ロジカルシンキングという苦手の克服と、ドキュメンテーションスキル
リモートワークが始まってから、自分が会社に対して日々どれぐらいのアウトプットを出しているのかが以前より浮き彫りになっている感覚があり、ポジティブな危機感を感じている。
そう感じるようになった一番大きなきっかけは、家から会社へ、会議室から会議室へ、会社から訪問先へ「移動」をすることで平常時の自分が「仕事をしている気分」になって満足していたことに気がついたことだ。(毎日あって当たり前だと思っていた「移動」に想像以上に体力と気力を消耗していたことには驚いた。)
移動はプライベートと仕事、仕事と仕事の切り替えの時間でもあり、全てが不要だったとは言わない。ただ、短期的な効率性だけを考えるならば仕事のアウトプットには直接関係ないと言える動作であり、それがほぼ削ぎ落とされる働き方にシフトしてみると、平常時の自分のアウトプット量の少なさを自覚しハッとする。ただ移動することに満足していたと思うと、以前の自分がちょっと恥ずかしくなる。
失って気づくことは多い。移動以外でも、毎日通うオフィスが無くなり、組織メンバー全員がweb会議の画面の中の均等な四角形の枠に収まるようになり、会議がない時間に「そこにいて何かをしている」ことが他人から見えなくなったことで、視覚的な「存在感」を発揮しづらくなった。だからこそ、過去積み上げてきた信頼と実績はもちろん、(これが本質的であるかは置いておいて) 日々の会議、チャット、メール、そして確固たる実績という、他人から見える限られた場面で、それも限られた時間内に、いかに濃度の濃いアウトプットを出し存在感を発揮できるかの勝負になった。戦い方が前とはがらりと変わってしまったのだ。
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その観点では誰もがほとんど何の準備もできず、いきなりこういう環境に完全シフトしたので、正直酷である。それまでの積み重ねがなかった人は一気に苦労することになる。私はこの事態を体験して、常日頃の仕事に対するスタンスとスキル拡充がいかに大切かを思い知った。
他人が作って与えてくれたレールの上を走るスタンスなのか、自らがレールを創って走り他人も一緒に走らせるスタンスなのか。それが上記のようなアウトプットの濃度の差に露呈し、存在感に影響してくる。
レールの上を走る、つまり、求められたことだけを普通にやっていても、それが他人の目に留まる機会が物理的に激減している中で、これまで通り真面目にやっていてもなかなか認められないという事態が起こっているのではないかと思う。私は一人のサラリーマンとして、この環境下では自分が何かを生産して会社に価値をもたらしていることを意識的にちゃんと伝えていく必要があると思っており、その点でレールを創る側の基本スタンスをもって、適切に見せていくことが大切だと思っている。
それと同じぐらい重要なのが自分が保有しているスキルセットの拡充。スタンスは努力すれば短期的に変えられるかもしれないが、スキルは今日明日では身につかない。半年、一年、二年とかかるものである。劇的な環境の変化があっても自分の力で咲けるように、引き出しを増やし続けておくことの必要性を改めて強く感じている。
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前段がえらく長くなったが、最近そんなことを考えたので、ここからは私自身がこの3年ほどで克服し、会得しておいて本当に良かったなと思っているビジネススキルの話をじっくりしていきたいと思う。
私の仕事
大企業を顧客として、企業やブランドのマーケティング戦略を企画して支援をすること、及び、それを実行する自組織のあらゆる問題解決をすること。私はこの2つを仕事にしてご飯を食べている。
振り返るとかなりハードに働いていた昨年までの約3年間は、社外向けの仕事である前者をメインミッションとしていた。いわゆる、ストラテジックプランナーである。響きはかっこいいが実際はかなり泥臭く、クライアントに聞いてきた課題を整理し、その解決アプローチをチームで意見交換しながらホワイトボードにひたすら書いてまた整理し、その写真を撮って絵にし、抽出したデータ根拠と一緒に資料に仕上げていく。そんな風に毎日40ページほどのボリュームのクライアント企業の戦略提案資料をデータ分析を並行して行いながら常に2~3案件作り、社内でレビューを受け修正しては、ひたすらクライアント企業に赴いてプレゼンする日々だった。
