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【読書感想文】木嶋佳苗100日裁判傍聴記 北原みのり ~女の幸せを考える~

凄い話もあるものです。
木嶋佳苗という女。

多くの多くの男から金をむしり取り。3人を殺害し。
なんの反省もなく。
死刑求刑をされ。
獄中結婚を3度している。
そんな女が。。。けして美人じゃない。

①被害者たち

先ずは。この本を読んで、登場する木嶋佳苗に絡む男たちに仇名をつけて分類してみました。

<殺された男たち>
大出:微笑みを浮かべて亡くなった男。41歳。470万円。2009年8月5日死亡
寺田:寡黙で殺された後も警察にすら無視された男。53歳。1850万円。2009年1月31日死亡 
安藤:老いらくの恋に落ちた男。80歳。270万円。2009.5月15日死亡

<金を取られた男たち>
K氏:疑いながら騙される男。47歳。190万円
M氏:笑ってごまかす男。49歳。130万円
Y氏:母の遺産を振込み命拾いをした男。46歳。450万円。
F氏:金を取られたが幸せに死んだ男 70歳。7380万。2007年8月31日死亡(自然死)

<詐欺未遂で終わった男たち>
B氏:お金を払わず後悔した男。56歳。130万円未遂
E氏:優柔不断で助かった男。38歳。70万円未遂
N氏:遊び慣れた通りすがりの男。53歳。140万円未遂
※↑は法廷に出廷協力した人達だけで、他にも多くの男たちがいるだろう。

<交際相手>
A氏:初めての男。 1993年~1998年
T氏:年下の男。1998年~不明。
S氏:10年間、本名すら知らなかった本命の男。1998年~逮捕


②女力を考える。男の数だけのサスペンスドラマ。


これだけの男達と短い期間に同時進行でつきあい。騙し金を奪い。殺す。
サスペンスドラマの名作を20作品くらいをくっつけたようなリアル。
この男たちの人数だけの小説は描ける。
一人一人がドラマなのだ。

簡単に寝る事で脅して金を取る男もいれば、
寝ない事で心を奪い金をとる男もいる。
その男を見る女力。

介護の仕事をしているの。
料理教室に通っているの。
ピアノのはプロ級なの。
実家はお金持ちなの。
そんな典型的詐欺師に男たちは簡単に騙される。
その簡単に騙される男を見抜く女力。

それでいてけして美人ではない。
その不美人すら利用する女力。

法廷で美人な女記者が
「なんであんなデブのブスの女に男は骨抜きになって。私に男ができないの!」
と怒っていたという描写が面白い。
男なんて。自分の感情を露わにし、ぶつけてくる女をそうそう受け入れられやしないのだ。
男だって。自分を受け入れてくれる女を探している。
この記者のように感情的な美人より、木嶋佳苗のようにブスでも受け入れてくれる女の方がモテる。
それは僕も男であるから分る。
また、ブスであればブスなんだから、こんな僕のような男でも受け入れてくれるだろうというバイアスもかかる。
それも僕も男であるから分る。
それを木嶋佳苗は冷静に知っている。それが女力。

すごい女だ。

③女の幸せを考える。木嶋劇場

木嶋佳苗は法廷でも綺麗に着飾り。
木嶋佳苗を拘束した縄を持つ警官二人が、まるでお付きの人に見える。
時に色っぽく。時に冷淡に答弁するその声は美しく。
時に微笑み。時に涙を演技し。
木嶋佳苗劇場は男たちを魅了し。
女である筆者ですらその声にしぐさに魅了される。

ちぐはぐな証言を堂々とし続け。
結果、実証に乏しいまま、状況証拠を積み上げての死刑判決である。
その堂々とした木嶋佳苗劇場にまるで反省の色はない。

「売春は自分を大切にしない行為だ」と人は言うが
木嶋佳苗は一度たりとも自分を粗末にした事はないのだ。

愛とはなにか。男とは。女とは。結婚とは。セックスとは。金とは。
そんな価値観の根底を木嶋佳苗は揺さぶる。

「売春は自分を大切にしない行為だ」と彼女を叩く女達は多いだろうが
「それであなたは幸せなの?」
と木嶋佳苗は世の中の女達を逆に挑発している。

女の幸せとはなんなのだろう?

③僕も魅了されているのか。もっともっと知りたい。

もっともっと、この本に止まらず木嶋佳苗という女を追ってみたい。
この本の出版後に3度の獄中結婚があるのだから。
その男たちもいずれ追ってみたい。

木嶋佳苗の拘置所日記
http://blog.livedoor.jp/kijimakanae/

木嶋佳苗の直筆が見れる。
きっちりとした筆跡だ。
みんな達筆だと言う。
この直筆での手紙で心を奪われた男も多いと聞く。
でも、僕は苦手な字だ。
筆跡は手相や人相よりその人を表すと思う。
上手く表現できいのだが、なるほど木嶋佳苗らしい字だ。

木嶋佳苗という女。
実に興味深い。

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