【セミナーレポート】今しかできない外食業界のデジタル化~高収益店舗をつくる次の一手~KAMINASHI/ウィルグループ/パーソルイノベーション3社によるディスカッション
パーソルイノベーション・デジタルマーケティング部の福井です。現在、外食産業はコロナ禍の中で大きな変化を強いられています。しかしこのような状況の中でもしっかりと収益をあげている店舗はあるのです。
そこで今回は10月15日に行われた「今しかできない外食業界のデジタル化~高収益店舗をつくる次の一手」のセミナーレポートの形としてお届けします。デジタル化をどのように行うかだけでなく、どうすれば高収益店舗を実現できるのか大変貴重なセミナーでした。
セミナーの概要
現在のコロナ禍で、どのように収益をあげたらよいのでしょうか。そのひとつの方法がデジタル化です。店舗の中ではこのコロナを機に、デジタル化を進めることで高収益を上げている企業も存在しています。
ではどのように店舗運営にITを取り入れる際にどのような問題が発生し、どうすれば解決できるのでしょうか。このセミナーでは外食業界向けに最適人員配置を実現するシステムを提供しているパーソルイノベーションの竹下氏と、外国人材に関するHRTechを提供しているウィルテクノロジー本部の木下氏が、そのポイントについて話しています。
実際に現場に接している方の話なので、非常にリアルな話になっています。デジタル活用で店舗運営の高収益化を実現するヒントがたくさんありますよ。
登壇者のプロフィール
・株式会社カミナシ プロダクトマーケティングマネージャー 河内佑介
・パーソル イノベーション株式会社 SyncUp事業責任者 竹下壮太郎
・株式会社ウィルグループ ウィルテクノロジー本部 マーケティング&インサイドセールス責任者 木下俊之
本セミナーのポイントは?
本セミナーのポイントとしては以下の4つ挙げられます。
1.なぜいま外食でデジタル化なのか?
2.店舗マネジメントはデジタル化でどう変わるか?
3.雇用はデジタルでどう変わるか?
4.現場にテクノロジーを導入するステップは?
これら4つのポイントについて詳しく見ていきましょう、
1.なぜいま外食でデジタル化なのか?
竹下氏は「ほとんどの企業が減収・減益になっているので危機感があり、デジタル化が必要である」として、「データで最善の意思決定」が必要だと述べています。
そうすることで「勘と経験の暗黙知から脱却した経営・店舗運営」ができるというわけです。データに基づいた経営は、データにもとづいて来客者数が予想できるため、フードロスが減ることにもつながります。
データを活用すれば、コロナ禍では減収は避けられませんが、減益を避けることは可能です。
たとえばゑびや大食堂は、緊急事態宣言発令前に店舗の閉店を決定していました。なぜそのようなことが可能だったかというと、店舗前に設置したモニターで人通りを分析していたからです。また佰食屋はデータにもとづいて、売上予測や必要なシフト数を出しています。
このように減収でも無駄を排除することで収益性の強化をしたり、不確実下でも予測を行うことで機動力の強化ができるのです。環境が大きく変化したわけですから、今までのやり方は通じません。しっかりと数値にもとづいて根拠ある経営や店舗運営が必要です。
実際にそのような運営を行うことで成功している店舗もあるので、デジタル化が必要な最も大きな理由になるでしょう。
木下氏はすでにデジタル化は進行しているとし、キャッシュレス化、デリバリーサービスの発展、注文情報の収集・分析などに生かされているといいます。
また雇用についてもデジタル化で大きく変わるとし、「(短期)雇用の流動化、(中長期)人手不足の解消/外国人人材の確保等」が実現されると述べています。つまりデジタル化によって最終的には人材不足が解消するのです。
とくに外国人人材の確保はサービスの中心ですので、デジタル化で何が変わるのか、詳しく説明しています。現在外国人雇用が増えていますが、外国人雇用が増えるにつれて偽造在留カードも増えてきています。SNS上で買えるようで、15000円ぐらいとかなり安いのです。
外国人を雇用して実は偽造在留カードであったとなると企業にとっては、大変不利益になあります。しかし在留カードの管理は7割近い企業がアナログで管理しています。
この状態は大企業でも例外ではありません。またビザの管理に1人当たり30分、場合によっては1時間かかってしまいます。デジタル化により工数を削減すれば、生まれた時間を接客などコア業務に回すことができるでしょう。
2.店舗マネジメントはデジタル化でどう変わるか?
デジタル化は店舗運営そのものを変化させていきます。竹下氏は「郊外・生活圏」「狭域」「小型・専門店」に変化したと説明しています。現在の状況として、通勤時間の減少が7割で見られており、郊外・生活圏での出店が増えているのです。
また小型で多店舗化しているため、管理職(店長)のマネジメントキャパシティ拡大し、1人当たりの管理店舗とスタッフが増えます。そのため現場に行かなくても管理できるようにするデジタル化が必要なわけです。
さらに1週間単位の短い期間での計画の練り直しが必要となり、1週間~10日の状況合わせた人員配置・再編成をしなければなりません。そのうえ不安な中で働いてくれているスタッフへのケアも必要でしょう。”機動性”と”柔軟性”の両立も求められます。
また店舗ビジネスは小型店舗化するだけでなく、専門店化して行く流れになっています。大手の飲食店でも商品を絞った店舗を出店するようになってきています。
3.雇用はデジタルでどう変わるか?