今現在は社内向けである後者のミッションの比重が高く、「問題」の領域は、自社ビジネスの顧客への提供価値の設計から組織や人材の育成まで幅広い。「問題解決」とは、その為の「プランニング→提案→仕組化→推進」の一連で成り立っており、これらを自分一人で周りを巻き込みながら遂行することがミッションである。加えて、顧客に向き合う最前線のメンバーの何でも相談相手としての役割も担っており、例えるなら1人社内コンサル、自営業、いや、保健室の先生(?)的なポジショニングを取っている。
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ちなみに、このミッションは誰かに与えられたものではなく、(もし過去の記事を読んで頂いていたらご承知の通り)昨年末に改めて自分が今いる環境で最大のバリューを発揮する為の最適なポジションを自分で考え出して提案し、今なお走りながら自分で定義をチューニングしているものである。
誰かの管理下で与えられた目標を達成する為にライバルと比較されながら働く仕事の大変さを長年身をもって体験してきた方だが、自分で自分を管理して、内容やスケジュール、何で評価してもらうかも含めて全てのことを自分で決めなければ、そのポジションや存在自体が消えてしまう、フリー演技なこの仕事もなかなか難しい。先に誰かが決めてくれたものが与えられ、それに取り組むことの意義を考えなくて良いことの有り難みを感じ、これまではお膳立てされていたことに今になって気がついている。仕事の次元が変わったからこその贅沢な悩みではあるのは分かっていながらも、葛藤しながらの日々である。レールを創るのは楽ではない。
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そんな私の日常業務を最小粒度の作業に落とし込むと、日々やっているのは情報整理と資料化がほとんどである。実際に、平日の私の9割の時間は①誰かとブレスト(brain storming・複数人で自由にアイデアを出し合うこと)している、②そのアウトプットであるテキストを整理している、または、③ビジュアライズしている、のいずれかである。
ロジカルシンキングという苦手の克服
私は元々かなりの感覚派で、机に向かってお勉強することは今でもそんなに得意じゃない。読書も基本的には苦手な方。昔は音楽や体育や美術が好きで、論理よりは直感が大事。唯一喋りながら学べる語学は好きだった。新卒で会社に入社した頃、偉い人がロジカルシンキングを鍛えなさいというメッセージを投げかけていたが、本が嫌いな私にそんなこと言われても絶対に無理なのでごめんなさいと思って諦めていた。が、最初に配属された営業の仕事に人一倍翻弄されているうちに物事の考え方の基本ぐらいは備わっていった。会社に感謝したい。
それが功を奏して今のキャリアをスタートさせる直前も"戦略"という名前がついた部署に属していたのだが、まあ名ばかりで、着任当初はロジカルでストラテジックな思考が身に着いているかというと全然自信がなかった。そのピースを埋めたくて、「営業とプランナー、どっちがいい?」と問われた時にプランナーを志願したのをよく覚えている。
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我々が顧客に提案するのは「目に見える商品」ではない。新しいマーケットの創出をビッグビジョンに掲げており、目にも見えなければ、時には国内でまだ誰一人として実現したこともないような、「世界観」「構想」「スキーム」「プロジェクト」といった概念的かつ複雑なものを売り物にしている。正直、初めましての他人に伝えるには難解すぎる内容で、買ってもらえるまでに長い時間がかかる。
それをプランする人間として何が必要かというと、まず、散らばった事象を頭の中で整理してうまく汎用化しなければならない。かと言ってコンセプチュアルすぎると「買いたい」とは思ってもらえないし、いろんな解釈が生まれてしまう。そんなジレンマが常に付きまとう。
バラバラの数珠に糸を通して繋いで人の心を動かせるストーリーに仕立てていく。その為の論理的な思考、ストーリーテリング、緻密な設計力。そして、抽象と具体の間を掴める絶妙なバランス感覚。さらに、それを他人がイメージし、理解し、自分ゴト化できる形でアウトプットする、幅のある表現力が試される。
