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note25 2024年も終わりますね⑤

 前回に続いて「今年の」ドラマを振り返ります。今回はNETFLIXを中心に。スルーしていたり、まだ途中のものもあるのですが、一応今年の振り返りということで書いてみます。

 話題になったところでは『私のトナカイちゃん』。たしかに、これは見入ってしまいました。全体的な長さというか量もちょうど良く、これ以上長くなると、ほんとうにツラくなってしまったと思いました。中盤に、どうしてこうなってしまったのかが、相手側ではなく、自分の側の問題として描かれているのが、素晴らしかったですね。そして、最後まで「彼」の気持ちの方をしっかり描くところが、このテーマを扱う作品では、なかなかないと思いました。そして、それがなぜ描けたのかといえば、実際にこの内容を経験したのが「彼」だから、ということになるのでしょう。ドキュメンタリーではないけれど、実際の「彼」を撮るというのが、新しいなと思いました。
 この経験を作品に「する」と決めた時点で勝ちだとは思うのですが、「これはウケる!」と思っただけではなく、こういう状況になってしまったことに、自分と相手の「なにか」を感じていたのだと思います。だから、作品になる必然が生まれたのではないかと。そして、それが傑作になったのではないかと。

 続いて『エリック』。はじめはなかなか入り込めなかったのですが、徐々にハマっていきました。それは「この」ベネディクト・カンバーバッチにハマっていくということで、ストーリーがどうなるか、というより、ベネディクト・カンバーバッチ(ヴィンセント)がどうなるのかが気になって、後半はドキドキして観ました。この時代のニューヨークの街並みや地下鉄の中の雰囲気なども含めて、好きでしたね。
 街並みでいえば、『リプリー』のイタリアも良かったですね。最初のニューヨークの場面も良かったですが、その後のイタリアのそれぞれの街並みはほんとうに美しく撮られていましたね。今作はかなり凝った撮影が多く、あえて視線をズラしてくる感じというか、「そこを、そんなに丁寧に撮るんだ」というカットがたくさんあって見惚れてしまいました。そして、アンドリュー・スコットはやっぱり素晴らしかったですね。途中、長く感じてしまうところもありましたが、最後の方は「バレないんだよね?」と思わず言ってしまうくらい、ドキドキしながら観ました。というのも、映画版と違ったところが結構あるので、結末も違ってくるのかな、と変なドキドキがあったのです。
 この「別の人の人生を生きる」というテーマ(設定)の作品はどうしても惹かれてしまうものがあります。原作も映画も面白かった『怒り』や『ある男』、小説でいえば、宮部みゆきの『火車』。そして、そうした作品の最高峰は桐野夏生の『とめどなく囁く』だと自分は思っているのですが、なぜ、そうした作品に惹かれてしまうのか、いずれ、書いてみたいと思っています。

 街並みつながりで書くと、『エミリー、パリへ行く』はシーズン4になりましたね。始まった時から、いくらなんでもフランス人はあんな人ばかりではないし、パリの描き方もお約束な感じばかりではないか、と指摘されていたように思います。で、実際に観ると、たしかにそう思ってしまうところもあり、だけど、そこが逆に新鮮というか、わかりやすく面白いところでもあって、「新シリーズ開始」のアナウンスが出ると楽しみになるんですよね。さすがにシーズン4にもなると、新鮮味はなくなってきたなぁと思ったりもしましたが、やっぱり楽しく観ました。
 そして、あまり興味がなかったパリ・オリンピックですが、あのなんとも不思議な開幕式や、無理やりな感じの街中の競技場を観ていると、なぜか、『エミリー、パリへ行く』を思い出したんですよね。ベタなフランスのすごさを見せられた感じというか。ちなみに、NETFLIXの今年の映画で『セーヌ川の水面の下に』というのがありましたが、これは悉く期待を、良い意味で裏切ってくれる作品で、オリンピックが始まる前に観れて、なぜか、気持ちが落ち着きました。

 『自由研究には向かない殺人』はエマ・マイヤーズが可愛くて、無事に完走。原作では続きもあるみたいなので、今後も映像化されるのか、気になります。そして、夏からの話題は『地面師たち』でしたね。実際にあった事件をベースに原作が書かれ、それを映像にした作品ということですが、惹きつけるものがあり、一気に観てしまいました。犯罪もので、地上波でできないもの、ということになると過激な描写が話題になるのですが、それに関していえば、「もっとやってほしかったなぁ」というのがぼくの感想で、それよりも人間の欲深さから生まれる詐欺という行為の変な説得力に興味を持ちました。お金をつくるための土地というもの。どうして、あんなに価値が出てしまうのでしょう。そして、それに関係していく者たちはどうしてみんな、おかしくなってしまうのでしょう。仕事をする、働くとはなにか、ということを考えさせられました。そして、そのおかしくなっていくもの……言葉にすると、野心とか、向上心とかになるのかな……それにハリソン山中の「欲」はつながるものなのでしょうか。そして、つながっていけば、逆に欲が濁ってしまうのではないか、と気になりました。

