうなったの?
パパ:つぶれた。
息子:え?
パパ:つぶれた。一年で。
息子:……そんなに頑張って働いてたのに?
パパ:そうなんだよ。
息子:もしかしてパパって無能?
パパ:うっ(グサッ)。確かにパパはレストラン経営には向いてなかったかもしれない。けどな、そもそも飲食店の経営を維持するのってめちゃくちゃ大変なんだよ!
息子:そうなの?
パパ:こないだ行ったファミレス、閉店してただろ。
息子:あ、そういえば。最近オープンしたばっかなのにね。
パパ:そんなに味も悪くなかっただろ?
息子:うん。なんでつぶれちゃったんだろ。
パパ:飲食業は生存競争がとくに激しい業界なんだ。新しい飲食店がどんどんオープンしていく一方で、その7割が3年以内に閉店し、10年後も営業を続けているお店はわずか1割と言われている。
息子:どうしてそんなにはやくつぶれちゃうの?
パパ:それはな、飲食店を始めるオーナーの多くが、経営的な側面を軽視しているからだよ。
息子:経営的な側面って?
パパ:要は「人・モノ・お金」の管理だ。飲食店も、会社であることには変わりないから、やるべきことはいっぱいある。帳簿をつけないといけないし、広告を練らないと近所のライバル店に勝てない。社労士を付けないと法に適した労働環境が守れない。
息子:おいしい料理を作ってるだけじゃダメなんだね。
パパ:そう、その通り。しかし、これらを一人で全部完璧にやろうとするのは不可能に近い。
息子:それをやろうとした結果がパパだと。
パパ:そういうことだ。
息子:人を雇うとかしなかったの?
パパ:時間もツテも余裕もなかったからなあ。今でも考えるよ。もしもあのとき、管理業務を任せられる人が一人でもいれば、あそこまで大変なことにはならなかったんじゃないか……。
息子:後の祭りだね。
パパ:しかも、これはパパに限った話ではないぞ。
息子:そうなの? 
パパ:飲食を始める人たちは、食に関してはプロかもしれないが、経営に関してはまるで素人である場合が多いからな。自慢の料理を提供したくてお店を始めたはずが、管理業務に時間とエネルギーを消費されて、肝心の食に集中できないでいる。こういったお店が多いのが飲食業の実態だ。
息子:飲食店がよくブラックって言われてるのも、それが原因?
パパ:その通り。財政がひっ迫すれば、従業員の労働環境にも手が回らなくなってくる。そもそも労基法についてちゃんと知っているかも怪しい。実際、「居酒屋 過労死」で検索すればたくさんの記事がヒットする。
息子:某チェーン店のインタビューで、従業員がげっそりした顔で「私は幸せです」って答えてるのを見たよ。
パパ:そ、そうか(何を見てるんだ?)。このまま労働環境の悪化が続けば、やがて飲食業がどんどんスラム化していくだろう。お父さんはそれをどうにかしたい。一度飲食店経営を経験した自分だから何かできるんじゃないかと思う。だからこうして、飲食店をサポートする会社を経営してるわけだ。
息子:ポインターだっけ?
パパ:そう。ポインターでは、企画・マーケティング、広報・広告、財務会計、人事労務、法務、システムなど、あらゆる経営管理業務サービスを飲食店経営者に向けて提供していく。経営方針に悩む事業者には、新しい経営モデルを提案する事業も行う。オプションサービスとして、国や自治体が実施している補助金制度の申請サポートも行う。

挿絵_3

息子:ちゃんと働いてるんだね。
パパ:当たり前だろ! お前たちを養うためなんだから。
息子:よくわかったよ。これで宿題が出来そう。
パパ:それはよかった。
息子:じゃあ早速、書こうかな。
パパ:待て待て、まだ料理が手付かずじゃないか。
息子:……パパ、これさ、本当に味見しながら作った?
パパ:したさ、もちろん。完璧な味付けだろ?
息子:(パパがお店つぶした理由、経営以前のところにあるかも……)

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文:エマダ
挿絵:わたせあつみ

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