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あなたを許すことは一生ないよ

自分には叔父がいる、母親の弟。すごく良い人だと思う、バイクとかエアガンとか長渕剛とかが好きな「昔ヤンチャしてました」みたいな感じの人だけど。

でも、叔父は酒癖が悪い。どうやら酔うと被害妄想が激しくなるようで、必ずと言っていいほど自分の父親と喧嘩する。被害妄想が始まってしまうと、もう何を言っても無駄。母親がなだめても意味がない。世界の全てが敵に見えるらしい。

例年、自分と弟と両親、そして叔父の五人で新年を迎えていた。そして毎年、叔父は怒っていた。それでも口論で済めば良かったのだが、一昨年の大晦日は違った、父親と取っ組み合いを始めたのだ。

喧嘩を止めようとした母親は、その時に膝を怪我した。今でも膝を曲げて座れないらしい。叔父が暴れるので家族総出で叔父を押さえつけた。「何やってんだお前は!」と弟が怒っているのを見て悲しくなった。結局、警察を呼んで叔父を連れて行ってもらった。新年早々何をやっているんだろうと空しくなった。

次の日、荷物を取りに叔父がうちに来た。酒は抜けても怒りは収まっていないようだった。父親の悪態をついて「二度と来ねえからな!」と言って出て行った。その日、禁煙した父親が煙草を吸っている姿を見た。

母親に叔父と絶縁してほしいと言った。自分は実家を出ていたから、「絶縁しないなら二度と帰省しない」とまで言った。母親は困った顔で笑うだけだった。

しばらくは、本気で叔父なんて死んでしまえばいいと思っていた。人の死を願うなんて許されることではない、それは分かっている。でも、どうしても許せなかった。

GWに帰省したとき、叔父が家に来た。結局、あの後もちょくちょく家に来ているらしい。「まあ、そうなるだろうな」と思った、母親は優しい人だから。それでも、あれから父親とは会っていないということを聞いてホッとした。

叔父が若干気まずそうにしながらも、今まで通りに接してきたので、自分も今まで通りに接した。憎悪を抱えながら、笑顔を貼り付けて。

被害妄想に囚われた叔父にとって、あの時、確かに自分たちは敵だったのだ。だから、叔父の怒りは叔父の中では正当化されたもので、事実はどうであれ、その怒りは叔父にとっての真実だった。

でも、どんな理由があれ、人に暴力を振るう人を自分は許さない。

叔父は良い人だ。小さい頃はお年玉をくれたし、正月のご馳走は叔父がお金を出してくれるし、墓参りだってちゃんとする。それでも、自分は叔父のことを一生許せないよ、ごめんね。

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ぽこまる(外村ぽこ)
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