 もうひとつ、話題になったのが『極悪女王』でしたね。これはNETFLIX、今年のベストのひとつですね。ぼくは小学4年生の頃にプロレスにハマり、大学生頃までかなり熱心なプロレスファンでした。女子プロはそこまで追いかけていなかったので、記憶と照らし合わせながら観るというまではいかなかったのですが、「昭和という時代のプロレス」というものが伝わってきて、なつかしい想いに浸りながら観ました。それは「昔は良かった」的なものとはちがう、なんていうのかな……あの時代ならではのいかがわしさというか、そのいかがわしさがわかっていながら夢中になっていた、自分の中の不思議な興奮みたいなものが蘇ってくる感覚です。
 子どもだったけれど、わかっていたのです。プロレスのいかがわしさ、変な共犯関係、不思議なエンターテインメントとしての興奮。「プロレスは真剣勝負ではない」「八百長だ」みたいなことはずっと言われていましたが、逆に言えば、だからこそ「すごい」のがプロレスです。実際に筋書きがあるとしても、だとしたら、「なぜ、あんなことになるのか」というのが、プロレスにはあって、そうした「ヤバさ」にファンはハマっていたのだと思います。そして、この魅力がわからない人との会話は永久に交わることがないのです。

 『極悪女王』はそうした部分が絶妙に描かれていました。興行的な筋書きがあったとしても、その中の登場人物になることがそもそも難しいこと。なれたとしても、それが他のレスラーやファンに認められないと意味がないこと。たとえ、自分がハマっていったとしても、どこまで筋書きに誠実でいればいいのか、わからなくなってしまうこと。そして、どこからともなく、あらゆる筋書きを破綻させる「なにか」が生まれてしまうこと。そうしたすべてが5話の中で描かれていて、素晴らしいと思いました。
 そして、プロレスにとって重要なのが、ファンです。いま書いたことにファンが巻き込まれていくことがプロレスにとっては大事なことなのです。『極悪女王』ではファンとの交流などが描かれているところはほとんどなかったのですが、家族、会社の人間、マスコミなどを通して、レスラーがファンにとって特別な存在になっていくことが描かれていました。そこも「うまいな」と思ったし、なにより会場の熱気が見事に伝わってきて、感動しました。あれは「あの当時のプロレスの会場」でした。なので、エキストラのみんなも「すごい!」ということになりますね。

 じつは、ぼくは「どうしてプロレスが好きだったのか」をずっと考えていて、いつか、ここ(note)に書きたいと思っていて、ずっと下書きをしているのですが、なかなかまとまらないのです。また、同時にそれは「どうしてプロレスを好きじゃなくなったのか」ということにつながっています。そのことを考えては書いて、途中でやめてはまた始めて、というのを繰り返しています。この『極悪女王』を観て、やっぱり書かなくては、と改めて思いました。来年のnoteでは発表できるようにしたいです。(小さな目標)

 そして、今年のNETFLIXのベストはもうひとつあって、それは『リンカーン弁護士』です。あまり話題になっていなかったような気がするのですが、シーズン3も、ぼくにとっての大好物案件でした。それぞれのキャラがよりハッキリしてきて、事件(物語)の展開もそのキャラにかかっているところが楽しかったんですよね。最近のドラマ(映画も)に多い、凝った複雑なストーリーとはちがう真っすぐに進んでいくストーリーもイイなと。一応、話題が逸れたり、新たな登場人物も絡んできたりはするのですが、だいたい次の回ではどうなるかが見えてくるというところも、単純に楽しめて好きでした。そして……夜中に地上波で、映画版の『リンカーン弁護士』の再放送があって、それも観たのですが、マコノヒーのミッキー・ハラ―も良くて(吹き替えだったけれど、それも良かった)、このシリーズは、いつか原作も読みたいなと思いました。

 それと、製作のクレジットをみて、「これって、デイビッド・E・ケリーなんだよな」と思って(前回取り上げた『推定無罪』も)、そうしたら、無性に『アリー my LOVE』が観たくなってしまって、探したら、Disney+にあったので観てしまいました。
 これがまた、長い……。だけど、いろいろと気づきというか、思うところもあったので、いずれ、そのことについても書きたいと思います。(好きなものを好きと書きたい! アリーっぽく)


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武田こうじ
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