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一流AI PMにSaaSプロダクト戦略を考えてもらった -マネーフォワード、freee、LayerX-

SaaS業界では、コンパウンドスタートアップやマルチプロダクト戦略など、複数のプロダクトを組み合わせて、業務をデータで繋げることで顧客体験を向上し、競争優位性を高める動きが注目を集めています。
また、バーティカルSaaS業界ではグロースバイアウトといった"SaaS企業が運営会社を買収し、自社SaaSを会社に適用してグロースさせる"といった成長戦略もありますが、これも一種のプロダクト戦略と考えられます。

SaaS企業の規模が拡大していくにつれ、単一のSaaSプロダクトだけでは成長が頭打ちになりやすく、どのようにプロダクトを展開していくか、数年先を見据えた戦略が重要になってきます。

今回は、会計・経理のSaaSプロダクトや周辺領域サービスを複数展開している「マネーフォワード」「freee(フリー)」「LayerX(バクラク)」について、生成AIによって生み出された一流のPM(プロダクトマネージャー)に、各企業のプロダクト戦略を考えてもらいました。


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AI PMにプロダクト戦略を立案してもらうまでのステップ

AI PMには以下のようなステップでプロダクト戦略を立案してもらいました。

1. 各SaaS企業のサービスサイトのテキスト情報をインプット

マネーフォワード、freee、LayerXの各サービスサイトのテキストデータをインプット情報として使用しました。

  • インプットした各社サービスサイト

    • マネーフォワード:31サイト(MFクラウド会計、MFクラウド請求書、
      MFクラウド勤怠など)

    • freee:32サイト(freee会計、freee販売、freee人事労務、freee資金調達など)

    • LayerX:8サイト(バクラク経費精算、バクラク請求書受取、バクラクビジネスカード、バクラク勤怠(リリース前の告知サイト情報)

2. 既存プロダクトの分析と今後のマルチプロダクト戦略の立案

生成AIモデルは、Gemini 1.5 Proを使用し、実行環境はGoogle AI Studioです。プロンプトの概要は以下の通りです。

  1. SaaSプロダクトごとの主な特徴の分析

  2. 1. で挙げた各プロダクトをSaaS企業ごとに集約し、マルチプロダクト観点で統合的に考えた時の特徴分析

  3. 競合企業と比較した時の、各SaaS企業の強み・弱み分析

  4. 3年先を見据えた時、さらに競合優位性を持つために、従来の延長線上では考えつかない革新的なマルチプロダクト戦略の立案

  5. 4. で立案したプロダクト戦略を実現するための具体的なプロダクト機能要件

既存プロダクト戦略の分析

実際に生成AIによって生み出されたPMのプロダクト分析の結果を見ていきます。結果は、一部著者が補足・要約しています。

マネーフォワード

マルチプロダクト戦略の特徴

バックオフィス業務全般をカバーする豊富なサービス群と、それらを連携させたシームレスな業務フローの構築が特徴。
個人事業主から中小企業、上場企業まで、あらゆる規模の企業に対応するサービスを展開しており、顧客の成長段階に合わせて必要なサービスを追加していくことが可能。特に、法改正対応を重視しており、安心して利用できる点も強み。

競合に対する強み・弱み

freee、LayerXに対する強み
・バックオフィス業務を網羅するサービスラインナップの豊富さ。
・個人事業主から中小企業、上場企業まで、あらゆる規模の顧客に合わせたサービス提供が可能。

freeeに対する弱み
UI/UXや個別サービスの機能面でやや劣る点がある。

LayerXに対する弱み
・AI技術の活用度はLayerXに比べて低い。
・特定の業務に特化したサービスでは、LayerXに劣る部分もある。

freee

マルチプロダクト戦略の特徴

会計ソフトを中心に、人事労務、販売管理、会社設立など、バックオフィス業務全般を効率化するサービスを網羅的に提供。ユーザーフレンドリーなインターフェースと自動化機能により、業務効率化を実現。自社の他サービスとの連携によるさらなる効率化を促進する戦略をとっている。

競合に対する強み・弱み

マネーフォワードに対する強み
・UI/UXの洗練度。使いやすさについて、ユーザーからの評価が高い。
・会計ソフトの機能面では、マネーフォワードよりも充実している部分が多い。