生産労働力人口は2017~2030にかけて減少します。とくに20代~30代は毎年62万人減少している状況です。さらに飲食業界では15人採用して14人退職という厳しい状況にあります。
こうした現状をふまえ、木下氏は先ほども述べたようにデジタル化で、短期的には雇用の流動化・効率の向上し、中期的には外国人材の確保が必要になりますが、長期的には人手不足の解消へと向かうと述べています。
もちろんそこで必要なのは、外国人材の活用だけではありません。女性の活躍やシニアの活用も含まれます。
今回のコロナによって、外国人が日本に来られなくなりました。その時にも雇用は維持されたので、外国人雇用そのものの重要性は今後も変わりません。しかし雇用の多様化を考えなければならないと木下氏は述べています。
たしかにデジタル化で雇用そのものがなくなると同時に、外国人材を活用したり、女性やシニアを活用したりすることで、人材不足は解消する可能性があるでしょう。ただし人材不足の解消はデジタル化の結果なので、デジタル化していかなければ難しいはずです。
また竹下氏が「去年と同じ人数を今の従業員の数で回せるのか」と気になる発言をしていました。GOTOも始まり徐々に人手が戻りつつある中、人材不足が解消されなければ、お店が回らない可能性はあります。たしかに短期的には大きな問題になるでしょう。
4.現場にテクノロジーを導入するステップは?
現場に導入する上で各工程でぶつかる問題点について、河内氏が簡潔にまとめてくれました。そのポイントは以下の4つです。
1.導入 ROI(投資利益率)の証明
2.周知 社内の理解・ITの抵抗感解決
3.仮運用 現場の業務負担増解消
4.定着 運用の形骸化回避
導入する際に、このシステムを導入することでどれくらい効率化できるのかは、伝える必要があります。この辺りに関しては、それほど説明が難しいものではありません。
次に社内でそのシステムについて理解してもらう必要があります。中にはITに抵抗のある方もいます。そうした方にどのように受け入れてもらうかというのも大きなポイントの一つです。
また運用をはじめると、今までとは違った運用形態になるわけですから、現場の業務の負担が増します。このあたりもサポートは丁寧にしなければなりません。
最後にシステムは導入したものの、運用がうまくいかないというものがあります。その原因はシステムに合わせた業務改善が行われないからです。
自分たちの業務に合わせてシステムを動かそうとしてもなかなかうまくいきません。この点に関しては木下氏も適切なフローに合わせて動いてもらうと述べています。
本来、クラウドサービスはそのようなものなのですが、システムに合わせて作業を変更したほうが、業務改善ができるでしょう。
システムの導入に携わったことがある人であれば、現場で「システムが苦手」という声を聞くことが多いです。こうした状況を改善するために、河内氏は「得意な人からはじめて広めていく」と説明していました。
たしかにシステムに関しては、たとえばiPadなどを触り慣れている人はすぐに理解できます。そして得意な人にまず教えて慣れてもらい、そこから他の社員に広げていくというやり方はひとつの方法でしょう。
竹下氏は「泥臭くやる必要あり、さじを投げさせない」と述べています。専門家からみれば簡単なことでも、はじめての人には難しいことです。従業員には、「自分には難しい」と思わせないことが非常に大切です。
そのためには「導入のタイミングで、システムを使って気持ちいいという体験が必要だ」とも述べていました。たしかに「このシステムは便利だ」と思わせるのは大切ですね。そういう意味では家電と同じでしょう。
また「コミュニケーションツールもデジタルへと統一して、デジタルに触れる機会を作る」ことも大切だと竹下氏は言います。たしかにiPadやスマホを使い慣れているかどうかは、システムを導入する際には非常に重要な要素になります。
iPadの操作からはじめるというのは、システム導入のハードルが高いのは間違いないでしょう。
デジタルを活用した新しいビジネスモデルは?
最後にデジタルを活用した新しいビジネスモデルについて触れていました。竹下氏は最近、「D2Cモデル」が増えてきていると言います。D2Cとはメーカーが自社サイトで直接消費者に販売することで、店舗がメディアを作って販売する流れも出てきています。SNSをうまく活用して、販売しているところも多いです。
またデリバリーと店舗の相乗効果を考え、店舗に来た人にデリバリーでも利用してもらう仕組みを作っているところもあるようです。デリバリーと店舗販売を上手に組み合わせるのは必要になってくるでしょう。
河内氏は「アプリで店に行く前に注文して、店に行ったら持っていく」仕組みを紹介していました。コロナ禍において店舗での混雑を避けるためには、たしかにこうした仕組みは有効でしょう。
また河内氏の所属するカミナシでは、従業員のチェック機能として、体温を計ったり、傷が無いかをタブレットでチェックするをつけています。体温については色々と測る方法がありますが、計るだけでなく管理するのも大切です。そうした部分にも、ますますITが活躍するようになるでしょう。
まとめ
今回は「今しかできない外食業界のデジタル化~高収益店舗をつくる次の一手」として、セミナーの内容を報告しました。外食業界は大きくその状況が変化している中で、デジタル化はもはや実施しなければならないものになっています。
このように不確実な状況に対応する組織(店舗)としての機動性・柔軟性を実現するためにヒトの配置と管理のデジタル化する“アジャイル”な店舗運営
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