歳を重ねても、ありのままでーエージェント物語S1E1
エージェント物語、今回から各話ごとに勝手にレビューを書き連ねていきます。話の感想あり、好きなセリフあり、なんでもありのレビューです。ほんの少しネタバレあるかもですが、ご了承くださいな。
記念すべき初回のゲストはセシル・ド・フランス。ベルギー出身の彼女は17の歳でパリへ移り、女優としてのキャリアをスタートした、フランスを代表する大女優です。
(Cécile de Franceオフィシャルサイトより引用)
彼女が直面するのは「年齢の壁」。
有名ハリウッド監督の次作の主演選考に最終まで残るも、年齢を理由に採用を見送られてしまうセシル。ASK事務所が何とか交渉を重ねたものの、製作側が出した答えは、「美容整形」という交換条件付きのオファーでした。目の前にあるキャリアと自分のポリシーとどう折り合いをつけるか、セシルが葛藤する様子を描いています。
1、シーンを超えたセリフのキャッチボール
ハリウッドからの不採用連絡を受けたセシルのマネージャー、ガブリエル。
意気消沈した様子でまず事務所にその報告をすると、同僚も驚きます。
期待が大きかっただけに重い空気が流れる中、どんな時も動じない長老アルレットが、切れ味のあるトーンでこんな返しをします。
「セシルが歳を取りすぎているだって?何の役よ、まさか子役だったの?」
端的に驚きを表しつつ、しっかりと皮肉を交える返し。クスっと視聴者の笑いをしっかりと誘います。
一方、ひょんなことから不採用の通知を知り落胆するセシル。街を歩いていると、ファンから声をかけられます。
ファン:「セシルですか?」
セシル:「いいえ、セシルの母です。」
こんな投げやりに答えるのは、「私はもう若くない、もう年齢で役を断られる歳になってしまった」という彼女の心境からでしょう。
また、これは完全に個人的な深読み解釈ですが、このシーン、先程のアルレットの「子役なの?」に呼応する形で構成されているのでは、と思えてなりません。全く別のシーンではありますが、まるでアルレットの投げかけた言葉を拾うようなキャッチボールからも脚本の良さが滲み出ているなぁと感じました。
2、伏線回収、抜かりなく
熟慮を重ね、マチアスからの助言も後押しし、シワ消しのボトックス注入をするために整形美容外科のアポをとったセシル。しかし自分の肌に手を加えることへの迷いを拭いきれず、結局施術を受けずに帰ってきてしまいます。
アポへの付き添いをしてくれたガブリエルの元に戻った際の二人の会話も、一見非常にさらっとしていますが、実はしっかりとエピソードを締め括る大事な役目をはたしています。
セシル:「(私が施術を受けないことを見通していたなんて)なかなかの役者ね、あなたも。」
ガブリエル:「そんなことないよ、(施術を受けるつもりなんてそもそもないはずなのに、今日ここまで来た)君の方こそやっぱり大物役者だ。」
セシル:「私は不死身(の役)にはならないのね〜」
()内はあくまで私の解釈の域を出ませんが、この「不死身にならない」のセリフ、ちゃんと序盤に張られていた伏線を回収しています。
なんせ、セシルが逃した映画のタイトルは「不死身の復習鬼」。
はは〜ん。だからこのドラマ、2度目も3度目も面白いんです。
美容整形を受けないことで主演としての不採用が確定となったセシルですが、その役を演じないだけではなく、自分自身は不死身ではなく時の流れとともに歳を重ね、自然体を美しさを維持していく存在なんだ、という意味も重ね合わせているようでした。
3、セドリック・クラピシュ監督
補足情報ですが、今回のエージェント物語はセドリック・クラピシュ監督です。ソルボンヌ大学に進学後、ニューヨーク大学で映画学の修士号を取得した、コテコテのエリート映画監督です。
セシルがとあるインタビューで彼の今回の作品に出演するに際し、こんなコメントを述べていました。
「彼は私のことをよく理解しているし、私もオファーを受けるにあたって、面白い、笑いを誘うような展開にしてほしい、と頼んだの。
女優本人を深く知っているからこそ、より本物っぽい演出とコメディの要素が折り混ざった作品が仕上がるのだと思うわ。
本当に彼は優れた観察者であると思う。」
監督という立場だからこそ、セドリックはおそらく俳優自身のことを本人以上に性格や癖を理解してるのでしょう。
やっぱり、フランスの著名な俳優たちを一挙に知るにはもってこいのドラマなのかもしれません。
ではでは〜
えむけい