マネーフォワードに対する弱み
サービスラインナップと顧客規模の幅広さで劣る。特に専門性の高いサービスが少ない。

LayerXに対する強み
・会計ソフトを中心に、バックオフィス業務全体を効率化できるサービス連携の強さ。
・中小企業向けサービスに強みがあり、顧客基盤が大きい。

LayerXに対する弱み
・AI技術の活用度はLayerXに比べて低い。
・特定業務に特化したサービスやUI/UXの洗練度ではLayerXに劣る部分もある。

LayerX(バクラク)

マルチプロダクト戦略の特徴

経費精算、請求書処理、法人カード、ワークフロー、電子帳簿保存など、企業の支出管理業務に対して、AIを活用した業務効率化サービス群を展開。
操作性やセキュリティなど、ユーザー体験の向上を目指している点が特徴。

競合に対する強み・弱み

マネーフォワード、freeeに対する強み
・AI技術を駆使した高い自動化率と処理スピード。
・特定の業務に特化したUI/UXの洗練度。

マネーフォワード、freeeに対する弱み
サービスラインナップと顧客基盤の幅広さ。

3年後を見据えたマルチプロダクト戦略の立案

マネーフォワード

従来のバックオフィス業務効率化にとどまらず、中小企業の創業から成長、事業承継までを包括的に支援する「ビジネスライフサイクルプラットフォーム」へと進化します。このプラットフォームを通じて、中小企業にとってなくてはならない存在となり、日本経済の活性化に貢献することを目指します。

①事業成長支援サービス
顧客の事業ステージに合わせた、マーケティング支援、営業支援、採用支援、人材育成支援などを提供します。具体的には、マネーフォワードクラウド会計のデータ分析から、顧客の事業課題や成長可能性をAIが分析し、最適なサービスを提案・仲介します。さらに、顧客企業同士のビジネスマッチングや協業を促進する機能も提供し、新たなビジネスチャンス創出を支援します。

②ファイナンシャルウェルネス支援
従業員のファイナンシャルリテラシー向上を支援するサービスを提供し、従業員満足度向上に貢献します。具体的には、マネーフォワードMEと連携し、従業員向けの金融教育コンテンツや資産形成相談サービスを提供します。また、従業員向け福利厚生の一環として、家計簿アプリのプレミアム機能を無料提供したり、優待金利で住宅ローンを提供するなどの金融サービスを展開します。

オンデマンド専門家ネットワーク
顧客のニーズに応じて、弁護士、税理士、社労士、ファイナンシャルプランナーなど、様々な専門家とオンラインでマッチングできるサービスを提供します。顧客は、必要な時に必要な専門家からアドバイスを受けることができ、事業の課題解決を迅速に進めることができます。また、専門家にとっては、新たな顧客獲得の機会となり、双方にとってメリットのあるプラットフォームを構築します。

①事業成長支援サービスについては、現在の会計・人事労務ソフトウェアというポジションから顧客の事業成功により深く入り込む展開です。
また、マネーフォワードは、すでにインバウンドマーケティング支援(BOXIL SaaS)、インサイドセールス支援(BALES)も展開しているので、顧客基盤を活かしたクロスセルで実現性も高そうです。
ここに、採用管理SaaSやタレントマネジメントSaaSを付け加えることでTAMの拡大も狙える戦略です。

②ファイナンシャルウェルネス支援の戦略は、toC向け家計簿アプリ(マネーフォワードME)を既存顧客の福利厚生サービスとして提供し、顧客内の従業員満足度を高めるという発想が面白いです(福利厚生サービスとしての導入事例記事があったので既に存在するかもしれません)。
福利厚生サービスとして提供する場合、マネーフォワードMEとして利益が出なくても、住宅ローンや保険の提案に繋げることで、そこでマネタイズが可能です。

③オンデマンド専門家ネットワークは、顧客が士業・専門家(税理士、社労士、弁護士など)から的確なアドバイスを受けやすくなることで、顧客企業は事業により専念できます。そうなると、マネーフォワードクラウドと顧客との結びつきが今以上に強固になるでしょう。
また、専門家からも紹介料としてマネタイズすることも考えられます。
マッチングを加速するためには、顧客データだけではなく、士業・専門家の専門性や得意領域など、士業・専門家データもますます必要性が増すでしょう。

freee

従来の「会計ソフト」という枠組みを超え、中小企業を「会計」から解放し、創造性を最大限に発揮できる「ビジネスオートメーションプラットフォーム」を目指します。

会計データに基づく自動化
freee会計で蓄積された会計データを活用し、業務プロセス全体を自動化します。受発注管理、在庫管理、請求書発行、入金消込、給与計算など、あらゆる業務をシームレスに連携させ、AIによって自動化することで、顧客は煩雑なバックオフィス業務から解放され、創造的な活動に集中することができます。