自社の商品がプレゼンターを困らせる厄介者であったとしても、頭を使って思考し、試行錯誤し、表現し、伝達して、理解してもらうだけでなく、夢や可能性を感じ、自分の提案に賭けてもらって、最終的には大きなお金を動かしてもらわなければビジネスにならない。ああ、なんて厳しい世界。
こうやって書き出してみると未経験でよくやってたなと思うが、プランナーとして穴だらけの私は「あれ?全然伝わってない…?」「伝わったはずだったのに誤解されていて、お客さんに迷惑をかけてしまった」といった失敗を経験しては愚直に改善し、一歩ずつ前進を重ねた。とにかく逃げなかったことが救い。平日に脳みそを使いすぎてかなり疲弊していたので(夕方になるとよくフラフラしていた)、あの頃の休日の脳の容量はかなり小さくなっていたのではないかと思う。
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そんな3年間を過ごしながら、私は自分が思考できる領域の限界をたぶん猛烈に拡張していった。実際、その3年の過程で以前よりも広く、深く、早く思考できるようになっていることをふと実感するシーンが多々あった。
枝葉よりも幹を捉えて全体像を理解したり、一見バラバラに見える事象に共通項を見出して表現したり、骨組みを組み立てることが楽しい系の人、にいつの間にかなっていた。学生時代はそんな人種ではなかったのに。
結果的にそのキャリアの最後の年には、既にあるものの模倣ではなくフルスクラッチでオリジナリティのある表現が何パターンでもできるようになり、それがクライアント企業の社内会議資料によく登場するようになった。役員の方との商談で「そう、まさにこれがやりたかったんだよ!」と言ってもらえた瞬間、入社当時無縁だと思っていたロジカルシンキングが私にも手に入ったんだ…と初めて自分を認められたようで、うるっときた。人は変われるのだ。
ドキュメンテーションスキルの重要性
今の私にとって『自分が表現したドキュメントで他人が動き、変化し、波及していくこと』は、仕事で感じられる快感の1つである。これが上手くいった時に一番ドヤ顔をしてると思う(心の中で)。
ドキュメンテーションスキル、というものがある。コミュニケーションの為に文書にするスキル。これは複数の人間が集まった組織で、または顧客と仕事をする上で欠かせない。なぜなら、違う経験をして育ってきた他人同士の認識はそう簡単にはすり合わないからであり、それが業界もカルチャーも目標も異なる社外であれば尚更。しかし、複数の人間が共同でパフォーマンスを出していく為には、お互いに共通認識を持つことが最も重要であり、それがあらゆる取り組みのスタート地点であるからである。
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プランナーになってから、自分のデスクの上には10種類以上のカラーペンと真っ白のA4の紙を必ず置くようにしている。思いついたらすぐに整理できるように。分からないことがあったら描くことで自分の理解度を測れるように。ミーティングに呼ばれたら必ず持っていけるように。いつでもアイデアをビジュアルにしたり、人と話している時に図示しながら整理できるように。
「自分が何を言いたいのかよくわかりません」と迷子になって相談しに来たメンバーにヒアリングしながら絵を描いてあげると「整理してもらえてすっきりした」と言ってもらえたりする。「じゃあ、これあげるよ」と言って紙を渡すと喜んでもらえる。そんな風に自組織のメンバーが思考整理をする為の壁打ちの役割を担ったりもする。(そう、これが保健室の先生)
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「仕事とは情報の整理であり、それを使ったコミュニケーションである」
そう思っている私にとって、ドキュメンテーションスキルは仕事のパフォーマンスを大きく左右するコア中のコアスキルであり、少なくとも私の仕事においては、あらゆるパフォーマンスがその上に積み上がっていることは間違いない。
ものすごく分かりづらいものを売る仕事をしてきたからこそ会得できた、私なりのドキュメンテーションスキルとそれにまつわる持論。
うまくまとまるかは分からないけど、これから少しずつまとめてみようと思う。
つづく ↓
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