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今週の詩(処暑)│此處で人間は大きくなるのだ(山村暮鳥)
こんにちは。詩のソムリエです。
今週のはじまりは、禾乃登(こくもの すなわちみのる)。
このあいだ、近くをぐるっとドライブをしたときに、稲穂の波を目にしました。黄金色の稲がびっしりと埋め尽くす田んぼの姿は、ほんとうに美しい…
惚れ惚れとしてしまいます。
海や山とは異なる美しさです。
今週の詩は、実りの秋の訪れにちなんでこちら。明治・大正期の詩人 山村暮鳥(やまむら・ぼちょう 1884-1924)の「此處(ここ)で人間は大きくなるのだ」という詩です。
此處で人間は大きくなるのだ
とつとつと脈うつ大地
その上で農夫はなにかかんがへる
此(こ)の脈搏(みゃくはく)をその鍬尖(しゅうせん)に感じてゐるか
雨あがり
しつとりとしめつた大地の感觸(かんしょく)
あまりに大きな此の幸福
どつしりとからだも太れ
見ろ
なんといふ豐富さだ
此の青青とした穀物畑
このふつくりとした畝畝
このひろびろとしたところで人間は大きくなるのだ
おお脈うち脈うつ大地の健康
大槌(おおつち)で打つやうな美である
うへ山の棚田(初秋) © rikky_photography クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
とてもおおらかで、のびのびと歌われた詩です。朗読すると、日本語のリズムも鷹揚としていて堂々と美しい。
「しっとり」「どっしり」「ふっくり」…そんなオノマトペとともになつかしい風景が広がり、続く「このひろびろとしたところで人間は大きくなるのだ」というフレーズには、地平が切り開かれるような爽やかさがあります。
この詩がおさめられている『風は草木にささやいた』(青空文庫で読めます)には、種や農夫の歌がたくさんあり、素朴で力づよい「生きる」ということを考えさせられます。
山村暮鳥についてはこの記事をどうぞ。
こんな詩を読むと、「暮鳥は健康そのものなんだな〜」みたいなイメージを抱いてしまいますが、現実はその逆…。
この詩が書かれた1918年頃は、多くの同時代の詩人を死に追いやった結核にかかっており、熱意をもって励んでいた牧師業も辞職まで追い詰められる頃です。
藝術の上では、人の魂はどこまでも自由なんだな…と思わせられる詩でもあります。(現実ではなし得ないことを言語上の表現でつくりあげることをSymbolic Compensationと言い、サミュエル・イチエ・ハヤカワ⇨寺山修司が関心をもって論に用いました)
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