見出し画像

【世界の観光・旅行市場動向】日本と海外のインバウンドデータ比較

2016年の訪日外国人旅行者数が2400万人となり、みずほ総合研究所は2017年にその数が2800万人になると予想しています。2020年の東京オリンピック開催を控え、ますます注目が高まる日本のインバウンド市場ですが、世界の観光・旅行市場動向はどのようなになっているのでしょうか。今回は日本と世界各国のインバウンドに関するデータを比較してみました。

日本だけでなく世界全体で成長する観光・旅行市場

訪日外国人数は2011年までは緩やかに増えていましたが、そこから’12年に840万人、’13年に1040万人、’14年に1340万人、’15年に1970万人、’16年に2400万人とわずか5年で4倍ほどに急増しました。’09年と’11年に減少しているのは、それぞれリーマンショックと東日本大震災の影響が大きいです。

一方、世界全体の海外旅行者数は1995年の5億2500万人から12億3500万人(2016年)と、約20年で2.4倍ほどまで増加しています。訪日外国人数だけが注目されがちですが、世界全体でも観光・旅行市場が活発になっています。

スライド2

対前年比成長率も訪日外国人数は2011年以降、20~50%と驚異的な成長率が目立ちますが、世界の海外旅行者数は1995年から2016年まで毎年平均4%程度の安定的な成長率を続けています。

スライド3

訪日外国人急増を支えるアジア近隣諸国の旅行者数増加

国籍別の訪日外国人旅行者数の推移を見ると、中国、韓国、台湾が急増しており、この増加が訪日外国人旅行者数の全体をけん引していると言っても良さそうです。また、他に増加が目立つのも香港やタイといったアジアの国です。

スライド4

訪日外国人旅行者数の国籍別比率の上位ランキング国を世界地図にプロットしても、上位ランキング国が東南アジアに集まっていることが分かります。またトップ5ヶ国中、4ヶ国は日本にさらに近い位置にあり、4ヶ国の合計だけで訪日外国人旅行者数の73.1%を占めます。

訪日外国人旅行者数の増加要因として、①アジア地域の高い経済成長、②円安による日本観光・旅行の割安感、③LCC(格安航空会社)の普及、④ビザ取得要件規制の緩和が挙げられますが、これらのデータを見るとアジア地域の経済成長が大きく寄与しているように考えられます。また、国土が広いので一概には言えませんが、日本に近いロシアの訪日旅行者数は2016年に54,838人(0.23%)しかいないため、施策などでもう少し呼び込む余地があるかもしれません。

スライド5

海外旅行者数受入数ランキング

世界観光機関(UNWTO)のWorld Tourism Barometerの調査によると、フランスを筆頭にスペイン、イタリア、ドイツ、イギリスなどヨーロッパ諸国のランクインが目立ちます。アジアは中国、タイ、香港、マレーシア、日本が入っており、日本は世界で16位です。

スライド6

海外旅行者受入数トップ20の成長率を比較すると、2010年から2015年にかけて日本の成長率は129.5%となっており、2位のタイ(成長率:89.1%)に大差をつけていることが分かります。その他には’10年から’15年にかけて、トルコ、メキシコ、ロシア、ギリシャ、サウジアラビアが40%以上の成長を遂げています。

スライド7

国際インバウント観光収入ランキング

国際観光収入は、2015年にアメリカが2040億ドル、2位の中国が1140億ドル、3のスペインが560億ドルと大きな開きがありますが、4位以降は比較的僅差が続いています。日本は13位で250億ドルとなっています。

アジアは、中国、タイ、香港、マカオ、日本、インド、マレーシア、シンガポールの8ヶ国がトップ20にランクインしており、インバウンド観光客1人当たりの観光収入が比較的多いと考えられます。逆にフランス、スペイン、イタリアなどのヨーロッパ諸国はインバウンド旅行者数は多いものの観光収入が比較的低めなので、1人当たりの観光収入が少ないと推測できます。

スライド8

国際観光収入トップ20のうち、2005年から2010年にかけて成長著しいのが、UAE(284.1%)、マカオ(185.6%)、シンガポール(147.0%)、香港(115.8%)、マレーシア(112.0%)です。2010年から2015年にかけては、中国(149.1%)、タイ(121.6%)、日本(89.3%)、UAE(87.0%)、香港(62.8%)の順になっています。

いずれもアジア諸国のランクインが目立っており、アジアのインバウンド市場が成長してきていることが分かります。

スライド9

インバウンド観光客1人当たりの観光収入ランキング(2015年)

海外旅行者1人当たりの観光収入は、物価の影響もありますが、オーストラリアが3,951ドルで2位アメリカ(2,639ドル)を大きく引き離しています。日本は1,266ドルで10位にランクインしています。インバウンド観光客受入数1位のフランスはトップ20圏外になっています。

スライド10

まだまだ成長余地のある日本インバウンド市場

国際観光収入ランキングトップ20について、その観光収入がGDPに占める割合を見ると、マカオが67.8%とダントツで高くなっており、マカオの経済がいかにインバウンド観光収入に依存しているかが分かります。マカオの歳入はカジノ税収入が大きな割合を占めるため、海外観光・旅行客によるカジノ収入で経済が成り立っていると言えそうです。

日本のGDPに占める国際観光収入の割合は0.6%で、この値はトップ20ヶ国のうち最下位になります。19位のインドでも1.0%あるため、日本のインバウンド市場はまだまだ成長の余地があるのではないかと考えられます。

スライド11

まとめ

・訪日外国人旅行者数だけでなく、世界全体で海外旅行者数は年々増加している。
・訪日外国人急増はアジア近隣諸国の旅行者数増加によるもの。
・海外旅行者受入数はヨーロッパ諸国が多い。
・国際インバウント観光収入はアジア勢が好調。
・インバウンド観光客1人当たりの観光収入はオーストラリアが1位。
・日本のインバウンド市場はまだまだ成長の余地がありそう。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

企業やマーケット関連の話など、ツイッターでもつぶやいてますので、フォローして頂けると喜びます。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?