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ずるいコピー

自転車で、チェーンの弁当屋のまえをびゅんっと通りすぎる。

その瞬間、店頭にかかげられたのぼりのコピーが目に入った。

「さんま、焼けました」

あ、ずるい。それはずるいでしょう。

反射的にそう思いつつ、わたしは頭の中が「さんま、焼けました」のイメージでいっぱいになってしまう。

脂ののったさんまが網の上でじゅうじゅうと美味しい音を立て、その横でうちわをパタパタと仰ぐおじさん。もちろん下は炭火で、くぐもった黒色の炭は時折かあっ、と透明な赤色に輝く。

じゅうっっ。

網の上でそっとさんまをひっくり返すと、脂がこぼれ落ちてさ。

「さんま、焼けました」。

その9文字にとりつかれたわたし。

ずるい、ずるい、と繰り返し思いつつ、脳内でさんまをじゅうじゅう焼きながら、自転車をこいだ。

「さんま、焼けました」の何がそんなにずるいのか。

たった9文字に、ここまで朝の貴重な脳エネルギーを持っていかれるのも納得がいかなかったので、落ち着いて考察してみることにした。

まずはパッと見で近そうなものから比較してゆきたい。

たとえば同じようなポジションとしてすぐに思いつくのは、あれだ。

「おでん、はじめました」

「冷やし中華、はじめました」

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どうでもいいことをすごくしんけんに書いています。

<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

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