キッチンが息づく頃に。
となりの家から、お母さんに甘えるような子供の泣き声が聴こえる。
寝なきゃ。時刻は23:30になろうとしている。
蝉は、もう、寝ていた。
家の周りは、シンとしていて
わたしの食べている音が、リビングに小さく響く。
ずずず
眠れないので、そ〜っと静かにリビングに来てカップ麺を啜っていた。
なかなか麺を啜る、ボリュームは下げられない。
静まり返ったリビングは、いつもと違う顔をしていて、なんだか落ち着く。
テレビもついていない、外の光もない、話し声もしない、誰かが来るかも、と構えもしなくていい。
心地よくて、家族が寝静まったリビングから、寝床に戻れずにいた。
それでも、かすかに音がしてくる。
夜のリビングで一番音を奏でていたのは、冷蔵庫だった。
うなるような音、お腹が鳴ったときみたいな音、うぃ〜んうぃ〜んと機械みたいな音とか。
音は止まることなく、鳴り続けている。
この暑い夏に、キンキンに冷やして稼働しているんだもんな。
それだけの種類の音を、奏でて当然。だなんて、
傲慢なことは言いえない。
けれど、 「いつもありがとう。」
そう、思う。
いつも、明るく騒がしいキッチンが、やけに静か。
改めて、ダイニングテーブルの椅子に腰をかけ、
夜の静かな、キッチンの家電たちを、見渡す。
静かな家電。
家電の休憩時間。
何も考えずに、見つめた。
普段、なんとなく使っている、冷蔵庫、トースター、電子レンジたちに、ただならぬ愛おしさを感じる。
夜のキッチンには、いつも見ることのできない、一面があった。
この静けさが、心を落ち着かせ、呼吸を素直にさせてくれる。
お腹の底まで、空気が入っていくのがわかった。
幸福な空間だ。
夜の寝静まった、家のなかで、
こんな嗜みが、あったなんてね。
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むぎあじ。
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