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鐘の音
そろそろ秋も深まってきて、半袖も寒さを感じる。仕事を辞めて、新しいことを始めて、間も無く一年。自律神経を取り戻せたんやろか。
万博公園をうろちょろ。暇を持て余しながら、自律神経を緑で整える。歩いてたら、いろんなものがまだまだ残存してておもろい。
「平和の鐘なんかあるんやね」
世界中のコインを溶かして創られた、
平和への祈りを込めたと言われる。
「金溶かしたら勿体無いやん」
これやから大阪人は,と思うねんけど、
ほんまにそう思う。
「金と童が合体して鐘やけど、なんでガキって字はいってんねやろな」
「ガキて読むなや」
「子供が鳴らしたらうるさいやん。カンカンカンカン叩きよるで」
調べたら、目に入れ墨を入れられた奴隷が重い袋を運んでたっていうのが成り立ちらしい。なんかこわっ。全然そんな賑やかなものちゃうやん。
あの鐘を鳴らすのは俺か、俺以外かとか言い出す。
「お前以外や。お前ならしたら多分事務所呼ばれるで」
「でもさ、ピンポンダッシュみたいやん?」
鐘のことをピンポンやと思ってるあたり、頭が童やなっていうのはさておき、鳴らしてみたい気持ちはわかる。やったらあかんって言われたらやってまう。戦争もしたらあかんってわかってるけど、すなよっていうから、してまうんか?
他に手段あらへんのかと思いながら、戦争始まった時にアレ鳴らしたら、終わらへんのか。
「逆ちゃう?始まりの合図感あるやん。」
「お前それプロレスの見過ぎ」
「それも戦いやん。」
喫茶店に入り,コーヒーとタバコで溜息をついてる。
「毎日これやったらええのにな。」
「鐘みたいなんチーンて鳴らしたら店員さん来てくれはるだけやで。」
「知らんがな。」
「知ってるやろ」
「来ると思うなよ」
「来いよ。サボるな」
「お前今サボってるやん」
こんな押し問答を聞いたら、はいはいそこまでーーーって誰か止める音鳴らしてくれんねんけど。青春やなあ。
音が鳴ったら止まるんやったら、あの鐘鳴らさなあかんやん。展示してる場合ちゃうやん。知らんけど。
あと二年で万博が来てしまう。それまでにあの鐘を鳴らすのは誰や。