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平均年齢83.5歳のゲストと字幕の話ーエージェント物語S1E2

エージェント物語、シーズン1エピソード2。

セシル・ド・フランスに次ぐゲストは、歌手兼女優のリンヌ・ルノーと女優のフランソワーズ・ファビアンです。前回の「年齢」をテーマにしたエピソードから、皮肉をこめた繋がりなのか、二人の平均年齢はドラマ公開当時(2015年)は83.5歳!!そんな二人がとある映画の役を取り合う様子を描いたのが今回のエピソード2です。

(France 2公式サイトより引用)

一方は歌手として(リンヌ、左側)また一方は女優として(フランソワーズ、右側)、それぞれの分野で揺るぎない地位を確立させてきた二人が、実は互いにライバルとして意識し、かつ犬猿の仲である、という設定で話が展開されます。

ちなみにこの設定は、実はドラマの中だけの設定だそうで、後日リンヌがとあるラジオ番組で

「フランソワーズとの共演はとても楽しかったわ!(中略)私たちの役の会話は自虐も交えた内容になっているからこそ、笑えるのよ。」

と述べています。番組制作側ももちろん不仲説は完全否定。本人たちの性格は本物でも、状況設定はやはりドラマなりの演出が入っているようです。

字幕の話

ところでこのnoteを執筆を機に全エピソードを見返しているのですが、改めて実感するのは、主人公たちの「早口」具合。書きおこしたら長いであろうセリフも、あっという間に会話のキャッチボールの中に組み込まれていきます。

ただここで一つ残念なのが字幕の制限。

一般に、字幕をつける際の文字数制限はセリフ1秒に対して4文字以内、かつ一度に表示される字幕は20字までが基本です。限られた文字数でドラマの雰囲気を壊さずに翻訳することは、なかなか安易なことではありません。

今回から、字幕の事情で拾えきれなかった、もしくは流れを重視したゆえに全く違う意訳になったセリフをちょこちょこ紹介していきたいと思います。

例えば、フランソワーズの主演が決まっていた映画の出演を降りようとアンドレアに打ち明けたシーンのアンドレアのこんなセリフ。

原文)Ouais mais il y a des gens autour de vous, qui comptent sur ce film, voilà, qui se sont battus depuis des années pour qu'il existe.

直訳)この映画に賭けているたくさんの人がいるんですよ、この映画が制作されるために、何年も戦ってきた人たちがいるんです!

字幕)人々はこの映画にー(シーンの切替)ー賭けています。何年もかけて準備(戦ってきた、の意訳)

アンドレアの仕事に対する姿勢は、まさに戦場に向かう戦士そのもの。文脈上「準備」が適切であっても、「戦う」ニュアンスが少し欲しかったなぁと。身を粉にしてきた、でも良いかもしれません。制作まで多くのハードルを越えてきたであろうことを想像させる言葉が欲しかったです。

また、別のシーンのソフィアのセリフ。事務所がバタついている中、ガブリエルがソフィアに雑用を頼んだシーンです。ソフィアもバタバタと鳴り止まない電話対応に追われながらの返答。

原文)Moi, je me fais une manucure comme vous voyez.

直訳)確かに見てわかる通り、私今マニキュア塗ってる真っ最中ですもんね。

意訳)私はヒマ?(って言いたいってことかしら?)

この返しはまさにザ・フランス人、と感じずにはいられませんでした。ストレートに言わないまでも、あからさまに相手にわかるトーンで伝える皮肉。「見てわかる通り」とあえて付け加えることで、しっかり、刺していますね。

やっぱり映画やドラマの完全な翻訳って難しいです。訳し方一つで、全くセリフの印象が変わってしまいますからね。

ではでは〜

えむけい








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