スモールビジネス特化型AIアシスタント
中小企業特有のニーズに対応した、専門性の高いAIアシスタントを開発します。税務相談、労務相談、経営相談など、これまで専門家に頼っていた業務をAIが代行することで、顧客は低コストで高品質なサポートを受けることができます。また、AIアシスタントは、顧客の行動パターンを学習し、パーソナライズされたアドバイスや提案を提供します。

③データ駆動型ビジネス支援
顧客のデータを活用した新たなビジネス支援サービスを提供します。具体的には、顧客の売上データ、顧客データ、従業員データなどを分析し、顧客セグメンテーション、販売促進施策提案、人材採用支援などを実施します。さらに、外部データとの連携も強化し、より精度の高い分析と予測を実現します。

freeeのプロダクト戦略は、マネーフォワードとは異なっていて、AIによる業務自動化、省人化を推し進める方向です。
バックオフィス業務を自動化することで、顧客はより創造性が高く、競争優位性を築く業務に注力できる狙いです。

また、中小企業からのQ&Aデータを用いて、中小企業特有のニーズに対応したAIアシスタントを開発することで、顧客は低コストで法対応などのアドバイスを受けることができます。
そして、士業・専門家も、より専門性が高く、高付加価値な業務に時間を使うことができます。

③データ駆動型ビジネス支援については、freee販売の販売管理データによって、商品や在庫といったモノの動きに関する詳細なデータも手に入るので、いつ、何を、どれくらい仕入れるか、販売するかといった計画立案を支援できます。
また、勤怠管理データや売上・利益データによって、どこに人員が不足・充足しているかが分かり、人材採用支援などに活用できそうです。

LayerX(バクラク)

現状の支出管理サービスを基盤に、AIとデータ分析力を駆使し、企業の支出管理をあらゆる側面から最適化する「インテリジェント支出管理プラットフォーム」へと進化します。

支出データに基づく経営インサイトの提供
バクラクシリーズで蓄積された支出データを、AIを用いて多角的に分析し、企業の経営課題を明らかにします。例えば、部門別・プロジェクト別の支出状況を可視化し、コスト削減の余地を分析、あるいは支出トレンドを予測することで、予算編成の精度向上を支援します。単なる支出管理ツールではなく、データに基づいた経営インサイトを提供することで、顧客企業の意思決定をサポートします。

②支出管理業務の完全自動化
AIによって経費精算、請求書処理、法人カード管理などの支出管理業務を完全に自動化します。AIによる自動仕訳、自動承認、自動支払機能などを実装することで、人為的なミスや遅延をなくし、業務効率を最大化します。さらに、不正利用検知機能を強化し、コンプライアンスリスクの低減にも貢献します。

サプライチェーンファイナンスとの統合
バクラク請求書発行・受取機能と連携し、サプライチェーンファイナンスサービスを提供します。顧客企業とその取引先企業の双方がバクラクを利用することで、請求書データに基づいたリアルタイムな資金調達や支払を可能にします。これにより、顧客企業は資金繰りを改善し、取引先企業は早期の資金回収を実現できます。

①支出データに基づく経営インサイトの提供は、以前、LayarX福島氏が語っていた「データで購買をアシストする」と似た方向性です。
さらに、コスト削減余地まで提案してくれると、支出管理から経営管理にまで深く入り込むことができそうです。

バクラクシリーズはAI-UXが良いとの評判を良く聞きますが、AIによる更なる自動化が戦略として提案されています。AI PMによると、AI-UXの磨き込みが競争優位性を保つ一つの戦略と考えたのかもしれません。

バクラクは、すでに請求書関連サービスを展開していて、債権データを持っているため、③サプライチェーンファイナンスとの相性も良いと思います。これによって、顧客企業は資金繰り手段が増え、LayerXにはお金のデータが更に蓄積されます。
LayerXは、顧客にとって最適な資金調達プランを提案したり、資金調達の手続きをサポートすることで、資金調達サービスとしてのポジションを強固にできます。

最後に

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

SaaS企業のプロダクト訴求テキストデータを使って、今後のプロダクト戦略をAIに提案してもらいました。
すごくワクワクするような戦略ストーリーのアイデアを出してくれるわけではなさそうですが、アイデア発散の手段としては使える印象を持ちました。

ビジネス分析って面白いですね!
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