《ESC社発 デコモニ・システム》の先進性を一席 (エッセイ)
昨日、またまた、かなり昔に書いたショートショートを投稿しました。
本エッセイは、その内容(というか、ビジネスモデルのアイディア)に関わる、少々自画自賛的エッセイです。スミマセン。
このため、その話「みんなディスプレイ」の最後に、
《初出:Materials Integration, Vol. 15, No.2 (2002)》
と余計なメモ書きを残してあります。
この話は、おなじみエレクトロニック・ショート・サーキット(ESC)社が開発した《額モニター》、通称《デコモニ》を使ったビジネスモデルと、それが引き起こすドタバタを描いたものです。
《デコモニ》とは額に装着する薄型ディスプレイで、これを主に電車やバスで通勤・通学するモニター契約者に無料配布し、無音声・テロップ付きの番組+CMを流すシステムです。
ディスプレイには小型カメラが組み込まれており、画像分析から番組視聴の延べ時間を算出し、モニター契約者に歩合給を支払う仕組みとなっています。
《デコモニ》にチャンネルはついておらず、カメラに映る視聴者の性別や年齢、それに表情を分析して、番組は自動的に変わる仕掛けになっています。
このビジネスモデルは、アフィリエイトブログでPV数や広告クリック数に応じて収益をあげるシステムに類似しています。この話が発表された2002年2月には、そうしたビジネスは既に存在していたようです。
ただ、《デコモニ》にはカメラがついており、ディスプレイを覗き込む《視聴者》の《属性》を分析して、提供する番組とCMを最適化しています。
これは、《ターゲティング広告》という手法ですが、Yahoo! JAPANが顧客の行動履歴を元に、顧客の興味関心を推測し、ターゲットを絞ってインターネット広告配信を行う《行動ターゲティング》のネットワーク配信サービスを開始したのが、2007年2月です。
《デコモニ》は《行動》でなく、《属性》で番組を選びますので、2007年のYahoo! JAPANより遅れている、と思われるかもしれません。
しかし、それはあくまでも《初期値》であり、《視聴者》の《表情》、つまり、楽しんでいるか、つまらなそうか、などを分析して、自動的に内容を変更していくのです。これは、おそらく現代にもまだ存在しない、相当先進的な《個別ターゲティング戦略》です。
なお、このショートショート掲載から1年半後に、サントリーから、液晶モニターのついたヘルメットによるプロモーションがアナウンスされます。
“液晶ヘルメット”をかぶった人間広告
サントリーは、液晶ディスプレイを取り付けたヘルメットをかぶって歩く「モニターマン」を使ったプロモーションを展開する。イベント会場などの人ごみの中でPR活動を行う新しい試みだ。
13型の両面液晶ディスプレイを上部に搭載したヘルメットをかぶり、映像データを送出するメディアステーションを背負って歩く“人間メディア”。これまで胸部に電光掲示板を装着した人間メディアはあったが、ヘルメットと液晶ディスプレイ一体型のシステムは国内初だという。
まず7月5日、国立霞ヶ丘競技場で開かれるサッカーのJリーグ公式試合(清水エスパルス-横浜F・マリノス)に導入。モニターマン5人が「モルツ」「ペプシツイスト」などサントリー製品のCFを映しながら場内を歩く。
ぜひ、下記ニュースサイトに掲載された、「モニターマン」の写真を見てください。
サントリーさん、ごめんなさい。
でも、この姿、ちょっと《マヌケ》っぽくないですか?
それは、今の私たちが、iPhone(2007年1月発表、6月米国発売)もiPad(2010年1月発表、4月米国発売)も、既に知っているからです。
通信機能を持つ小型ディスプレイ、《デコモニ》を2002年以前に発想するのは、けっこう《トンで》いる、と思うのですが。
(そうです。誰もホメてくれないから、自分でホメているのです)
さらに、《デコモニ》のカメラが取得する情報は、たいへん貴重なデータです。
主人公が額から《デコモニ》を外して自ら番組を自分で見ていると、周りの《デコモニ》モニターから集まった映像情報により、警告を受けます。
それだけでなく、ESC社はカメラから得た情報を、まず間違いなく、あちこちに販売していますね。
おそらく、問い詰められれば、
「痴漢など、車内での犯罪防止に一役買おうと……」
と《いいカッコ》するでしょうが、この会社のことです。何に使うか、わかったものではありません。
Googleがカメラ付きのスマートグラスを発売したのは2012年ですが、ESC社はその10年前に、既に同じ機能をデコモニに搭載していたことになります。これもスゴイ!
(Again, 誰もホメてくれないから、自分でホメているのです)
なお、上記のGoogle Glassは、「撮られる側」のプライバシー保護の問題により、2015年1月に一般への販売を中止しています。
──と、我田引水、自画自賛の話になってしまいましたが、おそらく、ここまで読まれたあなたは言うでしょう:
『そんな昔に思いついていたのなら、自分で開発して、自分でビジネスを始めりゃあ良かったじゃないの!』
そのとおりです。チャンチャン!
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