心に『テッド・ラッソ』
『テッド・ラッソ』を見終えた。
なんなら2周目に突入している。
すばらしかった。
主人公・テッドが、サッカーチームの監督となるところから物語は始まるが、ただのスポーツドラマではない。
コメディであり、人情ものであり、セラピーですらある。
とにかく徹底して「人間」「生き方」を描き、問い、語りかけ耳を傾けてはやさしく寄り添ってくれる物語だ。
見終えたあとも、登場人物たちが心の中に居つづけて、日常のふとした瞬間に彼・彼女らの顔や言葉が、思い出される。
この春、このドラマがわたしの目に光を届けてくれているし、わたしの心の炎に薪をくべてくれている。
心身の緊張がほどけ、やわらぎ、そしてみなぎる。
称賛し敬愛する気持ちをもっとうまく書きたいのだけれど、うまく書けない。
とにかく、すばらしいドラマだった。
きっかけは星野源さんだった。
この↑2023年6月13日の源さんのオールナイトニッポンで『テッド・ラッソ』が紹介されているのだが、そのオープニングトークがほんとうに、ほんとうに素敵なのでぜひ聞いてみてほしい。
これを聴いたあとに『テッド・ラッソ』を見て、そして同作を見終えたあとにまたこれを聴く、というようなことをしている。
わたしにとっても、『テッド・ラッソ』は「一生の作品」になるのだろうなという予感がしている。
今回はその感想を記録しておきたい。
大事なのは勝敗じゃない
テッドが首尾一貫して言っていたのが、これだ。
見進めていくと、これを言っているのはテッドだけではない。
登場する何組かの親子の間でもくり返し交わされる価値観だ。
大事なのは、勝敗や成功でなく、その人自身が幸せかどうか。
「あきらめる」とか「負けてもいい」とか「頑張らない」とも決定的にちがう。
最善をつくして、まちがっても何度でもやり直して、最高の状態でいること、希望を捨てずに、信じること。
もうね、3シーズン分を見てこの価値観を目に耳に心に染み込ませて、染み込ませて、そんな尊い時間をすごして、あたしゃ今キラッキラしているよ。
傷の連鎖
印象的だったのは、これ。
このセリフこそシーズン3終盤のものだが、実は最初からずっとこの傷の連鎖が描かれていた。
過去の傷ついた経験が、人を変えてしまうし、まちがった選択をさせてしまうし、それがまた別の人を傷つけて……という負の連鎖。
物語全体を通して、その連鎖をどう抜け出すか、ということも見せてくれていたように思う。
特筆すべきは同時に描かれていた、「許す」ということと、「やり直す機会を与える」ということ。
あやまちを認めて謝る真摯な向き合い方や、それを許す広い心のあり方、そういう人間どうしの心のやりとりもこのドラマの大きな魅力だし、何度も心をほどかれた。
「やさしさ」とか「愛」とかいう言葉すらチープに感じてしまうほどの、でっかくて深くて透明な何か。
それがこのドラマにはあった。
心に従え
このドラマを見ていると、自分の心の声がだんだんと聞こえるようになってくる感覚があった。
「あ、素直になっていいんだ」と思った。
こんな当たり前のこと、なんでできなくなるんだろうね。
何がわたしの本音をかき消していたんだろう。
自分の心の声が聴こえる、それって当然だけどものすごく難しくて、でも絶対に守らなきゃいけない・明け渡しちゃいけないことだよなあと。
自分の心に耳を傾けられる自分でいたいと思った。
過去より未来、未来より今
『テッド・ラッソ』でインパクトのあるセリフのひとつにこれがある。
テッドいわく、10秒で記憶をなくす金魚が世界一幸せなのだそう。
この言葉がとても好きで。
『テッド・ラッソ』の教えてくれる、時間のとらえ方、つまりは生きるコツみたいなものが、ほんとうに希望そのものだった。
『テッド・ラッソ』の多くのキャラクターが過去の傷やトラウマを抱えているが、それでも過去にとらわれずに、未来をみて、それ以上に、今できる最善をつくして生きる泥くさい姿のなんとまぶしいこと。
そして、これである。
BELIEVE
『テッド・ラッソ』の背骨にあったのは、
「信じるということ」だった。
テッドがロッカールームに貼った
“BELIEVE”
の言葉。
最初から最後まで、『テッド・ラッソ』の根幹にはこの「信じる」という精神があった。
あまりに擦られまくってデカデカと掲げるには恥ずかしいくらいのことばだが、今わたしの心には、テッドの書いた “BELIEVE” のあの文字が中央に鎮座している。
さ。
長々と書いてきたが、春がまだ少し遠いこの3月終盤に『テッド・ラッソ』を見られてよかった。
今、世界の見え方も、心のありようも、『テッド・ラッソ』以前・以後とで全然ちがう。
苦い過去は10秒で忘れ、よりよい未来を信じて、今できる最善をつくして、最高のわたしでいよう。
勝敗や成功にとらわれずに、自分の心に従って、自分の幸せをあきらめずにいよう。
なんてことを書いてたら、朝から降ってた雨があがってましたわ。
空が明るくなってきた。
じゃあ今日も1日、心にテッドを宿して、やってみましょうかね。