【あなたに贈る詩】癒やしてくれる詩
SNSで「どんな詩が読みたいですか?」と呼びかけたところ、リクエストをたくさんいただいたので少しずつお答えします!
▼これまでのリクエストはこちらから
「癒やしてくれる詩」をオーダーしてくれたのは、ちょっと年下の女友だち、梢ちゃん。
梢ちゃん、元気ですか?「癒やしてくれる詩」がご入用とのことで。
疲れてるんじゃないの〜働きすぎじゃないの〜って心配になっちゃった。
でも、そういうときもあるよね。
働く女子、すきですよ。
わたしもバリバリ会社で働いていた時期によく読んでいた詩を紹介しますね。あの頃は、14連勤(日帰り出張2回)とかしてたな…(白目)
木々の霊たちのこえに耳をすます
宮沢賢治の「牧歌」です。賢治は農学校教師時代に、生徒のために劇を書いて演出していました。これは、1924年夏に上演した「種山ヶ原の夜」という劇のなかで、木々の霊が登場して唄う歌です。
手嶌葵さんの美しい歌声とどうぞ。
種山ヶ原の、雲のながで刈った草は、
どごさが置いだが、忘れだ、雨ぁふる
種山ヶ原のせ高のすすぎあざみ、
刈ってで置ぎわすれで雨ふる、雨ぁふる
種山ヶ原の 霧のながで刈った草さ
わすれ草も入ったが、忘れだ 雨ぁふる
種山ヶ原の置ぎわすれの草のたばは
どごがの長嶺で ぬれでる ぬれでる
種山ヶ原の 長嶺さ置いだ草は
雲に持ってがれで 無ぐなる 無ぐなる
種山ヶ原の 長嶺の上の雲を
ぼっかげで見れば 無ぐなる無ぐなる
これはたった三つの音(ドレミ)でできているごく単純なメロディーで、どこかなつかしい気持ちになるよね。
さいしょにこの詩を読んだ時、「忘れすぎじゃね?」と率直に思ったのですが、木々の霊の歌だからね、にんげんが深く考えてもいけません。
ふわ〜っと「どごさが置いだが、忘れだ、雨ふる、雨ぁふる…」と歌っていると、すーっと今日あったことを忘れ、すやすや眠れる気がします。
自然との深い一体感
種山ヶ原は、賢治お気に入りの場所で、しょっちゅう歩き回っていたそう。
それにしても、どうしてこんな詩が書けるのだろうとふしぎに思います。
この詩を読んでいて、「意味」らしきものを探ることはむずかしい。そして逆に、「意味」のない詩を書こうということもむずかしい。
19世紀以降のヨーロッパ詩のキーワードとして「万物照応(コレスポンダンス)」という「自然との一体感」があるのですが、これは「自然」と「人」とが線引されたヨーロッパの考え。宮沢賢治の「牧歌」を読むと、もはや「自然」と「存在」との境界線はとけあい、まざりあい、歌いあってきたうたごころを感じます。コレスポンダンス以前の、太古の響きあい。
このとき、人間にしかわからない「意味」なんてどうでもよくなる。
まさに、自然のなかにいる心地がする詩です。
わたしたち、いつも脳みそを使いすぎだもの。
おうちに帰ったら、体をあたためて、詩で癒やされてください。
クナイプのバスソルト、ホップアンドバレリアンの香りもおすすめだよ〜。
じゃ、またね。zoom女子会、またやろう!